トヨタ自動車とスズキは、2017年2月6日の業務提携に向けた覚書締結以降、「環境技術」「安全技術」「情報技術」「商品・ユニット補完」など広範協業の実現に向けた検討を具体的に進めてきた。
その一環として2017年11月に、インド市場に2020年頃に電気自動車を投入するための協力関係構築に向けて検討を進めることで合意している。
さらに今回は、両社の商品ラインアップを強化しつつ、インド市場における販売競争の活性化に向けて、ハイブリッド車やコンパクトカーなどの相互供給を行なうことに基本合意した。つまり、スズキがトヨタとインドで相互にOEMをスタートさせるということ。
インドでのシェアが3.5%にとどまるトヨタにスズキが小型車を供給する。一方でスズキは、トヨタからハイブリッド車(HV)などの上級車種を得て販売する。スズキのインドにおけるシェアは40%超と急成長するインド市場で強みがある。
具体的には、スズキからトヨタへ「バレーノ」「ビターラ・ブレッツァ」を供給し、トヨタからスズキへは「カローラ」を供給することを予定している。具体的な供給開始時期や台数規模、車両グレード&スペック、供給価格等の詳細については、今後両社で検討を進めていく。相互OEMは、2019年以降に始める計画だ。
供給するモデルは、トヨタおよびスズキ両社の現地子会社が、それぞれの販売網を通じて販売する予定であり、両社がそれぞれ切磋琢磨して市場を活性化することにより、インドの消費者に商品・サービスを提供する。
英調査会社のIHSマークイットによると、インドの2020年の新車販売台数は、2017年比30%増の510万台になると予測する。日本の2017年実績である466万台を抜き、中国と米国に次ぐ世界3位の市場となるのは確実だ。
中国の成長が鈍化していることを考えると、インドは人口13億人超の最後の巨大市場ともいえる。
当然、小型車だけでなく、上級車も含めて消費者の趣向の幅は広がる。米ゼネラル・モーターズ(GM)が撤退する一方、韓国の起亜自動車や中国の上海汽車集団が参入を目指すなど競争激化は必至だ。先行して市場を開拓し、小型車を中心に40%のシェアを確保した、スズキの成功体験モデルが、今後も通用する保証はない。
また、スズキ単独では、電気自動車(EV)などの環境車種への対応は難しい。インド政府が、この3月に発表したEVの急速充電器規格案に、「コンボ(Combo)」と呼ぶEU方式が挙げられた。正式決定ではないものの、「チャデモ(CHAdeMO)」規格の日本勢にとっては、厳しいものとなる。
こうした環境変化に対応するため、スズキは不足する先端技術分野でトヨタからの技術供与が必要だ。計画ではトヨタから技術供与を受けて、2020年を目途にインド市場に向けてEVを投入する計画だ。コネクテッドカー(つながる車)でも協力・提携を積極化させる。
スズキは、「最後の巨大市場」となるインドでの先行優位を守り先端技術搭載車の市場投入のために、トヨタはスズキが獲得した巨大市場のシェアを活用するために、相互OEM提携は必要不可欠であり、インド市場に向けた協業の第一歩となる。(編集担当:吉田恒)