岸田文雄総理は20日(日本時間)米ニューヨークでフィリピンなどと共催したFMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)ハイレベル記念行事であいさつ。「私は核兵器のない世界に向けた現実的な歩みを一歩ずつ着実に進めていきたいと誓っている。核軍縮はライフワーク」と自らの姿勢を表明し、この行事がFMCT交渉入りに向けた新たな幕開けになるよう共に取り組んでいこうと呼び掛けた。
岸田総理は「ロシアによるウクライナ侵略と核による威嚇は核兵器のない世界への道のりを一層遠ざけるもの。核軍縮をめぐる国際社会の分断はますます深まっている」とロシアを非難し、分断に強い懸念を示した。
岸田総理は「特定国による核戦力の急速な増強は他の国をも巻き込む核軍拡競争に火をつける可能性もある。そのようなことを防ぐためにも、今こそ、核分裂性物質の生産禁止により、核兵器の量的向上の制限をかけ、世界的な核兵器数の減少傾向を維持していく必要がある」と訴えた。
そして「FMCTは交渉開始すらできていないが今こそ、FMCTを必要としている。必要なのは交渉開始のための強い政治的な関心。本日このイベントに主要国から多くの政治リーダーが参加したことを心強く思う。このイベントがFMCTの議論を再活性化し、早期の交渉開始に向けて取り組む契機となり、それがNPT体制の再生・強化につながると確信している。FMCTの交渉入りに向けた新たな幕開けとなるよう、共に取り組んでいこう」と呼び掛けた。
FMCTは核兵器の原料となる核分裂性物質(高濃縮ウラン、プルトニウム等)の生産を禁止し、核兵器の量をこれ以上増やさないことを目的とした条約で、1993年に米国のクリントン大統領(当時)が条約交渉を提案した。ただ今も交渉は開始されていない。(編集担当:森高龍二)