後払い決済の相談6万6544件、4年で3倍超 「規制対象外」に制度見直し求める

2026年09月10日 10:41

画・ネット通販変革期、半年に1回以上83.5%。

スマートフォンを利用したオンライン取引のイメージ。後払い決済に関連する消費生活相談は2025年度に6万6544件となり、2021年度の約3.3倍に増加した(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

消費者委員会の「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」がまとめた報告書案で、後払い決済に関連する消費生活相談が2025年度に6万6544件に達したことが明らかになりました。2021年度(2万302件)から4年間で約3.3倍へと急増しています。専門調査会は、後払い決済が現行の法規制の対象外とされている一方、「実態は与信としての性質を有している」と整理。取引実態やトラブルの特徴を検証し、割賦販売法における個別信用購入あっせんの考え方を参考に消費者保護のあり方を検討するよう求めています。

本文
 キャッシュレス決済の利便性が向上する一方、多様化する支払手段に対して、従来の法制度や消費者保護の枠組みで十分に対応できるのかという課題が浮かび上がっています。消費者委員会のもとに設置された「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」がまとめた報告書案によると、全国の消費生活センター等に寄せられた後払い決済に関連する消費生活相談件数は、2025年度に6万6544件に達しました。

 相談件数の推移をたどると、2021年度の2万302件から、2022年度に4万2871件、2023年度に4万4653件、2024年度に5万7776件、2025年度に6万6544件へと増加。4年間で4万6242件増加し、約3.3倍の規模に拡大しています(2025年度数値は2026年6月30日時点のPIO-NET登録分)。

 急増するトラブルの背景には、不適切な販売手法と決済の仕組みが複雑に絡み合っている実態があります。報告書に掲載された20代女性の相談事例では、動画共有SNSの広告で「継続回数の約束なし」と表示された美容液を注文した際、完了直後に提示された「限定クーポン」を利用したところ、実際には「4回縛り」の定期購入契約へ変更されていたケースが報告されています。女性が1回目と2回目の代金をコンビニ後払いで支払った後、肌に合わず解約を申し出たものの、「4回受け取るまで解約できない」と拒否され、その後、後払い決済業者から督促メールや訴訟を通知する連絡が届く事態となりました。

 こうしたトラブルにおいて構造的な問題となっているのが、決済に関与する事業者の「複層化」です。現在のEC・キャッシュレス取引では、消費者と販売事業者の間に、後払い決済事業者、クレジットカード会社、決済代行業者、アクワイアラー(加盟店契約会社)など多数の事業者が介在しています。商品が届かない、または契約内容と異なるといったトラブルが生じた際、消費者がどの事業者に申し出れば支払いが止まるのか、どこが苦情対応や悪質加盟店の排除に責任を持つべきなのかが極めて見えにくくなっています。

 今回の報告書案において焦点となったのが、後払い決済の制度上の位置づけです。本報告書が扱う後払い決済は、代金支払までの期間が2か月以内の後払いのうち、クレジットカードに付帯する2か月内払いとキャリア決済を除いたものを指します。専門調査会は、この後払い決済が現行の法令による直接的な規制対象外となっている一方、実態としては利用者に信用を供与する「与信としての性質を有している」と整理しました。その上で関係行政機関に対し、割賦販売法における「個別信用購入あっせん」の規制アプローチを参考に、取引実態やトラブルの特徴に応じた消費者保護のあり方を検討するよう提示しています。

 さらに、現在は必ずしも登録・届出の対象となっていない支払関連事業者についても、その機能や役割の重要性に応じて、行政による適切な監督の枠組み(登録制や届出制)に位置付ける検討を求めています。現段階は関係行政機関へ検討を求める提言の整理であり、直ちに法改正や登録制導入が確定したわけではありません。

 こうした制度検討の必要性を裏付ける材料として、同専門調査会の池本誠司委員は提出意見の中で、業界団体である日本後払い決済サービス協会が2021年度に設立され、2022年3月に自主ルールを策定した後も相談件数の拡大が続いている実態を指摘。業界団体の参加事業者が限定的であることなどを挙げ、事業者による自主的な取り組みのみに委ねるのではなく、関係行政機関による法制度的措置を含む実効性ある対応の検討を開始すべき段階にあるとの考えを示しています。

 政府が掲げるキャッシュレス決済比率は2025年に58.0%(国内指標)に達し、2030年までに65%、長期的には80%を目指す計画が進んでいます。決済インフラが国民生活に不可欠な社会基盤となるなか、専門調査会が示したのは、単に「後払い決済の利用を制限する」ことではなく、従来のような業態別の規制の隙間を埋め、多様化する決済環境下で消費者の安全性をどのように担保するかという根本的な課題です。報告書案の確定を受け、今後関係行政機関が後払い決済の制度設計や監督体制の具体化へどこまで踏み込むかが注目されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)