日本の労働法は「ザル法」だなどとも言われてきた。労働基準法は時間外労働を原則禁止しているが36協定を結べば実質青天井の残業が可能で、これが日本の長時間労働を常態化させた一要因とも言える。さらに、36協定のない残業は違法であるにもかかわらず、残業原則禁止はほぼ無視され続けてきたというのが日本の労務管理での実態だ。
2013年、国連の社会規約委員会が「過労死」と「長時間労働」に関し日本政府に勧告を行った。これ以降、厚生労働省は労働時間に関し事業所に対する監督指導を強化している。
8月7日、厚生労働省が「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」を公表している。17年度、厚生労働省は全国の労働基準監督署を通じ長時間労働が疑われる2万5676事業場に対して監督指導を行った。この監督指導は各種情報から時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えていると疑われる事業場や長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としている。
対象となった事業場の70.3%に当たる1万8061事業場で労働基準関係法令違反を確認している。また、対象事業場の45.1%に当たる1万1592事業場で違法な時間外労働を確認、当該事業場に対して是正勧告書が交付され是正・改善に向けた指導が行われた。
このうち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超える事業場が8592事業場で違法時間外の74.1%、月100時間を超えるものは51.4%となっている。賃金不払残業があったものは対象事業場の7.3%に当たる1868事業場だった。
過重労働による健康障害防止措置が未実施のものは10.8%に当たる2773事業場を確認し、健康障害防止のため指導票を交付した事業場については、過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したものが対象事業場の81.7%に当たる2万986事業場で、労働時間の把握が不適正なため指導したものが4499事業場で対象事業場の17.5%を占めている。
監督指導実施事業場を業種別に見ると、製造業が22.7%を占める5841事業場で最も多く、次いで運輸交通業が15.9%の4095事業場、商業が14.0%の3595事業場、建設業で11.7%の3014事業場、接客娯楽業7.2%、教育・研究業4.0%と続く。
労基法軽視の慣行は長い歴史の中でできあがったものである。忍耐強い監督指導によって法令遵守の労働現場が形成されるよう期待する。(編集担当:久保田雄城)