AIは「検索」から「理解」へ リコーが解く日本企業の”紙資産”問題

2026年06月18日 17:03

リコー

企業に蓄積された紙資料や文書データをAIが知識資産として活用するイメージ。リコーは図表や複雑なレイアウトを含む日本語ドキュメントの読解性能を向上させるワークフローを開発し、企業内に眠る知識資産の有効活用を支える技術として展開を進める。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント(約200文字)

リコーは図表や複雑なレイアウトを含む日本語ドキュメントの読解性能を向上させるワークフローを開発しました。企業には長年蓄積された請求書、マニュアル、経営資料など膨大な紙資産が存在しますが、その多くは十分に活用されていません。生成AIの市場競争が文章生成から企業内に蓄積された知識の活用へと関心が広がる中で、人工知能は単なる検索ツールから企業の知識基盤へと進化し始めている背景を象徴しています。

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 リコーが発表した新たなドキュメント読解強化ワークフローは、人工知能技術のビジネス適用における関心事が、文章の自動作成や単純なキーワード検索から、企業内に埋没している膨大な固有情報の構造的な理解へとシフトしつつある流れを浮き彫りにしています。対話型AIの登場に端を発した世界的な生成AIブームは、当初はメール文面の作成や定型業務の補助といった個人の生産性向上に焦点が当てられてきましたが、市場が成熟期に入るにつれて、企業側のニーズは社内に存在する膨大なページ数の過去資料や固有のドキュメントを人工知能に正しく理解させられるかという実践的な段階へと移行しています。

 多くの日本企業には、長年の事業活動を通じて蓄積された請求書や契約書、技術図面、業務マニュアル、過去の会議資料、財務的な経営資料、さらには図表を伴う各種報告書など、膨大な知識資産が眠っています。これらの資料は形式的にはデジタル化されてPDFなどのファイル形式に変換されていたとしても、従来のテキスト抽出を中心とした人工知能では、ページ内の複雑なレイアウトや図、表の中に含まれる文脈を正確に読み解くことが意外なほど難しく、実務での活用には大きな壁が存在していました。今回リコーが開発した技術は、テキストと図表の構造的な関係性を踏まえて情報を抽出するドキュメント解析処理技術を採用しており、これまでデータとして死蔵されがちだった企業内に蓄積された知識資産の活用の道を開くものとして位置づけられます。

 このアプローチが産業界において持つ意味は、従来のデジタル・トランスフォーメーションが目指した業務プロセスの電子化や効率化を踏まえ、知識そのものを企業の競争力へと結び付ける取り組みとして位置付けられます。これまでのDXは紙の書類をデータに変えることで業務をデジタル化してきましたが、そのデータに含まれる知見やノウハウは依然として個別の文書の中に眠ったままでした。人工知能がドキュメント内の複雑な図表までを含めて人間と同じように意味を理解できるようになれば、企業が数十年をかけて蓄積してきた固有の情報資産そのものが他社に対する直接的な競争優位性へと昇華することになります。

 また、リコーが今回のワークフローをオンプレミス環境や自社データセンター向けに構築されたシステムへ搭載する方針を示している点は、今後の企業インフラにおけるガバナンスとセキュリティの重要性を物語っています。生成AIが経営の中枢やコア業務に深く組み込まれるほど、他社に開示できない機密情報や独自の経営資料、最先端の技術情報などを外部のクラウド環境に送信することに対するリスク管理の要求は厳格化します。企業の重要データを自社環境内で安全に管理しつつ、独自のSelf-MoA技術によって複数の回答を統合し、高効率な推論を実現する仕組みなどを組み合わせることで、限られたリソースでも高いセキュリティと回答品質を両立させる需要に応えています。

 近年のグローバルなAI競争は大規模言語モデルそのものの賢さやモデルの規模を競う傾向が続いてきましたが、今後は誰でも利用できる標準的な知能をいかにして自社独自の資産に適用するかが勝負の分かれ目になります。対話型AIのような汎用ツールは競合他社も同様に導入可能ですが、各社が持つ独自のノウハウや過去の意思決定資料、専門的な技術文書、現場の業務知識は、その企業だけにしか存在しない真の経営資源です。人工知能が単に美しい文章を書くツールから、企業のディープな知識を瞬時に経営資源へと変換する情報プラットフォームへと進化しつつある現実の中で、リコーの今回の取り組みは企業が蓄積した知識資産の活用を支える基盤技術として注目されそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)