化粧品5社、需要回復も利益に明暗 ブランド投資と構造改革が分岐点

2026年08月15日 19:07

化粧品

需要回復の動きがみられる化粧品業界。主要5社の決算では、ブランド投資や構造改革、費用統制などを背景に利益面で明暗が分かれた。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

国内化粧品大手5社の最新決算が出そろい、中国・免税市場の一部持ち直しや主力ブランドの販売拡大により売上高が押し上げられる一方、利益面では明暗が分かれました。 資生堂は構造改革やコスト構造の最適化でコア営業利益が前年同期比90.1%増となり、花王も化粧品事業が改善し、全社営業利益は土地売却益の寄与もあって38.5%増加。ポーラ・オルビスHDも適切な費用統制が寄与し2割を超える営業増益を達成しました。一方、コーセーHDは中国免税向けや北米が好調で増収となったものの、広告宣伝費やマーケティング費用の集中が重荷となり営業利益が41.5%減少。ノエビアHDも主力の化粧品事業が振るわず減収減益となりました。単なる需要の回復にとどまらず、需要を利益へ変える収益構造と成長投資のタイミングが各社の差となっています。

本文
 国内化粧品大手5社の最新決算(資生堂、花王、コーセーホールディングス、ポーラ・オルビスホールディングス、ノエビアホールディングス)が出そろいました。中国・免税市場における一部回復の動きや、主力ブランドの伸長などを背景に売上高を伸ばす企業が相次いだ一方、利益面では各社の取り組みや投資タイミングによって明確な明暗が表れました。

■ 5社中4社が増収、利益では明暗

 今回決算を発表した主要5社の業績概要(売上高、営業利益等、増減率)は以下の通りです。

・資生堂: 売上高 4,989億6,500万円(前年同期比 6.2%増)、コア営業利益 444億3,200万円(同 90.1%増)

・花王: 売上高 8,719億3,400万円(同 7.8%増)、営業利益 958億3,100万円(同 38.5%増)

・コーセーHD: 売上高 1,649億1,500万円(同 2.7%増)、営業利益 66億1,700万円(同 41.5%減)

・ポーラ・オルビスHD: 売上高 843億4,900万円(同 1.3%増)、営業利益 99億5,400万円(同 21.1%増)

・ノエビアHD: 売上高 460億7,500万円(同 2.6%減)、営業利益 68億9,500万円(同 13.9%減)

(※資生堂はコア営業利益。花王の数値は全社連結。ノエビアHDは2026年9月期第3四半期累計決算、その他4社は2026年12月期中間期決算。決算期や対象セグメント、開示指標が異なるため、絶対額の単純比較ではなく前年同期からの方向性を比較)

 ノエビアHDを除く4社が増収を確保したものの、利益面では大幅増益を達成した企業と減益に転じた企業に分かれています。

■ 資生堂、コア営業利益90%増 利益率も8.9%へ

 利益面で大きな改善を示したのが資生堂です。2026年12月期中間連結決算(IFRS)は、売上高が前年同期比6.2%増の4,989億6,500万円、本業の収益性を示すコア営業利益が同90.1%増の444億3,200万円となりました。売上高コア営業利益率は前年同期の5.0%から8.9%へと大きく上昇しました。

 背景にあるのは、推進してきた構造改革とコスト構造の最適化です。地域別では、主力の「中国・トラベルリテール事業」が売上高1,914億600万円(前年同期比10.0%増)、コア営業利益476億3,000万円(同22.7%増)となり全体を牽引しました。一方、為替影響を除いた実質ベースでの売上高は同0.1%減と、ほぼ横ばいでした。さらに「米州事業」も前年同期の58億3,000万円のコア営業赤字から20億1,500万円の黒字へ転換を果たすなど、中国事業の改善や米州の黒字転換、コスト構造の最適化が利益改善に寄与しました。

■ 花王、「KATE」「Curél」伸長 化粧品利益は3億円から58億円へ

 花王の中間連結決算(IFRS)も全社売上高が前年同期比7.8%増の8,719億3,400万円、全社営業利益が同38.5%増の958億3,100万円と好調な進捗を見せました。全社営業利益の押し上げには第1四半期に計上した土地売却益(115億円)も寄与していますが、本業の事業部門でも着実な改善が進んでいます。

 特に同社の「化粧品事業」単体で見ると、売上高は1,310億円(前年同期比10.5%増)、営業利益は58億円となり、前年同期の3億円から大幅な収益改善を達成しました。「Curél(キュレル)」や「KATE(ケイト)」といった注力ブランドが日本やアジア市場で好調に推移しており、増収効果とともに利益を引き上げました。中間期の進捗を受け、花王は5社の中で唯一、通期の全社業績予想を上方修正しています。

■ 中国・免税市場に回復の動き

 これまで化粧品各社の重荷となっていた中国市場や免税(トラベルリテール)チャネルですが、今回の決算では複数社で回復・伸長のデータが確認できます。

 資生堂では中国・トラベルリテール事業が前年同期比10.0%の増収(為替影響を除く実質ベースでは0.1%減)となりました。コーセーHDでもアジア地域の売上高が261億4,100万円(同24.0%増)と2桁増収を記録し、海南島での需要回復や免税企業の業務再稼働が追い風となり中国免税向け販売が業績を伸ばしました。ポーラ・オルビスHDにおいても、中国のEC市場や免税チャネルが伸長を見せています。

