10月15日に開かれた臨時閣議において、安倍晋三首相は全世代型の社会保障制度への転換と財政健全化を同時に進行する必要性を訴え、これまで先延ばしにしていた消費税率の引き上げを予定通り、2019年10月1日に施行することを表明した。
今回の消費増税は、社会保障改革と、それにかかる財源確保が主な目的だが、14年4月に行われた5%から8%の前回増税時に問題となった、駆け込み需要と反動減、そしてその後に起こった消費回復の鈍化などの反省点を踏まえ、19年度と20年度予算で臨時・特別の経済対策を図る見通しだ。
具体的には、小売店でのショッピングでキャッシュレス決済を利用した際に増税分にあたる2%を、国の費用負担でポイント還元する制度を期間限定で行うなどの他、幼児教育・保育の無償化、飲食料品等の税率を現行の8%に据え置く軽減税率の実施、自動車の保有や住宅購入に関する減税措置などの経済対策を挙げている。これらの予算は自民、公明両党で話し合われたのち、政府の決定を経て、来年度予算案や税制改正関連法案に盛り込まれる見通しだ。
しかし、いくら政府が対策を講じたとしても、増税にあたっては多くの混乱は免れないだろう。とくに、高額商品である不動産業界は、これから先、駆け込み需要に追われることが予想される。第一生命経済研究所の調査では、14年の消費税率引き上げ時では全国で6万6000戸程度の駆け込み需要が発生したとみているが、今回の増税にあたっては、その半分程度となる3万3000戸と推計している。その理由としては、今回の引き上げ幅が前回に比べて小さいことや、足元の住宅市場の現状を踏まえた上での見通しとなっている。
ただ、分譲マンションについては販売価格の高止まりで在庫が飽和状態であることなどから、大幅な動きはないとしながらも、持家については、前回同様、駆け込み需要と反動減は発生すると見ており、警戒を促している。
では、実際の不動産業者はどのような動きを見せているのだろうか。1989年4月に消費税法が3%で施行されて以来、1997年4月に5%、2014年4月に8%と増税のたびにその対応に追われてきただけあって、今回はまだ、幾分落ち着いているかのように見える。また、今回の増税に関しては2度にわたって時期が延期されていることも大きいだろう。
住宅展示場を覗いてみると、増税対策もあるのか、最近の住宅商品の傾向としては、価格重視の売り方ではなく、新たな価値感や暮らし方を重視するものが目を引く。
例えば、ダイワハウスは、共働き世帯をターゲットにした「家事シェアハウス」を提案している。これまで、働く主婦の負担軽減のために家事動線などに配慮した間取りなどは多くの住宅メーカーでも提案されているが、この家事シェアハウスは「自分専用カタヅケロッカー」や、「ファミリーユーティリティ」など、これまで有りそうでなかったアイデアを導入することで、使ったものを元の場所にしまう。出したごみを片づけるなど、身の回りのことをできるだけ自分でできるようにする工夫が随所に導入されている。
また、アキュラホームでは「おうち時間を楽しむ」をコンセプトに、今流行りのグランピングを自宅のベランダで挑戦する「ベランピング」の提案を、全国の展示場で展開して話題になっている。一般的な分譲住宅では、限られた土地を有効的に活用する間取りや動線が重要視される傾向があり、こういった生活を楽しもうとする提案は少なかった。アキュラホームの住宅を機に、ベランピングブームが訪れるかもしれない。
他にも、パナソニックホームズのペットとすごす空間づくりの提案型住宅「ウィズ・ペット」や、建てる前に、未来のわが家にいるかのように実感できる積水ハウスの「360°VR設計体験」など、単純な価格だけでは比較できない工夫がある。もしも今、増税前の住宅購入を検討しているのなら、2%の増税に踊らされるのではなく、まずは住宅展示場に足を運んでみることをおススメしたい。(編集担当:松田渡)