AI時代の通信網、日本勢が世界標準を主導 低遅延・低消費電力の設計指針

2026年08月22日 09:42

KDDI

異なる通信事業者間でAPNを相互接続するための設計指針のイメージ。ITU-T Y.3335の標準化により、事業者をまたぐ低遅延・低消費電力なオール光ネットワークの相互接続を容易にする(画像:KDDIなど国内7社発表資料より)

今回のニュースのポイント

KDDIやNTTなどの国内主要通信・機器メーカー7社は、AI時代を支える低遅延・低消費電力なネットワークの設計指針の策定を主導し、国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU)の電気通信標準化部門(ITU-T)において「勧告Y.3335」として国際標準化されたと発表しました。総務省が推進する「Beyond 5G推進戦略2.0」の戦略分野である「オール光ネットワーク(APN)」の知見をベースに、特定の団体や実装方式に依存しない設計指針を規定。複数の通信事業者にまたがるAPNサービスの構築を容易にし、広域拠点間での高速・低消費電力な通信サービスの利用につなげる狙いです。

本文
 KDDI、NTT、1FINITY、NEC、楽天モバイル、沖電気工業、住友電気工業の国内7社は21日、AI時代に対応する低遅延・低消費電力ネットワークの設計指針について、国際電気通信連合(ITU)の電気通信標準化部門(ITU-T)において国際標準化を達成したと発表しました。標準化が完了したのは8月13日で、ITU-T勧告「Y.3335(Framework of low-latency and energy-efficient networks)」として正式承認されました。今回の設計指針は、総務省の「Beyond 5G推進戦略2.0」で戦略分野に位置付けられる「オール光ネットワーク(APN)」の技術知見が活用されており、次世代通信網の普及に貢献する共通ルールとなります。

 オール光ネットワーク(APN)は、大容量・低遅延・低消費電力な通信を実現する次世代の通信基盤です。生成AIをはじめとする人工知能技術が発展する中、遠隔地のセンサーやロボットから得られるデータのリアルタイム処理を可能にすることから、フィジカルAIをはじめとした次世代サービスを支える基盤技術として世界的な普及が期待されています。

 しかし、どれほど優れた通信技術であっても、特定の国や企業の中に閉じた環境でしか使えなければ世界規模での相互接続性は見込めません。APNに関しては、IOWN Global Forumなどで技術要件の策定が進むほか、国内でも異なる通信事業者のAPN同士を接続する光ネットワークフェデレーション技術の研究開発が行われてきました。一方で、こうした活動に参加していない海外の事業者や国・地域を含め、世界規模での相互接続性や普及を実現するためには、より広範な国際的合意に基づく共通した設計指針を整備することが課題となっていました。事業者や国・地域をまたいでも、低遅延・低消費電力な通信経路を構築するための共通指針が求められていたためです。

 こうした課題に対応するための共通の設計指針が、今回の「ITU-T勧告Y.3335」です。異なる事業者間であっても低遅延・低消費電力な通信経路を構築できるよう、具体的なネットワーク構成や技術要件を規定しました。重要な点は、日本企業が培ってきたAPNや相互接続技術の知見を、特定の団体や実装方式に依存しない設計指針として体系化したことです。これにより、複数の通信事業者にまたがるAPNサービスの構築が容易となり、広域拠点間でも高速かつ低消費電力な通信サービスの利用が期待されます。

 背景には、AIの進化に伴う通信インフラへの要求の変化があります。遠隔地のセンサーやロボットから得られる大量のデータをリアルタイムに処理するには、通信網にも大容量だけでなく低遅延が求められます。また、大量のデータを扱うAI時代では、通信インフラの消費電力を抑えることも重要になります。そのため、単に通信容量を増やすだけでなく、低遅延と省電力を備えた通信インフラの重要性が高まっています。

 今回の国際標準化は、日本で培われたAPNの知見や光ネットワークフェデレーション技術の研究成果を、特定の団体や実装方式に依存しない設計指針として世界規模で共有する動きにつながります。国内7社は今後も連携して国内外での標準化活動を推進し、ITU-Tにおいては2028年10月を目標に、低遅延・低消費電力ネットワークの詳細な機能アーキテクチャに関する新たな勧告の策定を進め、AI時代を支えるAPNのグローバルな普及に貢献していく方針です。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)