 中国・免税関連が全面的に回復に転じたとまでは言えないものの、トラベルリテールやECなどの特定チャネルを中心に、回復の動きが表れてきていることがうかがえます。

■ 対照的なコーセーとポーラ、増収率だけでは測れない収益力

 今回の比較において最も鮮明な対照を示したのが、コーセーHDとポーラ・オルビスHDの動きです。

 コーセーHDの中間決算は、中国免税の回復や北米における「tarte(タルト)」事業の好調(北米売上高は同5.9%増の326億5,800万円で過去最高を更新)などが寄与し、全社売上高は1,649億1,500万円(前年同期比2.7%増)と増収を確保しました。

 しかし、営業利益は前年同期の113億1,100万円から66億1,700万円へと41.5%の大幅減益となり、売上高営業利益率も7.1%から4.0%へと低下しました。子会社アルビオンの創立70周年に伴う広告・イベント費用が上期に重なったほか、コスメタリー事業における大型キャンペーン費用などが利益を圧迫しました。将来の販売増に向けたブランド投資が、足元の利益面では重荷となった格好です。

 これに対し、ポーラ・オルビスHDの中間売上高は前年同期比1.3%増の843億4,900万円と微増にとどまったものの、営業利益は同21.1%増の99億5,400万円へと拡大し、営業利益率も9.9%から11.8%へと上昇しました。

 基幹ブランド「ORBIS(オルビス)」の高機能・高単価商品の提案による購入単価の上昇に加え、主力の「POLA(ポーラ)」における広告宣伝費などの適正化、さらにグループ全体での「適切な費用統制」が増益に寄与しました。

 売上高が2.7%伸びて利益が41.5%減ったコーセーHDと、売上高は1.3%増ながら利益を21.1%増やしたポーラ・オルビスHD。売上高の伸び率だけでは足元の収益力は測れず、ブランド投資の時期やコストコントロールの姿勢が利益の着地に大きな差を生んでいます。

■ ノエビアは減収減益で推移

 一方、増収となった他4社と異なり、ノエビアHDは減収減益となりました。2026年9月期第3四半期累計決算は、売上高が前年同期比2.6%減の460億7,500万円、営業利益が同13.9%減の68億9,500万円で推移しました。

 主力の化粧品事業が売上高364億2,200万円(前年同期比2.6%減)、セグメント利益80億8,400万円(同9.9%減)と振るわず、医薬・食品事業も減収減益となりました。固定資産売却益などの特別利益計上で純利益の落ち込みは抑えたものの、本業の回復には遅れが見られます。化粧品市場に持ち直しの動きがある中でも、企業によって業績の動向には違いが生じています。

■ 需要回復の裏で進む「構造改革」

 足元の業績動向と並行して、収益構造そのものの見直しを進めている点も今回の決算の重要なポイントです。

 資生堂は構造改革やコスト最適化の継続がコア営業利益の大幅改善(90.1%増)に結びつきました。ポーラ・オルビスHDも、ポーラにおける希望退職制度に伴う特別支援金16億500万円やジュリークの改革費用など、計20億8,200万円の事業構造改善費用を特別損失に計上し、将来に向けた固定費削減を進めています。

 さらにコーセーHDも決算発表と同時に、連結子会社のコーセーおよびコーセー化粧品販売において約80名を対象とした希望退職施策「特別ライフチャレンジ」を実施すると発表しました。(※費用や応募数が未確定のため現時点の通期予想には未織り込み)

 需要の回復を取り込みつつも、コスト構造や組織の見直しが複数社で進んでいます。

■ 通期、上方修正した花王と据え置く4社

 通期の業績見通しにおいては、各社のスタンスに違いが見られます。

 今回、通期の連結業績予想を上方修正したのは花王1社です。売上高を従来予想の1兆7,500億円から1兆8,000億円(前期比6.6%増)へ、営業利益を1,820億円から1,900億円(同16.2%増)へ引き上げました。

 一方、資生堂、コーセーHD、ポーラ・オルビスHD、ノエビアHDの4社は従来の通期計画を据え置いている状態です。資生堂は中間期でコア営業利益が前年同期比約9割増となったものの、通期予想(コア営業利益690億円)は従来計画を維持しました。上期に営業減益となったコーセーHDも、通期営業利益200億円(前期比8.3%増)の従来予想を変更していません。

■ 需要回復の次は「稼ぐ力」

 主要5社の決算からは、中国・免税市場の一部持ち直しや主力ブランドの伸びなど、化粧品需要の持ち直しの動きが確認されました。しかし、その需要をいかに利益へと転換できるかという点では大きな差が生じています。

 資生堂やポーラ・オルビスHDのように構造改革や費用統制が利益改善に結びつく企業がある一方で、コーセーHDのように将来に向けた積極的なブランド・販促投資が足元の利益を抑える展開も見られます。

 今回の5社決算では、売上拡大だけでなく、需要を利益へ転換する収益体質の違いも鮮明となりました。(編集担当:エコノミックニュース編集部)