横ばい状態のLED市場。これからの有望分野と日本企業の最先端技術

2017年07月23日 14:51

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ヘルスケア分野では、機器類の表示や照明的な利用だけでなく、赤色LEDの特性を生かした需要増も期待されている

 今や、我々の生活に欠かせないものになりつつあるLED。富士キメラ総研の調査によると、2016年度のLEDパッケージ世界市場は1兆8539億円を見込んでおり、2025年までに1兆9718億円まで成長すると予測している。世界の照明市場はおよそ12兆円以上あるといわれており、今後も白熱電球、蛍光灯からの置き換えが進めば拡大することが期待されてはいるものの、市場としては横ばいが続いているのが現状だ。

 この原因と考えられているのが、低価格化だ。これまでLED市場では、1990年代後半に白色LEDを開発した日亜化学工業が世界のトップランナーとして君臨してきたが、昨今は中国メーカーが低価格攻勢を仕掛けて勢力を強めてきており、その影響から、2015年には白色LEDパッケージの単価が大幅に下落した。LEDパッケージ市場において白色LEDパッケージが占める割合は大きいため、市場全体の低価格化を引き起こしてしまったのだ。つまり、需要は増え続けているにも関わらず、市場が停滞してしまっているのだ。

 そこで、照明向け需要以外に今後のLED市場を牽引していくであろう有望分野として期待されているのが、ヘッドライトなどの自動車部品分野や、殺菌・滅菌、生体認証など幅広い用途が注目されるヘルスケア分野、そして産業機器分野だ。

 自動車部品分野においてはとくに、2016年に自動車メーカー各社が新車にLED製品の搭載を促進する動きが高まったことで需要が急増している。さらに、前述の富士キメラ総研の調査によると、2016年見込で3580万個だった白色LEDパッケージの需要が、2025年には1億2420万個にまで拡大すると予測している。また、現在15%程度のLED製品率も2020年には30.7%にまで達するとみられている。

 ヘルスケア分野では、機器類の表示や照明的な利用だけでなく、赤色LEDの特性を生かした需要増も期待されている。赤色LEDには血液中のヘモグロビン濃度を測れる特性があるため、例えばスマホやタブレットなどにモバイル端末に搭載することで血圧や血流などの測定もできるようになるというのだ。

 また、産業機器用途では、日本の半導体メーカーのロームが画期的なLEDパッケージを開発した。同社は7月21日、産業機器や民生機器の表示パネルにおいて、数字部分の多色化を実現する業界最小クラス1608サイズ(1.6×0.8mm)の2色チップLED「SML-D22MUW」を発表した。同製品の凄いところは、何といっても単色タイプのチップLEDと同サイズであるという点だ。従来の2色タイプと比べて35%も小型できる。

 2色タイプの利点は、色を使い分けることで、多様で多彩な表示や表現が可能となり、機器類の状態の把握を高めたり、異常検知なども認知しやすくなるという点だ。しかし、これまでは機器類の数字表示は単色タイプのLEDが使用されることが多かった。その理由は、搭載スペースの問題と開発コストだ。

 今回、ロームが開発した「SML-D22MUW」はこれらの課題を一挙に解決する製品となっており、極小ながらも、これからのLED用途を大きく変革させる部品となりそうだ。

 LED市場に限ったことではないが、価格競争に陥れば、いずれは食い合いになってジリ貧になるのは目に見えている。LEDのパイオニアとして、日本企業には創意と工夫によってLED市場の未来を照らす光であり続けてほしいものだ。(編集担当:藤原伊織)