今回のニュースのポイント
ソフトバンクとエリクソン・ジャパンは、ソフトバンクの5G商用ネットワークにおいて、エリクソンの「AI in RAN」ソフトウエアを活用した実証を行い、通信性能の向上を確認したと発表しました。基地局内のAIが電波環境をリアルタイムに判断して最適化を行うことで、下りユーザースループット(データ転送速度)が最大約50%向上し、全評価エリア平均でも約10%改善しました。AIサービスの普及で通信需要が増加・複雑化する中、5GネットワークそのものをAIで制御する先進的な取り組みとなります。
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ソフトバンクとエリクソン・ジャパンは20日、ソフトバンクの5G商用ネットワークにおいて、エリクソンの無線アクセスネットワーク(RAN)向けAI機能「AI in RAN」を導入し、通信性能を最適化する実証に成功したと発表しました。両社によると、エリクソン製装置における同技術の5G商用網での実証は国内で初めて(2026年7月末時点のエリクソン・ジャパン調べ)となります。実証では、通信基地局の内部にAIを組み込み、リアルタイムで無線環境を制御しました。その結果、従来の制御方式と比較して、一定の周波数帯域でどれだけ多くのトラフィックを伝送できるかを示す「スペクトル効率」が最大約25%向上したほか、受信側の通信実効速度を示す「下りユーザースループット」が最大約50%向上しました。また、すべての評価エリアで両指標が平均約10%改善し、一貫した性能向上も確認されました。
今回の取り組みの鍵となるのは、通信を最適化する判断を「静的なルール」から「AIによるリアルタイムな判断」へと進化させた点にあります。従来の通信制御(リンクアダプテーション)は、主にオフライン分析や静的なパラメーター設定に基づくルールベースのアルゴリズムに依存していました。これに対し、今回検証した「AIネイティブ・リンクアダプテーション用スケジューラー」では、基地局のベースバンド装置上において、学習済みのAIモデルを用いて刻々と変化する無線環境に応じた推論を行います。電波干渉が大きいエリアや基地局同士の境界(セル境界)、利用者が集中する混雑地点などにおいて、AIがチャネル容量を予測し、最適な下り伝送レートをリアルタイムで自動選択します。
この技術がもたらす最大の意義は、限られた周波数帯域をより効率的に活用できる点にあります。実証で最大約25%向上した「スペクトル効率」とは、与えられた周波数帯域幅でどれだけ多くのトラフィックを伝送できるかを示す指標です。スマートフォンや生成AIの利用拡大に伴い通信需要は急増していますが、利用可能な電波(周波数)のリソースには限界があります。通信需要の増加に対して単に「道路を広げる」ように周波数や設備を増やすだけでなく、AIを用いて既存の周波数帯域の中に「より多くの交通をスムーズに流す」ことで、ネットワーク全体の収容能力を引き上げることが可能になります。
こうした取り組みの背景には、生成AIサービスやAIアシスタント、自律型エージェント、没入型アプリケーションといった高度なサービスの普及が存在します。これらのサービスが日常化することで、モバイル通信市場では単純なデータの伝送量が増えるだけでなく、時間帯や場所などによる新たなトラフィックパターンや、より高度な接続ニーズへの対応が求められています。つまり、AIサービスの広がりによって増大・複雑化する通信インフラ側においても、5Gネットワークの仕組みそのものをAIで制御・最適化することが重要になっています。
また、AIが判断を下す「場所」もポイントです。今回の技術では、通信基地局内にあるベースバンド装置上でAIを直接動作させています。無線環境は利用者の移動や混雑、電波干渉などによって刻々と変化するため、基地局のベースバンド装置上でAIがリアルタイムに判断する仕組みが重要になります。実証ではソフトバンクがトラフィック特性を踏まえた評価エリアの要件定義を担当し、エリクソンが実際のネットワークデータを用いてAIモデルの学習やチューニングを担当するなど、両社が連携してパラメーター設計から評価までを行いました。
両社は今回の実証成果を、今後の「5G-Advanced」や将来の第6世代移動通信システム(6G)に向けたAIネイティブなネットワーク構築への重要な一歩と位置付けています。通信インフラ分野において、設備投資による物理的な容量拡張にとどまらず、AIによって既存の通信資源をどこまで効率化できるかが業界の主要テーマになりつつあります。生成AI時代の到来で通信需要そのものが変容する中、商用5G網で示された今回の成果は、次世代通信基盤の姿を象徴する事例となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













