総務省、AI時代へ通信・地域・防災に重点 概算要求から見える「3つの投資先」

2026年08月31日 07:22

総務省

都市と地方を結ぶ次世代通信ネットワークやデータセンター、AI活用をイメージした画像。総務省は2027年度概算要求で、AI社会を支える情報通信基盤の整備などを重点施策に掲げた(画像はイメージ)

今回のニュースのポイントです。

総務省がまとめた2027年度(令和9年度)予算の概算要求は、一般会計で21兆9171億円+事項要求となり、2026年度当初予算(21兆2701億円)から6469億円(3.0%)増えました。ただし、金額の大部分は地方交付税等の財源繰入れ(20兆9974億円)が占めています。政策的な予算配分に目を向けると、同省は「AI社会を支える情報通信基盤」や「AIの徹底利活用」を主要施策の第1の柱に掲げました。要求資料からは、AIを動かす通信・データセンター基盤、地域企業や自治体・消防といった導入現場、そして偽情報やサイバー攻撃に備える安全性確保という3つの分野へ重点的に投資を行おうとする姿が浮かび上がります。

本文
 総務省は2027年度(令和9年度)予算の概算要求として、一般会計で21兆9171億円+事項要求を計上しました。2026年度当初予算の21兆2701億円と比較すると、6469億円(3.0%)の増加となります。

 要求額の全体像を見ると、20兆9974億円が地方交付税等の財源繰入れであり、「一般歳出」は9196億円+事項要求となっています。一般歳出の増加額5273億円のうち、新設された「『強く豊かな日本』投資枠」が5033億円+事項要求を占めています。

 今回の概算要求で注目されるのは、金額の規模以上に政策の配分先です。総務省は主要施策の第1の柱として「AI社会を支える情報通信基盤の整備とAIの徹底利活用による成長力強化・経済安全保障の確保」を掲げました。具体的にどのような分野へ資金を振り向けようとしているのか、資料の体系から追います。

■第1の投資先:「AIを動かす土台」となる通信・インフラ整備

 1つ目の重点は、AIの運用やデータ処理を支える通信技術やデジタルインフラへの投資です。「あらゆる産業の成長を支える情報通信技術・インフラへの投資やAIの開発・利活用の促進」として、3495.4億円+事項要求を計上しました。

 具体的な要求項目には、以下のような基盤技術や設備整備が含まれます。

・次世代ワイヤレス(Beyond 5G/6G、衛星光通信等):1317.5億円

・情報通信領域におけるAI開発・利活用促進:664.8億円

・オール光ネットワーク(APN)の研究開発・実装:500.0億円の内数

・量子通信・ネットワークの研究開発・社会実装:288.0億円

・ワット・ビット連携を核とした分散データセンターや5G、光ファイバ等の全国整備:264.5億円

 さらに新規事業として、経済安全保障の観点から重要な海底ケーブルの自律的な敷設・保守能力や防護・監督体制の強化、多ルート化に25.0億円+事項要求を盛り込みました。単なるAIソフト開発にとどまらず、通信ネットワークやデータセンターなど、AI社会を支えるインフラ整備にも大きな枠組みを設けています。

■第2の投資先:「AIを使う現場」の拡大(地域企業・自治体・消防)

 2つ目の重点は、AIをはじめとするデジタル技術の実生活や地域現場への導入・実装です。

 新規事業として「地域AXの推進」に102.2億円を要求しました。既存の「ローカル10,000プロジェクト(地域経済循環創造事業交付金)」に「地域AX特別枠(仮称)」を設け、中堅・中核企業から地域企業まで、AI導入による業務変革や新事業立ち上げを支援します。あわせて、デジタル人材の確保やAI・新技術を活用した先進ソリューションの実証も推進します。

 行政や防災の現場への導入も盛り込まれました。自治体向けには、行政サービスの効率化を目指す「自治体AX/DXの推進」として新規に7.2億円を計上しました。AIとデジタル技術を組み合わせた業務プロセスの自動化に加え、AIエージェントの導入に向けた実証モデル事業の実施などを掲げています。

 さらに消防分野では、AIやロボット、ドローンを活用する「消防AX/DXの推進」に19.8億円+事項要求を計上しました。AIが通報等の分析や判断を支援するモデル事業などを展開する方針です。

■第3の投資先:「AI時代の安全」を守る偽情報・サイバー対策

 3つ目の重点は、AI普及に伴うリスクへの備えです。総務省は「信頼できる情報通信環境の整備」を別の柱として位置付けています。

 生成AIの発展によって巧妙化する偽・誤情報対策として、「インターネット上の偽・誤情報、違法・有害情報の流通・拡散に対する総合的な対策の推進」に68.2億円を要求しました。2026年度当初予算の9.5億円から大幅な増額要求となります。

 また、高度なAIが悪用されるサイバー攻撃の脅威に対応するため、実践的な人材を育成する事業に86.6億円、地方公共団体のサプライチェーン・リスク対策やセキュリティ強化に55.4億円を盛り込みました。AI開発・利活用予算(664.8億円)の中にも、AIの信頼性を評価する「能動的評価基盤」の研究開発・構築や評価用データの整備などが盛り込まれており、利活用とリスク対策を並行して進める姿勢がうかがえます。

■通信インフラの耐災害性強化と今後の焦点

 なお、通信・防災の面では、携帯電話基地局やケーブルテレビ等の耐災害性を強化する事業に171.5億円を要求しました。蓄電池や発電機の整備、官民連携による通信復旧体制の整備なども盛り込んでいます。

 今回の総務省の2027年度概算要求は、AI関連施策を単なる研究開発だけでなく、「土台となるインフラ」「地域・行政の現場」「偽情報・サイバー対策という安全面」へと重層的に配置している点が特徴です。提出された要求額は今後の財務省との予算編成過程や年末の閣議決定を経て変更される可能性がありますが、同省がどの分野を重点課題と捉えているかを示す指標となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)