内閣不信任 本当の審判は来夏の参院選

2018年07月22日 10:52

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立憲民主党、国民民主党、日本共産党、無所属の会、自由党、社会民主党の野党5党1会派が安倍内閣に突き付けた「内閣不信任決議案」は20日の衆院本会議で自民、公明両党による反対多数で否決された

立憲民主党、国民民主党、日本共産党、無所属の会、自由党、社会民主党の野党5党1会派が安倍内閣に突き付けた「内閣不信任決議案」は20日の衆院本会議で自民、公明両党による反対多数で否決された。

 ただ、カジノを含むIR法案はじめ参院定数6増の公職選挙法改正、高度プロフェッショナル制度の創設、「モリカケ」問題に象徴される国民の疑念、疑問、懸念に答えることなく、数の力で押し通した安倍政権と自民・公明のやり方からは「議会制民主主義が危機的状況にある」としか言いようがない。本当の採決は来年夏の参院選挙で国民自ら、その意思を示すほかないのだろう。

 今回の安倍内閣不信任決議案の結果などは当初から明々白々で、提出の意味があったのか疑問視する人もいるだろうが、少なくともふたつの意味があったといえそうだ。

 立憲民主党の枝野幸男代表が安倍内閣不信任決議案の趣旨説明で3時間近く語った内容には安倍政権の路線では出てこない庶民目線の立ち位置からの政策提言が多くあり、新鮮さがあった。

 二つには安倍政権不信任の根拠の数々が議事録に記録され、国政の歴史に記録された。安倍内閣を将来、歴史的にどう評価するかの貴重な資料にもなるだろう。

 久々に聴きごたえのある内容だった。是非、衆院HPから再生して聴かれることをお勧めしたい。立憲民主党を軸とする政権が誕生すれば、こういう政策を進めるのだろうという部分が少し見える。

 趣旨説明で不信任の理由に枝野氏は大きく7項目を挙げた。合わせて、7月豪雨被害への対応を政府与野党一丸となって最優先にすべきである中、参院定数6増の公職選挙法改正、民間に賭博を認めるカジノを含む統合型リゾート整備法案(IR法案)の審議を優先し、今国会で成立を急ぐ政府与党の姿勢を厳しく非難した。

 枝野氏は不信任に値する事項に1番に(1)労働時間の規制対象から外れる労働者を生み、過労死を増やすことになる「高度プロフェッショナル制度」創設を強行したことをあげた。定額働かせ放題がその本質だと指摘した。

 不信任に値する事項の(2)にカジノ法案の強行をあげた。枝野氏は、我が国は持統天皇以来1000年以上、賭博は違法という法制度の下で歴史と伝統を築いてきたとし、例外は財源確保のための公営ギャンブルのみ、非営利目的のものだと訴えた。

 そのうえで、このような歴史と伝統を壊すような人たちに保守と名乗ってほしくない。カジノは我が国の歴史、伝統、文化を知らない人間が進めようとしていることと「歴史・伝統・文化」を重視する姿勢を強調する安倍総理の姿勢との大きな矛盾を指摘した。そのうえでアメリカに我が国を売る法律を強行しようとしている、と安倍内閣とカジノ法案成立を目指す勢力を非難した。

 不信任に値する事項の(3)にはアベノミクスの行き詰まりをあげた。アベノミクスは5年半経ち、副作用のみが顕著になっている、と指摘。株価と輸出企業の収益は上がっているが、実質賃金、個人消費につながっていない。

 個人消費が伸びない限り日本経済の安定的な成長は実現できないとし、個人消費を増やすためには低所得の人たちの所得をあげ、格差是正のための経済政策をやる必要がある。高齢者に安心を提供することが必要。子育て、教育、雇用の問題解決が消費拡大につながり、景気対策になると訴えた。

 不信任に値する事項の(4)は、政治と社会のモラルを崩壊させた「森友・加計」問題。森友問題では約9億円の国有地を8億円値引きし売却されようとした。なぜ、このようなことがされようとしたのか。原因を解明してこそ、再発防止策が見つかる。全貌解明を妨害する政府・与党の姿勢こそ「膿そのもの」と問題視した。

 加えて安倍昭恵総理夫人が夫人付き公務員・谷査恵子氏を通じて(問題の国有地にからみ)行政に問い合わせるという関与をしていた。このことは明らかになっている。これだけでも大問題と述べ、ほかに値引きについての合理的な説明が一切なされていない以上、このことが影響を与えていたという以外、現状では推認しようがない、とした。

 枝野氏は、それにもかかわらず昭恵夫人も谷氏も全く説明していない。また、公開された資料でも昭恵夫人や谷氏が関与したとする部分の文書だけがなぜか未だに出てきていない。「最高裁まで争ってでも公開しない」という打ち合わせ文書まで出てきた。総理が指導力を発揮し公開すべきものは公開しろというべきではないか。

 加計学園問題では国家戦略特区に至るプロセス、獣医学部設置認可に至るプロセス、行政の中立性、公平性を損ないかねない疑惑に全く真摯に対応していない。真実に目を向ける姿勢がないことは明白だとした。

 ほかにも(5)誤魔化しやいい加減な国会答弁(6)安全保障政策(7)官僚システムの崩壊などを指摘した。

 安倍政権を信任するかどうか。結局のところ、最終判断は来春の統一地方選、来夏の参院選挙になる。衆参にねじれが起これば安倍政権は信任されなかったこととなり、安倍内閣は終焉する。自民党内には安倍政権に不満があっても党是とする「憲法改正」まで押し切れる人材が安倍総理以外にいないとの思いが強いのだろう。

 決裁文書の改ざん、隠ぺい、国会での虚偽答弁と行政への国民の信頼をここまでズタズタにする安倍内閣を支える原動力は「憲法改正」の目標のためと思われる。野党が提出した安倍内閣不信任決議案。本当の審判は来夏の参院選での投票行動だ。(編集担当:森高龍二)