特殊詐欺や闇バイト対策の強化に向け、政府はSMS機能付きデータ通信専用SIMの本人確認義務化や多回線契約の運用見直しなど、通信契約に関する新たなルール整備を進めます。(写真:スマートフォンのイメージ)
今回のニュースのポイント
総務省のワーキンググループは、改正携帯電話不正利用防止法に基づく制度整備の方向性を取りまとめました。本人確認の対象をSMS機能付きデータ通信専用SIMへ拡大するほか、多回線契約の運用や法人契約時の確認方法を見直し、特殊詐欺や闇バイトなど犯罪インフラへの対策を強化します。制度は通信サービスの利便性にも配慮し、IoT用途などは対象外とする方向が示されました。
本文
政府の特殊詐欺や闇バイト対策が、携帯電話やデータ通信の「契約ルール」そのものへと大きく踏み込んでいます。総務省の「不適正利用対策に関するワーキンググループ」は3日、改正携帯電話不正利用防止法に基づく省令整備などの方向性(論点整理)を取りまとめました。今回の見直しは単なるユーザー規制や事業者の事務手続きの変更ではなく、SNS型投資・ロマンス詐欺や組織犯罪の実行ツールとして悪用される通信インフラを「入口」で遮断するための重要な犯罪防衛策として位置付けられています。
制度改正の最大の柱となるのが、本人確認義務の対象範囲の拡大です。従来の法律では主に音声通話機能付きSIMが対象でしたが、新たに「SMS機能付きデータ通信専用SIM」についても契約時の本人確認が義務付けられる方向となりました。警察庁の調査等において、本人確認手続きを経ていないSMS付きSIMがメッセージアプリや金融サービスのアカウント作成(SMS認証)に悪用される事例が多発しているためです。一方で、SMS機能を持たないデータ通信専用SIMや、産業用IoT・見守り機器などSMS機能があっても不特定多数との通信や認証に使えない限定的用途のサービスについては、経済活動への影響や実務上の利便性を考慮して対象外とする方針が示されています。
個人による無制限な多回線契約への対応も具体化されます。音声SIMおよびSMS機能付きデータ通信専用SIMについて、それぞれ「5回線」を事業者が契約提供の可否を判断する際の原則的な基準として設定します。ただし、これは一律に契約数を制限するものではありません。家族利用や個人事業主の業務利用、スマートウォッチ等の端末利用など、不正利用の恐れが低い正当な利用目的が確認・説明できる場合には5回線を超える契約も認められます。狙いは契約数そのものを規制することではなく、事業者が説明責任を果たせる明確な運用基準を設ける点にあります。
さらに、法人名義を抜け道とした多回線契約や不正転売を防ぐため、法人契約時の確認手続きも厳格化されます。従来の商慣行で見られた名刺や社員証による契約担当者の確認は、偽造が比較的容易であり契約権限を証明できないとして認めない方針が打ち出されました。今後は登記情報や委任状、電話確認、あるいは電子証明書などの確実な方法による権限確認が求められます。なお、追加回線の契約時に本回線時と同一の担当者であることが確認できる場合は権限確認の省略を認めるなど、実務負担への配慮もなされています。
今回の制度整備では、犯罪防止の実効性を高めつつも、デジタル社会における利便性を損なわないバランス調整が重視されています。電子的な本人確認(eKYC)の活用や具体的な事例集(Q&A)の整備を通じ、通信事業者や正当な利用者が過剰な負担を負わない運用を目指す考えです。
一連の動きは、政府が推し進める「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」や特殊詐欺の撲滅に向けた通信インフラの防衛対策といえます。犯行ツールとなる通信手段の匿名性を低減し、不正利用の費用対効果を大幅に悪化させることが狙いです。今後は総務省令の改正やガイドラインの策定を経て具体的な運用が固まり、通信各社の契約現場へと順次反映されていくことになります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













