今回のニュースのポイント
財務省は2026年8月、銀行等保有株式取得機構に対する税制特例の事後評価結果を公表し、本特例措置を引き続き継続する方針を示しました。分析対象となった2022~2025年度の4年間における適用数・適用額・減収額の実績はいずれも「ゼロ」でしたが、急激な経済変動時に銀行などの株式処分を支えるセーフティネット機能を担保するため、財務省は制度の必要性・有効性は高いと評価しています。
本文
財務省は8月、銀行等保有株式取得機構を対象とした課税の特例措置について、政策の事後評価書を公表しました。分析対象期間となった2022年度から2025年度までの4年間における適用状況を検証したところ、適用数、適用額、税収減(減収額)の実績はすべて「なし」となりました。4年間一度も適用実績がない税制特例を、なぜ財務省は継続と判断したのでしょうか。
本特例の対象である銀行等保有株式取得機構(以下、機構)は、銀行等による株式等の処分を円滑に進めるとともに、銀行等と事業会社などとの株式相互保有関係の解消に資する役割を担っています。財務省は、機構による銀行等の株式等の処分に係る機能を「セーフティネット」と位置付けています。
4年間の適用実績はゼロであったものの、機構そのものが活動していないわけではありません。公表資料によると、機構は設立から2025年度末までの間に累計で3兆円を超える株式等の買い取りを行ってきました。買い取りにあたっては損失発生を極力回避し、処分時期を分散するなど市場への影響を抑える方針で処分も進めており、財務省はセーフティネットとして相応の役割を果たしていると評価しています。
今回の特例は、機構の財務面における安定的な業務運営基盤を確保するための税制上の措置です。通常の法人税法では、欠損金(赤字)の繰越期間は10年間、控除限度額は所得金額の50%と規定されています。これに対し特例措置では、繰越期間の制限を無くし、控除限度額も所得金額の100%まで拡大されています。買い取った株式を長期間保有・処分する特殊な業務において、生じた欠損金を将来の所得から柔軟に控除できる構造となっています。
実績がゼロでありながら特例を維持する理由について財務省は、特例が措置されなかった場合、機構の財務的な安定性が損なわれ「経済情勢等の急激な変動が発生した場合において、機構がセーフティネットとしての役割を十分に果たすことができなくなるおそれがあった」と説明しています。日常的な利用を前提とするというより、経済情勢等が急激に変動した場合にも金融システムの安全網を機能させるための「非常用の備え」に近い位置付けと言えます。
一方で、今回の事後評価では直接的な政策効果について「他の政策手段として妥当なものは存在せず比較は困難」としており、有識者の見解欄は「―」となっています。財務省は特例の有効性を高く評価していますが、効果が実証されたからではなく、機構の持つ役割の観点から継続が必要であると整理されています。
財務省は今回の事後評価を踏まえ、本特例措置を引き続き継続すると決定しました。2022~2025年度の4年間、適用実績も税収減もなかった銀行株処分の税制特例。平時における利用実績の有無だけで判断せず、市場急変時の安全網をいかに税制面から維持するかを示す一つの事例となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













