前週8日のNYダウは48ドル高、11日は21ドル安で14000ドル手前で停滞中。為替レートは8日の麻生財務大臣の発言で円高に振れたが、11日のアメリカのグレイナード財務次官のアベノミクス支持発言により、12日朝方はドル円94円台前半、ユーロ円126円台前半まで円安が進んだ。
三連休明けで8日の203円安からの急反発が見込まれた日経平均は193.56円高の11346.72円で始まり、すぐ11400円台に乗せた。甘利経済再生大臣が9日に「3月末の株価1万3000円が目標」と発言したインパクトは大きく、先高期待で全面高。正午すぎに北朝鮮の核実験の第一報が流れたが、後場開始後の東京市場は為替も株価もほとんど反応せず、甘利発言とは好対照だった。その後は為替が少し円高に振れて11300円台まで下がる場面も出て、日経平均終値は215.96円高の11369.12円で引けた。この日も売買は「40億株・2兆円」の水準をクリアしたが、1200近かった値上がり銘柄数が大引け時に840まで減り、TOPIXが安値引けで終わった点は翌日以降にやや不安を残した。
東証1部の業種別騰落率は、上から証券、銀行業、ゴム製品、医薬品、陸運業、情報・通信業の順。値下がりした業種は5業種だけで、悪い方から鉱業、石油・石炭、繊維、輸送用機器、食料品だった。
トヨタ<7203>が25円高で年初来高値を更新し一時、株価5000円台を回復した一方、マツダ<7261>はこの日も売買代金1位、売買高2位に入りながら15円安と続落した。前週末の決算が悪かった日産<7201>は37円安、決算が良かったいすゞ<7202>も下げて、自動車株は全般的によくない1日だった。
業種別騰落率1位の証券株は野村HD も29円高だったが、光世証券<8617>が値上がり率2位、岩井コスモHD<8707>が同8位に入るなど中堅証券の健闘が目立った。2位の銀行株も金融緩和期待とこの日の大型株物色の流れを受けて三大メガバンクが好調で後場は一段高になり、揃って昨年来高値を更新した。売買高1位のみずほ<8411>は2ケタの10円高。三菱UFJ<8306>は12円高、三井住友FG<8316>は130円高だった。
前週末に大きく下げた銘柄のうちソニー<6758>は16円高、ニコン<7731>は11円高で反発したが、DeNA<2432>は108円安で続落し、同業のグリー<3632>は30円安でコナミ<9766>も31円安と下落した。
決算が悪くなかったのに下落したのは太平洋セメント<5233>で、売買高6位に入りながら19円安。いすゞ<7202>、横河電機<6841>も同様だった。取引時間中に決算を行った五洋建設<1893>は内容が悪くて下げ、王子HD<3861>のほうは一時300円を超えて2円高。パナソニック<6752>、サッポロHD<2501>、JT<2914>は下落幅が大きくなった。ローランド<7944>は創業者がアメリカのグラミー賞技術賞を受賞したが、市場はなぜか101円安で値下がり率7位と売り浴びせた。一方、射出成型機最大手の日精樹脂工業<6293>は取引時間中ずっとストップ高で、比例配分の80円高で値上がり率7位に入っている。
日経平均プラス寄与度ランキング上位は、790円高のファーストリテイリング<9983>、160円高で売買代金9位のソフトバンク<9984>、前週末の決算内容が良く今後の広告出稿増に期待が集まり269円の大幅高の電通<4324>、200円高のアステラス製薬<4503>、190円高の京セラ<6971>で、合わせて日経平均を77円も押し上げた。
北朝鮮の核実験で「地政学的リスク」が高まって後場注目の防衛関連銘柄は、前週に大きく動いた石川製作所<6208>は6円高、豊和工業<6203>は1円安。興研<7963>と重松製作所<7980>はストップ高、東京計器<7721>は7円安と高安まちまちだった。
今日の主役は、大気汚染がひどい中国から西風に乗って日本に飛んできた「PM2.5」対策関連銘柄。PM2.5の計測機器を製造する東証2部の東亜DKK<6848>は51円高で年初来高値更新。その計測値が三連休中に一時、基準値を超えた大阪が本社のダイキン<6367>はこの日が決算で110円の大幅高。空気清浄機で世界シェア首位で、中国だけでなく国内でも販売が伸びるか。マスク素材の日本バイリーン<3414>も39円高と買われた。300円高の興研<7963>、100円高の重松製作所<7980>は本来、防塵マスクを製造するアスベスト対策関連銘柄、生物化学兵器に対抗する防毒マスクを製造する防衛関連銘柄で、PM2.5対策にその技術を応用できるという思惑に北朝鮮の核実験のニュースが重なって両銘柄ともストップ高になった。風邪や花粉症用のマスクではPM2.5は防げず、活性炭入りや特殊な繊維を重ねたマスクが必要で、その「PM2.5フィルターマスク」を生産する豊橋市の企業は中国からも国内からも注文が殺到しているという。健康を守る日本のハイテクの東風は、汚れた西風を圧倒するか。(編集担当:寺尾淳)