文科省部会、ライフサイエンス研究基盤のAI対応を提言 データ連携・創薬支援を強化

2026年08月17日 15:09

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文部科学省。科学技術・学術審議会の作業部会は、AI時代を見据えたライフサイエンス研究基盤の今後の在り方をまとめた

今回のニュースのポイント

文部科学省の科学技術・学術審議会の作業部会は、ライフサイエンス研究を支える基盤の今後の在り方をまとめました。AIやデータサイエンスの急速な進展を踏まえ、研究データをAIが利用しやすい形で整備・連携するとともに、バイオリソースや創薬研究支援を一体的に強化することを提言。日本独自のデータや生物資源を重要な資産と位置付け、研究力や産業競争力の向上につなげる方針を示しています。

■ 日本のライフサイエンス研究、AI時代への対応急ぐ

 医療や創薬、バイオ産業の発展を支えるライフサイエンス研究において、AI(人工知能)やデータサイエンスを活用したデータ駆動型研究への転換が世界的に加速しています。

 こうした中、文部科学省の科学技術・学術審議会基礎・横断研究戦略作業部会が取りまとめた報告書では、日本のライフサイエンス研究について懸念が示されました。論文数自体は一定の水準を維持しているものの、引用数など研究インパクトの相対的な低下や、国際的な研究ネットワークでの存在感縮小が指摘されています。さらに、新規バイオ製品や医薬品の創出の停滞、医薬品分野における輸入超過などが、産業競争力の低下にもつながっていると指摘されています。

 国際的な研究開発競争が激化するなか、日本の研究力や産業競争力を強化するためには、研究データや研究支援体制を「AIとデータを前提とした環境」へ迅速に転換することが急務となっています。

■ 研究データを「AI-ready」に ナショナル基盤へ

 今回の提言で特に重視されているのが、研究データの「AI-ready(AIが即時利用可能な状態)」化です。

 従来の研究データはフォーマットが統一されておらず、国内のさまざまなデータベースに分散して存在する状態が課題となっていました。報告書では、メタデータの標準化や品質確保を進め、異なる形式のデータを機械可読な形で統合・整理する方針を打ち出しています。

 特に、ナショナルライフサイエンスデータベースプロジェクト(NLDP)については、これまでの「データを蓄積・検索・統合するデータベース」から、「AIモデル開発・活用を支えるナショナル・データプラットフォーム」への質的な転換を目指すとしています。欧米のナショナルセンター機能も参考にしながら、国内の分散データベースの司令塔機能を強化する考えです。

■ 日本独自の生物資源も「国の重要な資産」

 AIによる解析や推論がどれほど進化しても、最終的な科学的検証には生体を用いた実験が不可欠です。

 ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)では、マウスやゼブラフィッシュといった世界的なモデル生物から、日本独自性の高いアサガオなどに至るまで、2024年度末時点で約468万6,000件の生物資源を保存・管理しています。提言では、日本が持つ資源・技術・データなどを「国としての重要な資産」と位置付け、日本でしか集められないデータや資源、国際的に代替が難しい研究基盤を長期的・安定的に維持する必要性を示しました。

 これらを失われないよう維持するとともに、配列データやメタデータをデジタル化して集積。「データ主権」に配慮しつつ、AIによる予測検証や国際共同研究へ円滑に接続できる研究創出基盤へと高度化させる方針です。

■ 創薬支援もAI・データと一体化

 先端研究機器と専門人材を提供する生命科学・創薬研究支援基盤事業(BINDS)においても、AI時代に対応した機能強化が提言されています。
 
 BINDSはクライオ電子顕微鏡などの最先端装置の共用や高度な技術支援を行い、これまでに累計4,052件の研究支援、3,625件の論文発表、327件の創薬シーズ創出に貢献してきました。今後の展開として、既存の支援体制に加え、生成AIを活用した分子設計や、研究データの集積・管理やNLDPとの連携を担う「データ管理部門」の新設を検討すべきだとしています。

 さらに、NBRP(バイオリソース)、NLDP(データベース)、BINDS(創薬支援)の3事業を個別に運用するのではなく、司令塔機能を強化して相互にデータやサービスを連携させ、一体的に機能する体制を目指すとしています。

■ 研究基盤をどう持続させるかも課題

 一方で、研究基盤を将来にわたって持続可能な形で運営するための財務面・人材面の課題も顕在化しています。

 昨今の物価高騰や円安、人件費、光熱水費の上昇に加え、先端研究機器の維持・更新費用が著しく膨らんでいます。提言では、アカデミアの研究者が原則無償または低廉な価格で利用できるという基本コンセプトを維持しつつも、国による基盤的支援に加えて、高額試薬の使用や大型機器の運用にあたっては相応の「受益者負担」を求める仕組みについても検討すべきだとしています。

 AI時代の研究競争が世界的に激しくなるなか、日本が蓄積してきた生物資源や研究データをどのように結び付け、創薬や新たな科学的発見につなげるか。研究基盤そのものをAI時代にどう対応させていくかが、今後のライフサイエンス政策の重要な課題となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)