自民党の総裁選挙が9月に実施される。安倍晋三総裁の3選がほぼ確実だが、憲法9条に「自衛隊を明記したい」とする安倍総裁に対し、「憲法9条の1項、2項を残し自衛隊を明記すれば、論理が通らない。論理破綻の改憲には反対」との考えを鮮明にし、問題提起している石破茂元幹事長との一騎打ちの構図は、憲法改正、特に9条に関する問題をより鮮明にすることにつながると思われ、一騎打ちの選挙戦を期待したい。
もともと、自民党は安倍総理の下で憲法改正を実現するため、自民党党則80条の4で総裁は2期を超えて在任することはできない。総裁公選規程第10条4で総裁を2期連続つとめた場合、これに引き続く総裁選挙の候補者になることは出来ない、としていた党則や規定を、いわば安倍総裁のために変更までした経緯がある。
さきの参議院選挙(2106年6月22日公示、7月10日投開票)の年、政局は動いたが、憲法改正を衆議院で発議できる議席を改選後も確保できるかの見通しがつきにくかった。
このため、衆参ダブル選挙を回避するよう当時の総務会長だった二階俊博幹事長らが動いたとの情報があった。総選挙で安倍内閣への信を問うことを回避してもらうかわりに、総裁選挙の規定変更に、翌年の党大会で承認を得るとのシナリオが描かれた。
結果、その通りに安倍総理はダブル選挙を避け「参議院改選議席(121議席)の過半数を自民・公明の与党で目指す。これにより国民の信を問う」とした。
選挙では当時の民進党が議席を大きく減らし、改革は議席ゼロ。一方、自民、公明で11議席の増になった。そして、2017年3月5日、自民党大会で総裁任期は「2期6年」から「3期9年」に延長することが正式決定された。
9月の総裁選挙に安倍総裁と石破元幹事長以外に候補がでるのかどうかはわからないが、石破氏が今月3日の毎日新聞のインタビュー記事で語るように「自民党は、あなたも総裁を選べる、と勧誘して党員を獲得してきた。無投票は党員への背信行為」「野党時代、党綱領に『国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる』と書いた。綱領に忠実でなければならない」と現況を危惧していることを隠さない。こうした視点を持つ議員が多ければ、財務省決裁文書の改ざんを生み、国会審議に虚偽答弁を許し、文科省官僚の不祥事が相次ぎ起こり、国民の行政への信頼をここまでズタズタにするような、いわば自民党『安倍一強』の弊害を少しは自浄できたはず。
改憲推進右派団体と連携して『憲法改正』を至上命題に最優先しているためか、石破氏への支持は広がりを欠いている。結果がどうであれ、一騎打ちの論戦で、自衛隊追記が論理破綻している点を鮮明に、わかりやすく議論してほしいと願っている。安倍政権が改憲勢力や経団連にとって運よく継続して「最長3年」ということを国民は理解している。それまでに政権交代があるのか、そこは未知数だ。
いずれにしろ、さきの総選挙で、比例区で見る限り、有効投票5575万票のうち、自民・公明の政権与党が得た票は2555万票で全体の45.8%にとどまっていたことを自覚した「公正な国会運営、政府を謙虚に機能させること」を安倍政権と自民、公明は決して忘れてはならない。先の国会は驕りが過ぎた。(編集担当:森高龍二)