石油・エネルギー5社、原油高・円安で業績に明暗 元売り3社は利益急拡大

2026年08月17日 12:26

石油

原油高や円安を背景に、石油・エネルギー大手5社の業績には明暗が分かれた。元売り3社では在庫影響やタイムラグ、製品マージン改善などが利益を押し上げる一方、資源開発では販売数量や調達コストなど事業構造の違いが業績を左右した。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

国内石油・エネルギー大手5社の決算では、原油価格の上昇や円安を背景に業績が大きく動きました。ENEOSホールディングス、出光興産、コスモエネルギーホールディングスの元売り3社は、在庫影響や原油コストのタイムラグ、石油製品の採算改善などにより利益が急拡大。一方、資源開発ではINPEXが減収ながら最終増益となったのに対し、石油資源開発(JAPEX)は原油販売量の減少やLNG調達コスト増加で大幅減益となりました。同じ原油高・円安でも、事業構造によって業績への影響に差が生じています。

■ 石油・エネルギー5社、元売り3社で利益急拡大

 国内石油・エネルギー大手5社(ENEOSホールディングス、出光興産、コスモエネルギーホールディングス、INPEX、石油資源開発)の直近の決算が出そろいました。

 各社の営業利益の動向を一覧すると、以下の通りです。

・ENEOSホールディングス:4,826億円(前年同期比859.5%増)

・出光興産:3,074億円(前年同期は40億円の営業赤字)

・コスモエネルギーホールディングス:1,269億円(前年同期の約16倍)

・INPEX:6,187億円(前年同期比0.3%増)

・石油資源開発(JAPEX):62億円(前年同期比62.9%減)

※INPEXは2026年12月期中間決算(1〜6月)、他4社は2027年3月期第1四半期決算(4〜6月)。決算期間が異なるため、営業利益の絶対額は単純比較しない。

 石油元売り大手3社が黒字転換や急増益となった一方で、上流の資源開発を担う2社の間では明暗が分かれる形となりました。原油市況の上昇と為替の円安という共通の市場環境の下でも、その影響は各社の事業構造によって大きく異なっています。

■ ENEOS・出光・コスモ、なぜ利益が急増したのか

 元売り3社の利益拡大には、原油価格上昇に伴う市況要因や石油製品のマージン(採算)改善などが寄与しました。

 ENEOSでは、期中のドバイ原油価格が平均1バレル=96ドルと前年同期比29ドル上昇したことや円安推移(1ドル=159円)を受け、1,952億円の在庫影響が発生しました。ただし、この在庫影響を除いたベースの連結営業利益でも2,874億円(前年同期比1,523億円増)を確保しており、在庫影響を除いたベースでも前年同期から利益が改善しています。

 出光でも、原油価格の上昇に加え、中東情勢を受けた航海日数の増加などから原油コストの期ずれ(タイムラグ)が拡大し、プラスのタイムラグ効果が利益を押し上げました。主力の燃料油セグメント損益は2,938億円(前年同期比3,126億円増)となり、前年同期の赤字から黒字化を果たしました。

 コスモも同様に、原油高に伴う在庫影響と製品マージンの改善が重なり、主力の石油事業のセグメント損益が1,179億円の黒字(前年同期は64億円の赤字)へと浮上しました。

 原油価格が上昇局面にある際、元売り各社では過去に安く仕入れた保有在庫の評価額が高まる効果や、調達コストが製品価格へ反映されるまでの時間差によるタイムラグ効果が働き、短期的に利益を大きく変動させる場合があります。今回の急増益には、こうした市況や在庫、タイムラグなどの要因が大きく影響しました。

■ 「原油高=全社増益」ではない 資源開発2社に差

 一方で、「原油高・円安ならばエネルギー会社はすべて潤う」とは限りません。資源開発を手がける2社の決算は、その違いを際立たせています。

 INPEXは、原油販売量の減少(前年同期比22.8%減)により売上収益こそ4.6%減の1兆495億円となったものの、親会社の所有者に帰属する中間利益は17.7%増の2,631億円と増益を示しました。販売量の落ち込みを、海外原油の平均販売価格の上昇(8.2%高の79.51ドル)と円安効果(1ドル=158円37銭)、さらには主力である豪州イクシスプロジェクトの堅調推移や法人所得税の減少などで補い、最終増益を確保しました。

