日用品大手、売上以上に利益伸びる 花王・ライオンに見る「稼ぐ力」の改善

2026年08月23日 15:31

日用品

花王とライオンの2026年12月期中間決算。高付加価値商品の拡大や海外事業の成長などを背景に、両社とも売上高の伸びを上回る営業増益となった。画像は決算の主要数値と収益改善のポイントをまとめたイメージ

今回のニュースのポイント

日用品大手の花王とライオンの2026年12月期中間決算は、両社とも増収となる一方、利益は売上高を大きく上回る伸びとなりました。花王は売上高が前年同期比7.8%増に対して営業利益が38.5%増、ライオンも売上高8.7%増に対して営業利益は54.7%増。高付加価値商品の販売拡大や海外事業の成長、価格改定、事業構造改革などが収益改善につながりました。一方、両社とも資産・事業売却による一時的な利益押し上げ要因があります。売上規模を追うだけでなく、利益を生み出す事業構造への転換がどこまで進んでいるのか、2社の決算から読み解きます。

■ 売上1桁増に対し、営業利益は花王39%増・ライオン55%増

 日用品大手2社が発表した2026年12月期中間連結決算(2026年1〜6月)は、売上高の伸び率を大幅に上回る営業増益を記録しました。

 花王の決算(IFRS)は、売上高が前年同期比7.8%増の8,719億3,400万円、営業利益が同38.5%増の958億3,100万円、親会社の所有者に帰属する中間利益が同32.3%増の656億6,200万円となりました。ライオンの決算(IFRS)も、売上高が前年同期比8.7%増の2,168億36百万円、営業利益が同54.7%増の207億3百万円、親会社の所有者に帰属する中間利益が同12.9%増の108億44百万円で着地しました。

 両社ともに売上高は1桁台の伸びにとどまる一方で、営業利益は3割から5割を超える大幅増となっています。「売上数量が増えたから利益も比例して増えた」という単純な構図ではなく、その背景を本業の収益改善と一時的な利益押し上げ要因の両面から見る必要があります。

■ 花王は営業利益率11.0%へ改善、化粧品が急回復

 花王の営業利益率は、前年同期の8.6%から11.0%へと大きく改善しました。

 業績を牽引したのは、主力の「グローバルコンシューマーケア事業」です。同事業の売上高は6,495億円(前年同期比7.2%増)、営業利益は657億円(前年同期比111億円増)と好調に推移しました。なかでも「化粧品事業」は売上高が1,310億円(同10.5%増)、営業利益が58億円(前年同期は3億円)と劇的な回復を見せました。「Curél(キュレル)」や「KATE」といった注力ブランドが日本やアジア市場で堅調に伸びたことが利益を押し上げました。さらに「ケミカル事業」も、半導体関連や電子材料向け高付加価値製品の販売拡大、油脂製品の利幅改善によって営業利益が181億円(前年同期比37億円増)へと増大しています。

 単に売上規模を追うのではなく、競争力のあるブランドや高付加価値製品に注力し、価格改定や稼ぐ力の強化を進めた成果が営業利益率の改善に現れています。

■ ライオンはオーラルケア高付加価値品と「海外」が牽引

 ライオンにおいても、高付加価値シフトと事業展開の成果が示されました。

 一般用消費財事業では、売上高が前年同期比1.6%増の1,236億46百万円、本業の収益力を示す事業利益が同7.1%増の97億87百万円となり、売上以上の利益成長を見せました。牽引役となったのはオーラルヘルスケア分野で、「クリニカ」「システマ」「NONIO」などの高付加価値品を中心に同9.6%増と伸長しました。

 さらに、ライオンの増益を力強く支えたのが海外事業です。海外事業の売上高は前年同期比19.7%増の1,008億59百万円、事業利益は同66.1%増の52億76百万円へと急拡大しました。これは東南・南アジアや北東アジアでの販売増に加え、豪州企業の子会社化や為替影響など複数の要素が重なった結果であり、グローバル展開が同社の重要な成長エンジンとなっています。

■ 一時的な「売却益」の影響と本業の実力

 一方で、今回の営業利益の大幅増益率を額面通りに受け取る際には注意が必要です。両社の営業利益には、事業構造改革に伴う一時的な資産・事業売却益が含まれているためです。

 花王は第1四半期に、ロジスティクス最適化の一環として土地売却益115億円を営業利益に計上しています。またライオンも、構造改革の一環として化学品子会社2社の株式譲渡を行い、関係会社株式売却益等のその他収益を計上したことが営業利益(54.7%増)を大きく押し上げる要因となりました。

 ただし、一時的な利益押し上げ要因がある一方、本業側でも収益改善の動きが確認できます。花王ではグローバルコンシューマーケアや化粧品、ケミカルなどの各事業セグメントで損益が顕著に改善しており、ライオンでも事業売却益などの影響を受けにくい「事業利益」段階で前年同期比21.3%増(153億34百万円)と確実な増益を確保しています。

■ 「値上げ」にとどまらない収益構造改革の成果

 物価高や原材料価格の高騰が続くなか、日用品メーカーの増益は「単なる値上げ効果」と見なされがちです。実際、花王では価格改定も収益改善の要因となっています。

 しかし今回の2社の決算が示しているのは、高付加価値商品の育成、海外市場の開拓、不採算・非中核事業の売却による事業ポートフォリオの見直しなど、複合的な取り組みによる「稼ぐ力」の強化です。市場全体の大幅なボリューム成長が見込みにくいなかで、いかに高付加価値品や成長市場へ経営資源を再配分し、利益の残る体質を作るかという構造改革が進展しています。

■ 通期予想の反映には両社で違い

 中間期の好調な進捗を受け、両社で通期業績予想への反映には対応の違いが出ました。

 花王は中間期の進捗が計画を上回ったことから通期連結業績予想を上方修正し、売上高を1兆8,000億円(前期比6.6%増)、営業利益を1,900億円(同16.2%増)、親会社所有者帰属当期利益を1,350億円(同12.4%増)へと引き上げました。一方、ライオンは通期計画(売上高4,300億円、営業利益400億円、親会社所有者帰属当期利益250億円)を据え置きます。

 花王とライオンの中間決算では、売上高以上に利益が伸びる姿が共通してみられました。一時的な資産・事業売却益が営業利益を押し上げた面には注意が必要ですが、高付加価値商品の拡大や海外事業の成長など、本業でも収益改善が進んでいます。原材料費や物流費などのコスト変動を受けやすい日用品業界で、売上規模だけを追うのではなく、どの商品・市場に経営資源を振り向けて利益を残すか。2社の決算は、日用品大手が進める「稼ぐ力」の改善を映しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)