日本に拠点ない外国金融機関、大型融資への参加拡大を検討 金融庁が制度設計を議論

2026年09月16日 15:48

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東京都心のオフィス街。金融庁は、日本国内に営業拠点を持たない外国金融機関などが大企業向けシンジケートローンに参加する際の規制について、具体的な制度設計の検討を始めた(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

金融庁は9月16日、金融審議会の「成長企業への資金供給の在り方等に関するワーキング・グループ」の初会合を開き、日本国内に営業拠点を持たない外国金融機関が、日本企業向けの協調融資(シンジケートローン)に参加しやすくするための制度見直しについて具体的な議論を始めました。金融庁は大企業等への融資で国内法令上の権限を持つ金融機関がアレンジャーやエージェントを務め、外国金融機関は融資実行のみを行うケースを想定し、貸金業登録で求められる人的・財産的要件や登録更新制度などを柔軟化する「柔構造化」を検討論点として提示しました。背景には、過去最高となった2025年のM&A(37.9兆円)など大口資金需要の拡大があります。

本文
 金融庁は2026年9月16日、金融審議会のもとに設置された「成長企業への資金供給の在り方等に関するワーキング・グループ(WG)」の初会合を開催し、国内に営業拠点を持たない外国金融機関などが日本企業向けの協調融資(シンジケートローン)へ参加しやすくするための制度設計について検討を開始しました。7月の「成長投資を促進するための金融戦略」や9月15日公表の「金融行政方針」で参入促進方針が示されていたのに対し、本WGでは具体的にどのような要件のもとで参入規制を柔軟化できるかという制度設計の議論に入りました。

 現行の規制下において、日本国内に営業拠点を持たない外国金融機関が国内企業へ直接融資を行う場合、外国銀行支店として銀行法上の免許を取得するか、貸金業法に基づく貸金業登録を受ける必要があります。しかし、貸金業登録には国内における営業所の設置、貸付業務経験者の配置、貸金業務取扱主任者の設置といった人的要件に加え、最低純資産額5000万円以上という財産的要件、3年ごとの登録更新などが一律で課されており、こうした要件について、取引実態に応じた規制の柔軟化を求める意見が金融業界から出ていました。

 金融庁は今回、①貸出先が大企業等であり、②国内法令上の貸付け・媒介の権限を有する者がアレンジャー(主幹事)やエージェントを務め、③外国側の融資者は融資の実行のみを行う役割が契約上明確なシンジケートローンに参加するケースを想定。こうした取引においては、貸金業登録における人的・財産的要件や更新制度、債権譲受人に対する規制などをビジネスの実態に合わせて柔軟化する「柔構造化」を具体的な検討論点として提示しました。一方で無規制化を目指すものではなく、外国金融機関が外国の法令に準拠して設立されていることや、日本における監督当局との対話窓口となる代表者(弁護士法人等)を設置することなどを求める案も示されています。

 制度見直しを議論する背景には、日本企業による大型M&Aや設備投資に伴う資金需要の拡大が存在します。金融庁が提示した資料によると、2025年の日本企業が関与したM&Aの件数は前年比8.8%増の5115件、取引金額は前年比86.7%増の37.9兆円となり、ともに過去最高を更新しました。このうち、日本企業による外国企業の買収(IN-OUT)は657件と件数自体は1.2%減少したものの、取引金額は前年比87.6%増の18.2兆円へと急増しています。海外企業の大型買収においては多額の外貨資金を迅速に調達する必要が生じるケースがあるため、資金供給の主体を海外の金融機関へ広げる必要性が議論されています。

 また、非銀行部門による事業者向け資金供給の規模に関して、金融庁資料では日本の貸金業者による事業者向け貸付残高を2025年時点で約8兆円とする一方、米国のプライベートクレジット残高を約1.4兆ドル(1ドル=155円換算で約225兆円)と掲載し、日本側を米国の「約28分の1」と位置付けて紹介しています。ただし、日本の貸金業者による事業者向け貸付と米国のプライベートクレジットは対象となる金融商品や市場構造が完全には一致しない別の統計概念であり、金融庁が日米の事業者向け貸付市場の広がりを説明する比較データとして示したものです。

 16日のWGにおいて、全国銀行協会は、国内のシンジケートローン組成額が増加し主要な大口資金調達手段となっている現状を提示したうえで、特に海外M&A等で必要となる大口の外貨調達では邦銀のみで資金ニーズを充足しきれない懸念があるとして、シンジケートローンに参加できる外国金融機関の範囲拡大を制度改正要望として提出しました。一方、一般社団法人国際銀行協会は参入規制の柔軟化に賛同しつつも、すでに日本国内で銀行免許を取得し支店を設けて営業している外国銀行の立場からは、拠点を設けずに参入する外国銀行などが現れることが「競争上の課題となり得る」と指摘しました。

 政府が閣議決定した成長戦略等では、2040年度に国内投資250兆円を目指す目標が掲げられており、今回のWGでは、その資金供給体制に関わる具体的な制度設計の一つとして、外国金融機関のシンジケートローン参加をめぐる論点が検討対象となりました。金融庁が提示した内容はあくまで検討のための論点であり、現時点で貸金業法の適用除外や要件緩和が決定したわけではありません。今後のWGでは、対象となる借り手企業の属性や参入要件の詳細、実効性のある監督方法などをめぐり検討が進められます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)