65歳からの老齢基礎年金のほか、障害基礎年金や遺族基礎年金がもらえることになる国民年金。日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は原則、全員加入しなければならないものだが未納者の多さも長年の問題となってきた。しかし今回、その未納者についての新たな事実が明らかになった。
国民年金保険料を2年間以上滞納している人は2015年度末で約206万人もいる。納付率は1996年度まで80%を超えていたが2011年度には58.6%に。その後4年連続で上昇し15年度の国民年金保険料の納付率は63.4%となったが、依然として低水準であることに変わりはない。厚生労働省は強制徴収の対象を「年間所得350万円以上」から「300万円以上」に拡大することを決め、納付率向上に努めている状態だ。
しかし、未納者のうち強制徴収の対象になる「年間所得300万円以上」はわずか6%しかいないという厚労相の実態調査の結果が、先日行われた参院厚生労働委員会で報告された。そして低所得者は申請すれば支払いの一部もしくは全額を免除される。例えば被扶養家族が3人いる4人世帯の場合、所得が年162万円以下だと全額、282万円以下で半額、335万円以下で4分の1が免除される。独身者ならならそれぞれ122万円以下、227万円以下、296万円以下だ。つまり強制徴収のボーダーライン「300万円」を下回っている94%人たちは、何らかの免除対象になっている可能性が非常に高いのだ。
ただし、所得による免除や猶予を受けるには被保険者本人が日本年金機構に申請手続きする必要がある。そのため本来は納付率の計算から除外されるべき人が「未納者」にカウントされてしまっているというのが現状だ。なお免除・猶予になっている602万人を対象に含めると、実質的な国民年金の納付率は40.6%。全国民の半分以上が支払えていない。特に25~29歳は32.1%で、若年層の納付率の低さが目立つ結果となっている。
この現状を踏まえて、日本年金機構は免除減免資格があるのに申請していない人へ働きかけを強めている。正しい納付率の計算に必要な面もあるが、何よりも被保険者自身の将来の年金に関わってくるからだ。未納分は将来の年金がそのまま減額される。しかし手続きをして「免除」になれば保険料納付期間に算入される。年金の金額が増えるだけでなく遺族年金や障害年金の対象にもなる。国民年金は自分だけでなく、将来残される家族にも関わってくる問題だ。(編集担当:久保田雄城)