今回のニュースのポイント
経済同友会は、人口減少や地方公務員の人手不足が進むなか、地方自治体が行政サービスをそれぞれ単独で担う「単独・自前型」から、複数自治体が機能や役割を分担する「連携・分業型」へ転換するよう提言しました。現行の地方交付税制度について、自治体が連携して施設統廃合や人員配置の効率化を進めても、その成果が財源面で十分に報われにくいと指摘。短期的には複数自治体による共同処理を基準とした交付税算定への見直しや、広域連合などへの直接交付を求めています。さらに中長期では地方交付税制度そのものの抜本改革を提唱しています。
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経済同友会は8月17日、提言「人口減少時代の地方自治―単独・自前型から連携・分業型への転換―」を公表しました。人口減少や少子高齢化の進行により、地方自治体を取り巻く環境が厳しさを増すなか、行政サービスのあり方を根本から見直すよう求めています。
同友会の基本認識は、技術職や一般行政職の不足が進む一方で、高齢化に伴う医療・介護需要の増加、公共インフラの維持・更新、激甚化する災害への対応、デジタル化の推進など、地方行政に求められる機能はむしろ増大しているというものです。こうした課題に対し、すべての行政サービスを各自治体が自らの人材や財源で提供する従来の「フルセット主義」は限界を迎えていると問題提起しています。
そのうえで、限りある資源を持ち寄り、それぞれの強みや特徴に応じて役割や機能を分担する「連携・分業型」への転換を提唱しました。
■ 2045年、地方公務員の充足率78%との推計も
提言では、自治体が直面する人手不足の深刻さを示すデータとして、日本総合研究所の研究を引用しています。それによると、2045年には地方公務員の充足率が78%にとどまるとの推計が示されており、特に小規模な自治体ほど深刻な人手不足に陥ることが懸念されています。
一方で、消防や医療、上下水道、ごみ処理、学校などは、人口が減少して利用者が減ったとしても、施設や設備、人員を維持しなければなりません。その結果、固定費の比重が高まり、住民一人あたりのサービス提供コストが上昇する悪循環に陥ると指摘しています。
■ 「連携しても得をしない」地方交付税を見直し
今回の提言で最も大きな焦点となっているのが、地方交付税制度の改革です。同友会は、現行の交付税制度が自治体単位で行財政需要を積み上げる構造になっていると指摘します。
この仕組みのもとでは、自治体が連携して施設の統廃合や人員配置の効率化を進めてコストを削減しても、翌年以降の基準財政需要額が減少する結果、地方交付税が減額されやすい構造があります。効率化に取り組んでも財源面で恩恵を受けにくく、「努力が十分に報われない」仕組みになっていることが、自治体間連携の広がりを阻んでいると問題視しています。
さらに現行制度は人口の増減が交付税額に直結しやすいため、地域全体で協力するよりも、自治体間で限られた人口を奪い合う動機が働きやすいと分析しています。こうした課題を解消するため、同友会は「連携を進めるほど交付税が増える、または進めなければ減る仕組み」を組み込むべきだと提言しました。
■ 共同処理を交付税算定の基準に 広域連合へ直接交付
具体策として同友会は、短期的な改革と中長期の抜本改革を分けて進めるよう求めています。
短期的な改革としては、普通交付税の算定方式の見直しを掲げました。各自治体が単独で実施した場合の経費を基準にするのではなく、複数自治体による共同設置や共同処理を基準に単位費用を設定する方式への転換を提案しています。単独で実施する自治体に対しては配分額が相対的に少額となる仕組みにすることで、連携へのインセンティブを高める狙いです。
あわせて、広域連合や一部事務組合など、実際に広域で事業を担う組織を直接の交付対象とし、連携単位で基準財政需要額・収入額を算定して直接交付する仕組みの導入も求めました。自治体を経由せずに広域連携組織に直接財源を配分することで、事業単位での予算や運営の一元化が進みやすくなるとしています。
中長期的には、地方交付税制度そのものの抜本的改革を提唱しています。財源保障と財政調整の両機能を抱え込んだ現行制度を見直し、国が義務付ける支出は国庫支出金に整理したうえで、地方交付税は財政調整機能に重点化する方向性を示しました。ただし、70年以上にわたり地方財政の根幹を担ってきた制度であるため、混乱を避けるべく経済財政諮問会議や地方財政制度審議会で議論に着手することを求めています。
■ 消防・水道・窓口、サービスごとに「適正規模」
同友会は、すべての業務を一律の単位で広域化するのではなく、行政サービスごとに最適な提供範囲を検討する必要があるとしています。
提言内では、学術研究等の蓄積をもとにした各事業の目安となる規模感を紹介しています。例えば、窓口業務は処理費用が最小となる規模として100万人程度、上水道はネットワークの経済性が確認される規模として77.6万人、消防本部は50万人程度などが例示されています。
ただし、これらは同友会が独自に設定した基準ではなく、あくまで先行研究等を整理した目安であり、実際の連携にあたっては地理的条件や産業構造などを考慮する必要があると補足しています。すべてを同じ行政単位で処理するのではなく、事業の性質に応じた最適な圏域を設定することが合理的であるとの考え方に基づいています。
■ 半官半民「公務・公共サービス法人」創設も
制度の見直しと並ぶもう一つの柱として、実際の連携を企画・実行する担い手を確保するための「公務・公共サービス法人」制度の創設を提案しました。
自治体と民間企業の共同出資を基本とする半官半民の組織を想定しており、自治体間連携や官民連携の設計・提案、民間委託時のモニタリングなどを担わせる構想です。専門人材やノウハウを集約し、必要に応じて窓口業務やデジタル化、施設管理といった行政サービスの運営を受託する機能も付与するとしています。
この法人から改善提案を受けた自治体に対しては、一定期間内に理由を付して諾否を回答する義務を課すことが望ましいとしています。職員については自治体や民間からの出向のほか独自採用も可能とし、公的役割を考慮して「みなし公務員」と位置付けるよう提言しています。
■ 人口減少時代、「自治体=行政サービスを全部自前」から転換
今回の経済同友会による提言は、単なる地方のコスト削減策ではありません。人口減少下においても住民生活に必要な行政サービスを持続的に提供するため、行政区域とサービス提供単位を切り離して考える発想への転換を促しています。
全サービスを一つの区域に統合する市町村合併ではなく、サービスごとに最適な連携・分業モデルを柔軟に組み合わせるアプローチが示されました。同友会は、自治体間連携を例外的な対応ではなく「地方自治・地方創生の新たな標準」と位置付け、制度化と実装を進めるよう求めています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