 これに対してJAPEXは、売上高が21.4%減の651億円、営業利益が62.9%減の62億円と大幅な減収減益となりました。原油販売量の減少に加え、ホルムズ海峡を巡る情勢を受けてペルシャ湾内からのLNG(液化天然ガス)調達計画を変更し、別産地から代替カーゴをスポット調達したことで調達コストが膨らんだことが響きました。

 資源開発事業の業績は、単純な原油市況だけでなく「販売価格×販売数量×為替×生産・調達コスト」の総合的な掛け合わせによって決まります。調達コストの急増や販売量の違いが、両社の明暗を分けました。

■ 中東情勢は「原油価格」だけでなく物流・調達にも影響

 地政学リスクの影響が多角的に表れた点も今回の決算の特徴です。

 一般的に中東緊迫化は「原油価格の上昇」という単一の切り口で語られがちですが、企業の実務現場にはより複雑な波及経路が存在します。

 出光においては、航海日数の増加が原油コストのタイムラグを長期化させ、短期的にはプラスの利益押し上げ要因として機能しました。一方でJAPEXでは、LNGの調達計画変更に伴う代替カーゴのスポット調達がコスト増加要因となりました。

 同一の市況・地政学ニュースであっても、市況、物流、調達ルート、在庫の保有状態といった各社の条件の違いにより、決算数値に与える影響の方向は異なることが示されています。

■ 第1四半期好調でも元売り3社は通期据え置き

 今回高い利益を計上しながらも、元売り3社はいずれも通期業績予想を据え置いています。

・ENEOS:通期の親会社帰属利益予想4,150億円を据え置き。

・出光:通期の親会社帰属利益予想750億円を据え置き。

・コスモ:通期の親会社帰属利益予想440億円を据え置き。

 特にENEOSの場合、第1四半期(4〜6月)だけで通期予想と同額である4,150億円の親会社帰属利益を計上したことになります。コスモも第1四半期純利益(840億円)が通期予想(440億円)を大幅に上回っています。

 第1四半期の利益には在庫影響やタイムラグ効果など、市況によって大きく変動する要素が含まれています。このため、第1四半期の利益水準をそのまま年間へ延長して考えることはできません。

■ INPEXは上方修正・増配、JAPEXも通期純利益引き上げ

 元売り各社が予想を据え置いたのに対し、資源開発2社は通期予想の修正を行いました。

 INPEXは、イクシスプロジェクトの好調な生産や下期の原油・為替前提の見直しを反映し、通期の親会社帰属当期利益予想を5,100億円へ上方修正しました。これに伴い、年間配当予想も従来の100円から112円(中間56円、期末56円)へ12円増額することを発表しています。

 JAPEXも営業利益は大幅減益となったものの、投資有価証券の売却益(特別利益)などを織り込み、通期の親会社帰属当期利益予想を650億円へ上方修正しました。ただし、上方修正には投資有価証券売却益などが反映されており、第1四半期の営業損益とは分けて見る必要があります。

■ 原油価格だけでは読めないエネルギー企業の収益

 今回のエネルギー大手5社の決算は、共通の市場環境の裏にある構造的違いを浮き彫りにしました。

・元売り3社(ENEOS・出光・コスモ):在庫影響やタイムラグ、製品マージン改善などで利益が急拡大。3社はいずれも通期予想を据え置き。

・INPEX:販売量が減少する一方、イクシスの生産推移や原油・為替前提の見直しなどを反映し、通期予想を上方修正、増配も発表。

・JAPEX:販売量減に加え、LNGの代替スポット調達によるコスト増が響き、大幅営業減益。

 エネルギー企業の収益力を見極める上では、単に「原油価格が上がったか下がったか」という表面的なニュースだけで判断することはできません。

 在庫影響、製品マージン、販売数量、物流・調達コストなど、複数の要因を押さえることが、今後のエネルギー市場と各社の稼ぐ力を読み解く上で重要となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)