【今週の振り返り】トランプ・リスクの再燃で541円下落した週

2016年11月05日 20:11

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FBIの捜査官が、職務に忠実なのは結構。だが、FBI幹部の捜査方針の変更が大統領選挙投票日直前のタイミングでは、ウォール街も兜町も、想定外の災難。

 4日の日経平均は大幅続落。2日のNYダウは77ドル安。FOMCの結果は金融政策現状維持だが声明文では利下げが近づいていると示唆。ただそれは12月利上げ観測も含めて大方の予想通り。しかし「トランプ氏リード」の世論調査の結果をABCテレビまで出してはトランプ・リスク再燃でマーケットは一斉リスクオフ。週間原油在庫統計が増加し、原油先物市場はWTIが一時44ドル台に下落し終値45ドル台。ADP全米雇用リポートは14.7万人で市場予測の16.5万人を下回り、物事が悪いほうへ、悪いほうへ流れていき、NYダウは5営業日続落し終値は7月以来4ヵ月ぶりに18000ドルを割った。企業決算がアリババは2ケタ増収、取引終了後発表のフェイスブックは純利益2.7倍の好決算なのが、パンドラの箱の底に残る「希望」か?

 NY時間の円高急進でドル円は一時103円割れ寸前になり103円台前半、ユーロ円は114円台後半。CME清算値は17015円、大阪夜間取引終値は17050円。どちらも一時17000円割れした。3日の東京市場が休場でなければ、17000円割れはほぼ確実だった。

 3日のNYダウは28ドル安で7月7日以来の安値。ダウは6営業日続落、NASDAQ、S&P500は8営業日続落と深刻。財新・マークイットの10月の中国サービス業PMIは52.4で前月比0.4ポイント上昇し4ヵ月ぶりの高水準。上海総合指数は+0.84%。エジプトが通貨のエジプト・ポンドを切り下げ、変動相場制移行を決めた。イングランド銀行の金融政策委員会の結果は今週の日米と同調し金融政策現状維持。その四半期インフレ報告書で今年10~12月期の物価見通しを1.3%増へ0.1ポイント引き上げている。9月のユーロ圏失業率は10.0%で、7月、8月と同じで1ケタになれず2ヵ月続けて足踏み。ドイツは4.1%、ギリシャは23.2%。ヨーロッパ市場は軒並み安。

 アメリカの7~9月期の労働生産性指数速報値は3.1%増で2年ぶりの大幅な伸びで、製造業受注は前月比0.3%増で市場予測を上回り3ヵ月連続で増加したが、新規失業保険申請件数は26.5万件で前週から7000件増加し悪化。ISM非製造業景況感指数は54.8に低下し市場予測を下回るなど、経済指標はまちまちだった。クリントン氏は、関連財団の不正献金疑惑まで浮上し、胸突き八丁。

 為替レートは円高がさらに進行し、ドル円はロンドン時間で102円台をつけ朝方は103円近辺。ユーロ円は114円台前半。CME先物清算値は16970円で17000円割れ。大阪夜間取引は休場。

 日経平均始値は170円安の16964円。高値は9時9分の16996円。安値は10時51分の16801円。終値は229円安の16905円。2日大引け後にファーストリテイリング<9983>が10月の国内ユニクロ既存店売上高を発表し、0.6%減。東京では月前半に真夏日があったりして秋冬物が動かなかったという。暑かったのはCO2のせいなのか地球温暖化対策のパリ協定が発効。飛び石連休の谷間の日経平均はNY株安と為替の円高で17000円をあっさり割り込んで始まる。ザラ場中では10月20日以来のこと。序盤は大台にタッチできず、徐々に水準を下げていき16900円も割ってしまう。週末で雇用統計発表直前でもあり、為替のドル円も103円を割るなど再び円高進行。日経平均の下げは止まらず16800円割れ寸前でようやく止まる。前週末比で600円を超える下落で、まさに「陰の極」。

 6月の英国のEU離脱を問う国民投票の予想外の結果が「トラウマ」になって投資家心理は「選挙は最後まで何があるかわからない」と弱気。それに効くクスリはなく、結果が出るまで待つしかない。10時台にもう一度、安値を更新するが16800円台は死守。ドル円は103円台に戻り、さすがに押し目買いが入って11時台は水準を回復し16900円台に乗せるが、前引けは16888円。それでも大幅安ゆえ日銀のETF買いが入る資格は十分。

 後場は前引けより少し安く再開し、16800円台半ばから後半で動きが小さくなる。2時台に少し上昇するが16900円は届かない。それでも下げ幅の圧縮が続き終盤になってようやく16900円台に乗せ、「苦いクスリ2日分」の229円安でそのまま終了した。日銀はこの日も706億円のETF買いを実施。4営業日連続、つまり今週4日間は1日も欠かさずに東京株式市場の「助っ人」になった。愛知県警がナイアンテック社に自動車の運転中にゲームの操作ができないようにしたり、道路上に「ポケモンGO」のキャラクターが出現しないように要請し、任天堂<7974>は3.92%の下落。得られる利益はわずかでも、イメージ悪化の影響は大きい。

 日経平均終値は229.32円安の16905.36円、TOPIX終値は-21.40の1347.04。売買高は20億株、売買代金は2兆3564億円。値上がり銘柄数は395、値下がり銘柄数は1512。プラスは水産・農林、非鉄金属の2業種。マイナスは31業種で、その下位は輸送用機器、保険、海運、医薬品、その他製品、卸売など。上海総合指数は0.11%安だった。

 今週の星取は1勝3敗。前週末10月28日の終値17446.41円から541.05円下落して今週の取引を終えた。もう「当選確実」と思われた民主党クリントン候補のメール問題をFBIが蒸し返し、共和党トランプ候補が逆転という世論調査結果も出たことでマーケットではトランプ・リスクが再燃し、日米の平均株価が大幅に下落した週だった。(編集担当:寺尾淳)