電気料金値上げに向け、本格化する企業の対策

2013年03月02日 18:05

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ロームは「ローム京都駅前ビル」に自社製LED照明を全面導入するなど、省エネ型オフィス空間作りを積極的に実践してきたが、2月28日にはさらに本社施設内を全面的にLED化すると発表した。(画像はローム社製の直管形LEDランプを導入したクリンルーム)

 あの東日本大震災から2年という月日が経過しようとしている。昨年には復興庁が新設され、官民一体となって被災地の復旧・復興を加速させようと努めているが、思うようにスピードアップできていないところをみると、「3.11」が残した爪痕の大きさを改めて実感させられてしまう。とりわけ、東京電力の福島第一原発にいたっては、復旧作業が進展するどころか、時間が経過するにつれ、問題が深刻化し、未だ出口が見えない状況だ。震災以降は、日本全国の原子力発電所で原発が相次いで停止し、現在稼働しているのは、17原発50基中2基のみとなっている。

 そんな原発停止により深刻化する電力不足を背景に、昨年9月に値上げに踏み切った東京電力に続き、関西電力も今年4月からの電気料金の値上げを経済産業省に申請している。現在は同省の「電気料金審査専門委員会」にて審議中ではあるが、もし関西電力の申請がそのまま許可されれば、家庭向けである規制分野では11.88%、企業向けいたっては自由化分野で19.23%と2割近くの大幅な値上げになる予定だ。電気料金値上げの流れは首都圏や関西圏のみにとどまらず各地域の電力会社に波及しており、さらにこのまま原発が再稼働しない状態が続くと、さらなる値上げに踏み切る可能性もある。

 一般家庭にとっては、電気料金の値上げは家計を締め付ける深刻な問題だが、企業にとっても電力コストのアップは業績を左右する重要なファクターとなることは確かだ。原子力に変わる新たな再生可能エネルギー発電が期待されているが、十分な供給体制が確立するまでには、まだ当分時間がかかるだろう。しかし、そうした中でも、現実的な視点に立って積極的に節電対策に取り組んでいる企業も増えているようだ。

 コンビニエンスストアチェーン大手のローソン<2651>は、昨年12月に消費電力量を30%削減できる店舗「海老名上今泉二丁目店」を新規オープンさせた。この店舗は、ローソンが2008年から東京大学生産技術研究所と共同で省エネの実験を繰り返して得た成果を投入した店舗で、これをテストケースとして、既存店舗の改良や新規店舗の建設に活用をすすめていくという。

 また、伊藤園グループ<2593>のタリーズコーヒージャパンも、東京都練馬区の西武池袋線江古田駅前に、太陽光発電システムや据え置き型のリチウムイオン蓄電池、ヒートポンプ給湯機やLED照明といった省エネ器具を取り入れた新店舗をオープンさせている。災害発生時には、蓄電池に充電した電力を利用して避難所のように活用したり、給湯器タンク内に貯めておいた420リットルのお湯を供給することが可能で、さらにこのような省エネ店舗を拡大していく方針のようだ。

 こうした節電の流れに企業単位で早くから取り組んでいるのが照明メーカーでもあるローム<6963>だ。同社は、2010年5月に省エネビルとしてリニューアルした「ローム京都駅前ビル」の照明関連設備に自社製LED照明を全面的に導入するなど、東日本大震災が起こる前から環境に配慮した省エネ型オフィス空間作りを積極的に実践してきたが、2月28日には本社施設内のオフィス部分および工場に至るまで全面的にLED化を実施すると発表した。約13,300本の自社製「直管形LEDランプ」の導入を進めており、3月に完了する予定だという。24時間稼働する工場は、一般的だが、社員しか利用しない事務所スペースまですべてLED化するのは極めて異例で、同社の半導体技術を活かした「直管形LEDランプ」は従来の蛍光灯に比べて照明部分だけで約50%の電力削減が可能なうえ、安定器で必要としていた待機電力も不要となるため、全体で1日あたり約6,200Kwh(年間電気代換算:2,000万円以上)の電力削減が可能になるという。

 春以降は全国的に電気料金が値上げになる方向性が強くなってきたことで、個人や一般家庭においても節電に対する関心が急速に高まってきている。そうした意味でも、上記のような企業の現実的かつ効率的な節電活動は、一般家庭においても参考にしやすいひとつの指標となり得るだろう。企業側にとっても節電で電力コストを大きく抑えることができる上、その省エネ効果を公表していくことで会社のイメージアップにもつながるなど、メリットも大きいはずだ。(編集担当:北尾準)