最近の新車種に搭載されている予防安全装置は自動運転の一部。完全自動運転車の完成はまだ先の話と思われていたが、半導体メーカーのAI技術が進歩したことによって急速に近づいた。エヌビディアとトヨタの提携は革新的な自動車製造のスタートとなる。
アメリカの半導体メーカー、エヌビディアはトヨタ自動車<7203>と自動運転車の開発に向けて提携したことを発表した。エヌビディアのカーコンピュータープラットフォームをトヨタ仕様にして、より安全な自動運転車の共同開発を行う予定。
エヌビディアはカリフォルニアに本社を置く半導体メーカーで、コンピューターのグラフィックス処理や塩酸処理の高速化を主な目的とするグラフィックプロセッシングユニット(GPU)の開発・販売を行っている。
トヨタとの提携で搭載される予定なのがNVIDIA DRIVE PX 2プラットフォーム。車両に設置された複数のセンサーやカメラからデータを収得、車両周囲の状況をリアルタイムで把握し、高精度の地図で車両を正確に認識することで安全な経路を計画できる。
エヌビディアの強みは人工知能(AI)において先進的な技術を持っていること。人間の脳を模したディープニュートラルネットワークによって、人間がインプットしなくてもAIが単独で進化する深層学習が可能になる。
車載される際はNVIDIA DRIVE PX 2プラットフォームのトレーニングを行うが、このシステムによって従来 の学習期間を大幅に短縮させることができる。またプラットフォームは小型で消費電力がわずか10ワットしかないことも、燃費効率を向上させることが使命の自動車製造に適している。
エヌビディアのプラットフォームはすでにアウディ、ダイムラー、フォルクスワーゲンの3社に提供されており、大手自動車メーカーではトヨタが4社目となる。比較的規模の小さい自動車メーカーでもボルボやテスラなどが採用、今後、さらに多くのメーカーが追従する可能性がある。
自動運転車のGPUに関しては現在のところエヌビディアが1歩リードした形だが、この動きに対抗するため、半導体大手の買収が次々と行われている。クアルコムは自動車分野における半導体強化を目的としてNXPコンダクターズを買収、インテルも約150億ドルでBMWと提携しているイスラエルのモービルアイを買収した。半導体メーカーのAI技術が自動車産業の業界標準になりつつある。(編集担当:久保田雄城)