沖縄基地問題 翁長知事は政府と向き合う姿勢を

2016年12月24日 10:16

画・沖縄県知事選挙 現職の敗因は公約違反?

沖縄県トップと政府との話し合いの場は、双方が向き合えば、設定できる状況にある

 沖縄県の翁長雄志知事は今月22日に米軍北部訓練場の過半にあたる4000ヘクタールが同日午前0時に日本に返還されたことを記念する「米軍北部訓練場返還記念式典」(政府主催)に出席せず、今月13日に名護市東海岸沖の浅瀬にオスプレイが不時着事故を起こしたことなどを受け、県内で開かれた「オスプレイ撤去を求める抗議集会」に出席した。翁長知事は集会で空中給油を除いてオスプレイの飛行再開を認めた政府に対し「政府は沖縄県民を日本国民と見ていないとしか受け取れない」と猛抗議した。

 日米代表が出席する中、最も、返還を望んでいるはずの地元知事が出席しない式典に、オスプレイ配備に対する反対、辺野古基地は作らせないとの強い意志を翁長知事は示したかったのだろう。

しかし、そうした抗議の仕方はオスプレイへの反対や普天間基地は無条件で返還されるべきとする知事の思いとしては理解できるが、日米間の国際的やりとりの中で、大人の対応としてどうなのか。ひとつひとつの事案に是々非々の姿勢で対応すべきでなかったのか、疑問符がつきそうだ。

 むしろ、あらゆる機会を通し、閣僚、米国関係者と接触を図り、自身の思いを伝えるとともに、相手の思いや考えを理解し、相互にベストな結果を追求する姿勢こそ、自治体トップとしての翁長氏に求められているのではないだろうか。

 安倍晋三総理は21日のキャロライン・ケネディ駐日米国大使との訓練場返還に伴う共同発表で「今回の返還は基地負担軽減にとどまらず、跡地利用を通じた地域振興にも大きく寄与する。地元の東村や国頭村が要望している国立公園指定や世界自然遺産登録についても、政府としても最大限の支援を行っていく」とし「ヘリパッド移設により影響を受ける方々に十分に配慮を行っていくことは当然で、政府としては米側と協力し、地元の生活環境に十分配慮していくよう取り組んでいく」と語った。

 沖縄県トップと政府との話し合いの場は、双方が向き合えば、設定できる状況にある。安倍総理は「安倍内閣は沖縄の負担軽減について『できることは全て行う』との考えの下で取り組んでいる」と強調した。ヘリパッド移設による飛行ルートについても協議していく考えを菅義偉官房長官は語った。

 稲田朋美防衛大臣も22日の記者会見で「今般の返還は20年越しの課題であり、沖縄県内の米軍施設の約2割、本土復帰後最大の返還となるもので、沖縄の基地負担軽減に大いに資するもの」と語ったうえで「戦後71年を経て、なお沖縄県に米軍の施設・区域が集中し、大きな負担となっている現状は是認できるものではない」と語った。この点の認識は翁長知事と共有している。

 稲田大臣は「負担軽減を図ることは政府の大きな責任」とし「今後とも一つ一つ、着実に改善をしていきたい」と強調した。オスプレイの飛行再開についても「空中給油は停止しているが、しっかり、沖縄県民の皆様方に説明したい」と説明の機会をつくりたい考えを示している。

 稲田大臣は「翁長知事とも、機会を見てお話ししたいと考えている。ただ、翁長知事は、先日の知事会見で『官房長官、稲田防衛大臣、場合によってはケネディ大使も(22日の返還記念式典で沖縄に)おいでになると思いますけれども、この御三方と話し合いをすることは、私からは全く考えていません』と述べられたところであり、オスプレイ抗議集会にも参加されるというふうに伺っているので、今回、翁長知事とお会いすることは差し控えます」と語った。

 そのうえで「(22日に会うことは控えるけれども)今後、機会を捉えて、知事とお会いし、丁寧にお話をしたいというふうに思っている」と対面で説明したい考えを示している。翁長知事には政府側と積極的に意見交換する機会を求めて頂きたい。背を向けるのではなく、向き合うことを期待したい。(編集担当:森高龍二)