日本は戦後しばらくまで農漁村国家であり、人口は日本列島全体に分散していた。1950年代末からの高度成長期に、日本は急速な工業化を遂げ、人口は臨海工業地帯を有する大都市部に集中して行くこととなる。現在では総人口の過半数が三大都市圏に、3分の1が東京圏を含む関東地域に集中している。
大都市部に暮らす大多数の人々は高度成長期以降に職を求めて地方の農村部から大都市圏に移住してきた人達である。こうした人々の中にはいずれ故郷へ帰ることを夢見ながらついに夢を果たせずに終わってしまった人も少なくないであろう。定年後の第2の人生が長くなった現在ではもう一度地方に戻って活躍したいと思っている者も増えているかも知れない。
人材サービスのエン・ジャパンが自社サイトを利用している35歳以上の中高年のユーザー2372人をサンプルに「地方で働くこと」についてアンケート調査を行なった。調査結果によれば、「地方で働くことに興味はあるか」との問いに対しては、「ある」が58%と約6割を占め最も多く、「ない」が29%、「すでに働いている」が13%の順であった。
「ある」と答えた者に対して「働きたいエリアはどこか」を尋ねたところ、「九州・沖縄」が24%で最も多く、次いで「特に決まっていない」が14%、「中国・四国」12%、「北信越」と「東海」が11%、「東北」が10%の順になっている。
「地方で働く際に不安な点」について尋ねたところ、「給与の減少」が65%、「働き口が少なく、転職先がみつからない」が63%とこの2つが突出して多くなっている。しかし「給与の減少」については39%の者が妥協可能としている。
「地方で働くことで何を実現したいか」との問いに対しては、「やりたいことを形にできる環境作り」と「プライベート(家族と)の時間を多く作りたい」の2つが41%で最多となっている。この結果をレポートでは「理想のライフスタイルや夢を叶えるために、地方で働くことを検討する者が多い」と結論づけている。
希望エリアの回答内容を見ても「地方で働く」ことが故郷に戻ることを意味していないようだ。現在の「地方で働く」ことの意義は、仕事内容や給与についてはある程度妥協しながらも自分らしい生き方を模索するためと言えそうだ。(編集担当:久保田雄城)