大手ビールメーカーが苦戦を強いられる中、主要地ビールメーカーは毎年出荷量を伸ばしている。その要因の一つとしてふるさと納税が寄与しているという。ふるさと納税は物だけではなく、人の交流という形の返礼についての取り組みも始まっている。
東京商工リサーチが第7回地ビール動向調査の結果を発表した。この調査は2010年から行われているが、主要地ビールの出荷量は毎年前年を上回っている。今回の調査でも16年の1~8月の主要地ビールメーカーの出荷量は前年同時期より1.1パーセント上回る結果となった。メーカー別にみると、アンケートに回答のあった80社のうち52社、実に65パーセントで出荷量が増加したという。国内大手ビールメーカーが苦境に立たされている中、地ビールメーカーは着実に消費を増やしているようである。
出荷量が増加したという理由について、先述の52社によると「飲食店・レストラン向けが好調」が15社、「スーパー、コンビニ、酒店向けが好調」が8社という回答があった。また、その他の理由としては「ふるさと納税による取扱量増加」、「大型観光施設オープン」、「イベント参加を始めた」という回答が得られた。このように地ビールメーカーには地域との連携という販路の拡大方法がある。これは大手メーカーには無い強みの一つだろう。
ふるさと納税については近年の制度拡充などにより、地方への寄付金、そしてそのお礼の品としての物の交流はかなり盛んになっている。しかし、人の流れの創出という点ではまだ課題がある状況だという。そこで日本航空<9201>とふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を企画・運営するトラストバンク、そしてふるさと納税ポイント制ポータルサイト「ふるぽ」を運営するJTB西日本の3社が提携し、ふるさと納税を通じて寄付をした人とその地域が実際に交流できる機会を提供する取り組みを始めた。
人の流れの創出とは、具体的には観光が軸になっている。日本航空では空港と近接する自治体と提携して、寄付金の返礼として航空券が用意されるという。JTB西日本では寄付先を訪れるツアーを新たに設定する。トラストバンクではふるさと納税に関する情報発信力を活かして、専用サイト「きふたび」内に特集コーナーを設置するとのことである。3社の強みを生かして寄付の返礼に観光を結びつけることは、ふるさと納税の多様化、ひいてはそのものの魅力を高めることにもつながるだろう。寄付をすることによって物産を受け取りその地域への愛着がわいた人にとって、実際にその場へ行くことができる機会が開かれるのは喜ばしいことである。
地ビールはこのような人との交流においても活躍の場があるだろう。ビール工場見学や飲み比べ、宿泊施設への提供、お土産など実際にその地域に人が来ることでも新たな販路の拡大が見込めそうである。(編集担当:久保田雄城)