年金積立金、過去最高302兆円 運用好調の一方で膨らむ基礎年金給付

2026年08月08日 19:58

116_e

2025年度の年金積立金は時価ベースで過去最高の302兆5,893億円となった。写真は厚生労働省

今回のニュースのポイント

厚生労働省が7日に発表した2025年度の厚生年金保険・国民年金収支決算によると、決算結了後の年金積立金は時価ベースで前年度比42.5兆円増の302兆5,893億円となり、過去最高を更新しました。時価ベースの運用利回りが15.85%(厚生年金)と好調だったほか、雇用や賃金の改善による保険料収入の増加が押し上げました。一方で、基礎年金の給付に要する費用の増加などにより歳出も4.2兆円増えて歳入歳出差は縮小しており、「積立金302兆円で年金は安泰か」という視点も含めた構造的な理解が必要です。

本文
 厚生労働省が7日公表した2025年度(令和7年度)の厚生年金保険・国民年金の収支決算資料によると、決算結了後の年金積立金残高は時価ベースで302兆5,893億円に達し、初めて300兆円の大台を突破して過去最高を更新しました。簿価ベースでは130兆2,837億円ですが、市場価格の含み益等を反映した時価ベースでは前年度の260兆757億円から1年間で42.5兆円(42兆5,136億円)増加しました。内訳は厚生年金が288兆9,623億円(6年連続増加)、国民年金が13兆6,270億円(2年ぶり増加)となっています。

 積立金が大きく増えた要因には好調な運用環境があります。2025年度における厚生年金の時価ベースの運用利回りは15.85%を記録し、厚生年金勘定の時価積立金だけで1年間に41.2兆円(41兆2,005億円)増加しました。さらに現役世代からの保険料収入も底堅く推移しました。厚生年金の保険料収入は前年度比1.3兆円増の37兆6,782億円となりました。これは平均被保険者数が前年度から63.1万人増えて4,342万8,000人となったことに加え、平均標準報酬月額が32万8,000円から33万5,000円へと上昇したことが寄与しています。

 しかし、単年の収支(フロー)を見ると注意すべき変化が生じています。厚生年金の歳入は53兆3,210億円(前年度比2.9兆円増)となったものの、歳出が51兆5,557億円(同4.2兆円増)とそれを上回るペースで増えた結果、歳入歳出差は前年度の3兆735億円から1兆7,653億円へと1兆3,082億円縮小しました。歳出増加の大きな要因となったのが、基礎年金の給付に要する費用の増加です。厚生年金勘定から基礎年金勘定への繰入額(拠出金)は前年度の17兆6,206億円から21兆4,901億円へと約3.9兆円増加しており、給付を支える費用が大きく膨らんでいる現状が示されています。

 「積立金が302兆円あるから安心」と捉えがちですが、この数字だけで年金制度全体の持続可能性を判断することはできません。時価ベースの積立金の大幅な増加には高い運用収益が寄与しており、市場環境によって時価評価額は大きく変動する性質を持っています。また、公的年金は毎年の保険料収入や国庫負担、積立金の運用収益などによって給付を支えており、基礎年金の給付に必要な費用の増加などによって歳入歳出差が縮小している点も見逃せません。

 年金財政を考える上では、単なる積立金残高の大きさだけでなく、保険料収入と給付費の動向、そして中長期的な運用成果の3点を総合的に捉えることが重要となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)