着陸時の安全向上を図るALWINをJAXAと気象庁が開発

2017年05月23日 07:12

画・着陸時の安全向上を図るALWINをJAXAと気象庁か_開発

航空機の操縦でもっとも難しいのが着陸。低層風の状態によっては着陸せずに再び上昇するゴーアラウンドも行われる。JAXAと気象庁が共同開発したALWINは目に見えない低層風の状態を正確に観測して伝えるシステム。東京国際空港と成田空港で実運用が開始された。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は気象庁と共同開発した空港低層風情報(ALWIN)の実運用を東京国際空港と成田国際空港で開始した。着陸時の安全性向上に寄与するシステムで、このサービスの実運用は世界初の事例となる。

 成田空港では着陸復行、到着時の侵入継続が安全ではないと判断された場合に上昇体制に移るゴーアラウンドが年間約100件発生している。このうちの約90パーセントが低気圧や前線の付近で生じやすい風の急変域、ウィンドシアーや乱気流の影響といわれている。1回の着陸復行で到着時間は約20分の遅延となり、またウインドシアーや乱気流によって乗員や乗客に損傷が出る可能性もある。

 着陸時、空港の低層風情報を送るシステムはこれまでにもあったが、管制官から音声による情報提供とテキストデータしか送れないため、着陸進入時におけるパイロットの負担が大きかった。ALWINは細かな低層風のデータを見やすくグラフィック化して航空機のディスプレイ上に表示される。

 なお、現時点では日本航空<9201>とANAホールディングス<9202>のみ、航空機へ送信する送るサービスを試験運用しており、その他の航空会社へはグラフィックデータを配信する内容になっている。

 ALWINで気象庁が開発したのはドップラーレーダー及びドップラーライダーの観測データを用いた風算出のプラグラム。また航空気象観測業務の一環としてALWINの運用を担当する。JAXAは気象庁のデータを元にしてウインドシアー乱気流検出プログラムと空地デジタルデータリンクシステムを通じてパイロットへ伝える情報生成プラグラムを開発した。

 運用テストでは評価に参加したパイロット約200名にアンケートを行い、その結果「安定した着陸につながる」が87パーセント、「約に立った」と「やや役に立った」が合計で81パーセントを占めるなど概ね好評価だった。

 羽田の東京国際空港では新整備地区にある格納庫を超えると乱気流が生じるハンガーウェーブがあり、格納庫西側のA滑走路の発着機に影響を与える。航空機の操縦で一番難しいのが着陸と言われているだけに、今後、ALWINの活用で着陸が速やかになれば安全性が一層高まる。(編集担当:久保田雄城)