子供が虐待されて死亡する数のうち、0歳児が約61%とかなりの数を占めることをご存じだろうか。しかもその中で生後すぐに亡くなる場合が半数以上になっている。そして、加害者は実母が最も多い。なぜこんなことが起こるのだろうか。その背景には、望まない妊娠などで養育意思が低い母親の存在があると言われている。
2014年度の虐待死は表面化しているものは44人だったことを厚生労働省の専門委員会が公表している。その検証結果によると、44人のうち0歳児が27人、そのうち生後24時間以内にトイレなどで死亡したと考えられる乳児が15人だった。主な加害者である実母の側にある事情としては、望まない妊娠・計画していない妊娠だった場合が24人と多数を占める。そして、妊婦検診を受けていなかった実母が18人だった。
望まない妊娠をした場合、妊娠してから行政などの公的機関に行かない女性は多い。そして、妊婦検診を受けない場合も多い。その場合、出産間近になって病院に行く駆け込み出産になるか、自宅で産むという選択をする妊婦もいる。それらの女性が虐待によって子供を死なせることを防ぐために、厚生労働省は望まない妊娠をしたことで未婚・貧困に悩むことになった妊婦の支援に乗り出す。17年度からの実施で、モデル事業として10の自治体で取り組むことになっており、7800万円を予算の概算要求に盛り込んだ。
この事業は、産院・助産施設・母子生活支援施設に児童福祉司や社会福祉士を常駐させるもの。母子生活支援施設とは、貧困・家庭内暴力などで支援を必要としている母子を受け入れる施設。これら施設に児童福祉司や社会福祉士の常駐させることにより、生活保護の相談窓口や乳児院などの施設などにつなげていく。児童相談所との連携により養子縁組に向けて支援することも検討される予定。
この厚生労働省の事業により、望まない妊娠をした女性が子供を虐待死させないような取り組みがなされることが期待される。しかし、そのような相談窓口があることを知る機会がない妊婦、例えば妊婦検診に行かないでしかも自宅にて一人で出産してしまう妊婦などにも支援の手を伸ばすことが課題となってくるだろう。(編集担当:久保田雄城)