カナダ国旗のイメージ。カナダ政府は2026年度予算案で、6会計年度にわたる4,039億カナダドルの資本投資関連額を示し、設備投資減税や電力・重要鉱物分野への支援を通じた産業基盤の強化を掲げた(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
カナダ政府は2026年11月5日、2026年度予算案を発表し、6年間で4,039億カナダドルの資本投資関連措置を提示しました。企業の設備投資を促す即時償却税制により新規投資の実効税率を半減させるほか、2050年までに電力網の容量を倍増させる国家電力戦略や原子力、重要鉱物の供給網強化を明記。250億カナダドルの官民投資ファンド創設や許認可改革を組み合わせ、国内の生産能力と産業競争力を抜本的に引き上げる方針です。
本文
カナダ政府は2026年11月5日、2026年度連邦予算案「Budget 2026: Masters of Our Destiny」を発表しました。政府は2025~26年度から2030~31年度までの6会計年度で、発生主義に基づく連邦資本投資関連額を合計4,039億カナダドルと見込んでいます。現金主義に基づく対応額は6,764億カナダドルですが、集計定義が異なる別基準の数値です。これは通常の公共工事費や民間投資額の合計ではなく、税制優遇に伴う財政コスト等を含む政府の関連措置を集計したものです。今回の予算案は、企業の設備投資を促す税制措置をはじめ、電力インフラ、住宅、重要鉱物、原子力などへの支援を重層的に盛り込み、国内の生産性を高め資源・エネルギーや先端産業の供給能力を国家規模で強化する産業投資戦略を打ち出しています。
産業競争力の強化に向け、政府が政策の中心に据えたのが設備投資促進税制「Productivity Mega Deduction」の導入です。この措置は、企業が取得した対象資本資産の取得費用について、税務上で初年度に直ちに全額損金算入できる即時償却の範囲を拡大するものです。政府の説明によると、即時償却の対象となる資産の割合は従来の約15%から65%超へと広がります。対象資産には機械や製造設備、ソフトウエア、研究開発関連資産、光ファイバー、鉱業設備、鉄道設備などが幅広く含まれます。政府はこの措置により、新規投資に対する限界実効税率が13%から6.4%へと低下すると試算しています。2026~27年度からの5年間で約360億カナダドルの財政コストを見込み、民間の設備投資を促します。
産業基盤を支えるインフラとして、政府は既に発表した国家電力戦略を2026年度予算でも重点施策に位置付け、2050年までに電力網の容量を倍増させる目標を掲げています。産業の電化推進に加え、AI普及に伴うデータセンター需要の急増、州境をまたぐ送電網の制約に対応する狙いがあります。戦略では地域間送電網の接続強化、電力設備の近代化、発電能力の拡大、電力関連部材の国内供給網強化を重視し、施策規模は500億カナダドル超に達します。あわせて原子力戦略についても65億カナダドル規模の施策を掲げました。研究開発、安全規制対応、国内外の事業に対する戦略的金融支援を組み合わせ、脱炭素電源の確保と原子力産業の国際展開を同時に推し進める方針です。
重要鉱物と資源開発の分野では、採掘から国内での精錬・加工、製品製造に至る供給網の強化が示されました。銅、ニッケル、リチウム、レアアースなどの重要鉱物は、送配電設備や蓄電池、電気自動車(EV)、先端製造業、防衛産業を支える基盤となります。政府は資源地帯のアクセスインフラ整備、加工能力の拡充、事業化資金の供給を後押しするため、天然資源の潜在力を引き出す資本投資関連措置として28億カナダドルを計上しました。単なる未加工鉱物の輸出にとどまらず、国内の製造業や先端産業と結び付けることで、世界的な重要鉱物サプライチェーンにおける供給能力と経済安全保障の確立を目指しています。
大型開発を加速させる資金供給と制度改革の柱として、政府は、250億カナダドルの初期資金を予定する官民共同投資の枠組み「Canada Strong Fund」の創設を提案しています。同ファンドは民間投資家と同等の商業条件で共同投資を行い、原則として少数持分を保有することで民間資金の参加を促す役割を担います。また、連邦政府の大型事業担当機関は28件の国家的な事業や戦略を進めており、このうち18件は1,940億カナダドル超の新規投資に相当すると説明されています。さらに開発遅延を防ぐため、許認可プロセスを迅速化する「一事業・一判断・一年」の原則を掲げました。官民ファンドによるリスク分散と行政手続きの迅速化を連動させ、民間主導の大型投資を実効的に後押しします。
今回の予算案は、減税による投資負担の軽減、電力や資源インフラの整備、官民ファンドと許認可改革による事業化支援を連動させた包括的な産業政策と位置づけられます。企業が新工場やデータセンターを建設するには、安定的で低廉な電力、輸送網、部素材の確保、熟練人材の存在が前提となり、政府の政策はこれらの事業条件を整備しようとする試みです。もっとも、予算に示された支援規模がそのまま新工場や発電設備の建設実績になるわけではありません。実際の民間投資の規模は、今後の需要動向、資金調達環境、工事費、設備供給網の状況にも左右されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













