沖縄県名護市辺野古への普天間代替基地建設に向けた辺野古沿岸の埋め立てに賛成か、反対かを問う県民自ら意思表示する「県民投票」に、宜野湾市、うるま市、宮古島市など5つの市の市長が参加しないと表明。
住民自ら意思表示する機会を一自治体の首長が奪うことは許されることではない。民主主義政治に反する行為であり、この対応に責任が問われなければならないだろう。早々に改めるべきだ。
5市長は県民投票条例の背景に9万人を超える署名が存在し、その下で、県議会で条例が可決、成立した重みを知るべき、と考える。
投票する権利を保障し、宜野湾市を含めた住民らが埋め立てに「賛成」「反対」「投票棄権する」それぞれの考えを反映させる機会を与えることこそが重要だ。
政府は辺野古への普天間代替基地建設以外に抑止力を保ったうえで普天間基地の危険除去策はない、と確信し、日米政府・日米両国の防衛大臣が直近でも同じことを再確認した。しかし、だからこそ、沖縄県民の投票権有資格者全員の意思を反映する「県民投票」の機会は奪われてはならない。
自民党の宮崎政久衆院議員が「県民投票の不適切さを訴えて予算案を否決することに全力を尽くすべきである。議員が損害賠償責任などの法的な責任を負うことはない」と県民投票を阻止するような働きかけとしか受け取れない文書を地元勉強会で配布したようだが、勉強会の会場で説明すべきは『辺野古への代替基地建設の必要の有無』の議論だ。
憲法学者の木村草太首都大学東京教授が地元紙への寄稿で「投票で賛成、反対、棄権する権利は県民の表現の自由として保護されなければならない」と憲法が保障する『表現の自由』の視点から、県民投票の機会を奪う自治体の判断を問題だと提起している。
木村氏は「投票したい人の権利を侵害し、棄権を強いる。県民の権利を実現する憲法上の義務のことも考えてほしい」と冷静な対応を要請しているのだが、5市長はどうこたえるつもりか、あるいは無視か。
県民投票は2月24日に実施されるが、投票率の高低も県民の意思を反映するものであり、賛成、反対、棄権それぞれの声が県民の意思表示であることを考えなければならない。辺野古に代替基地を建設することが唯一の選択肢なのかも含め、日本国民全体で「沖縄を受け止める」機会になると考える。
熟議のうえで「やはり辺野古しかない」という結論であれば、その時は合理的な説明、県民の理解、協力を得られるよう政府も国会議員も党派を超え、誠意をもって全力を尽くすべきだろう。時を急いではならない。県民投票条例の向こうに9万人超の署名のあったことの重さをまずは認識したうえでの対応をするべきだ。(編集担当:森高龍二)