雨の予測精度向上へ、上空の水蒸気を宇宙から観測 気象庁「いぶきGW」データを9月8日導入

2026年09月03日 12:41

気象庁

2025年9月7日の北海道南西部における降水予測の比較。(左)解析雨量、(中央)AMSR3を利用しない15時間先予測、(右)AMSR3を利用した15時間先予測。AMSR3を利用した予測では降水量の過小傾向が改善した(画像出典:気象庁)

今回のニュースのポイント

宇宙航空研究開発機構(JAXA)と気象庁は2026年9月2日、温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW(GOSAT-GW)」に搭載された高性能マイクロ波放射計3(AMSR3)の観測データについて、9月8日から気象庁の数値予報システムでの利用を開始すると発表しました。新たな周波数帯の追加により対流圏中・上層の水蒸気の情報を得られるようになり、事前検証では水蒸気の解析・予測精度や降水予測の改善が期待できることが確認されました。宇宙からの高度な観測データが、毎日の天気予報を支える実用段階に入ります。

本文
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と気象庁は2026年9月2日、温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」に搭載された最新センサ「AMSR3(高性能マイクロ波放射計3)」の観測データを、9月8日から気象庁の数値予報システムで利用開始すると発表しました。

 「いぶきGW」は2025年6月に打ち上げられた極軌道衛星です。搭載されているAMSR3は、地表面や大気中から自然に放射される微弱なマイクロ波を捉え、水蒸気量や海面水温、海氷、積雪などを全球規模で昼夜を問わず継続的に観測できる特徴を持っています。

 今回の実用化における技術的な最大の進歩は、AMSR2の後継センサであるAMSR3に、対流圏中・上層の水蒸気の情報が得られる観測周波数帯のチャネルが新たに追加された点です。これにより、水蒸気解析精度のさらなる向上が期待されています。天気予報の計算において大気中の水蒸気を正確に把握することは極めて重要であり、上空のデータが補強された形です。

 気象庁とJAXAが事前に実施した数値予報実験では、AMSR3のデータを投入することで大気中の水蒸気の解析・予測精度が向上し、降水予測精度の向上が期待できることが確認されました。

 具体的な検証例として、2025年9月7日に北海道南西部で観測された降水事例が挙げられています。15時間先を予測する実験において、従来のデータのみでは降水量に過小評価の傾向が見られたのに対し、AMSR3のデータを利用した予測では、その過小傾向が改善しました。

 なお、AMSR3データの気象庁での実運用は今回が初めてではありません。気象庁ではすでに、海面水温解析や海氷解析においてAMSR3データの利用を開始しています。これらの解析情報は海洋の監視だけでなく、水産業の振興や船舶の安全・効率的な航路選定のための基礎情報として幅広く活用されています。今回、予報の根幹となる「数値予報システム」へデータが統合されることで、利用領域がさらに拡大することになります。

 宇宙から得られた観測データが、研究開発や検証を経て、毎日の天気予報の基礎となる数値予報システムで利用される段階に入ります。今後も衛星データの有効利用に向けた技術開発が進められる見通しです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)