カナダ政府は、生命科学・バイオ製造分野に総額6700万カナダドルを投資すると発表。抗菌薬供給や血液型変換、RNA製造、携帯型透析、細胞培養培地など、医療と安全保障の双方につながるデュアルユース能力の強化を支援する。(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
カナダ政府は9月18日、生命科学・バイオ製造分野の基盤強化に向けて総額6700万カナダドルの投資を発表しました。6700万カナダドルには、民生と安全保障・防衛の双方で利用できる「デュアルユース能力」を持つ5案件への拠出に加え、5つの研究ハブや医薬品供給監視、バイオバンク、ワクチン技術などへの支援が含まれます。抗菌薬の供給確保、血液型の変換技術、RNA製造基盤、ほぼ水を使わない携帯型透析システム、カスタム細胞培養培地の国内生産まで対象は多岐に渡り、カナダ政府は生命科学を医療政策にとどまらず、国内産業能力、外国の供給網への依存低減、安全保障、国防を一体で支える重要基盤として位置付けています。
本文
カナダ政府が、生命科学を医療だけでなく安全保障や防衛にもつながる「デュアルユース」の産業能力として強化します。カナダのメラニー・ジョリー産業相は9月18日、国内の生命科学・バイオ製造セクターの強化に向けて総額6700万カナダドルを投資すると発表しました。今回の拠出は「生命科学基金(Life Sciences Fund)」を通じて実施されます。注記すべきは、この6700万カナダドルという投資総額が5つの先端プロジェクトのみに向けられたものではない点です。全カナダに広がる5つの研究ハブに対する各155万カナダドルの資金配分(3年間)や、医薬品供給の監視、バイオバンク機能、ワクチン技術開発への助成など、生命科学エコシステム全体を網羅する投資枠組みとなっており、その主要事業としてデュアルユース能力を持つ5案件への支援が組み込まれています。
5案件の中で支援額が最大となるのが、アルバータ州の「アプライド・ファーマシューティカル・イノベーション(Applied Pharmaceutical Innovation)」が進める取り組みです。総事業費2350万カナダドルの事業に対し、最大2190万カナダドルが拠出されます。広域抗菌薬などの供給確保を目的としており、優先病原体や薬剤耐性(AMR)の脅威への対応だけでなく、戦闘に関連した感染症の治療への利用も明記されています。
先進的な技術開発分野では、ブリティッシュコロンビア州の「アビボ・バイオメディカル(Avivo Biomedical)」に対し、総額3390万カナダドルの開発事業へ最大1090万カナダドルが手当てされます。同社が取り組むのは、異なる血液型をO型(Oマイナスを含む)へ変換する技術の開発です。政府は、輸血や臓器移植の選択肢を広げる技術として説明しており、今回の支援はその開発を前進させるものです。
製造基盤の国内化や供給網強化の面では、アルバータ州の「ノーザンRNA(Northern RNA)」による950万カナダドルの事業に最大600万カナダドルが支援されます。同社はワクチンや治療薬、診断に用いられるオリゴヌクレオチドや自己増幅RNAについて、適正製造基準(GMP)に即した国内生産体制を構築します。また、ブリティッシュコロンビア州の「ステムセル・テクノロジーズ(STEMCELL Technologies)」が進める290万カナダドルの事業には最大280万カナダドルが投じられ、カスタム細胞培養培地の国内製造能力を高めることで、外国の供給網への依存低減を図ります。
さらに技術面で関心を集めるのが、オンタリオ州の「キドニ・ラボ(Qidni Labs)」が進めるプロジェクトです。総額2500万カナダドルの事業に対して最大1250万カナダドルが支援されます。同社が開発するのは、携帯可能で、ほぼ水を使用しない血液透析システムです。今回の支援は即座に製品を市場投入するものではなく、最終設計の完成やオンタリオ州内でのパイロット規模の製造ライン構築、臨床研究を目的としており、実際の戦場環境でのデータ収集も計画に含まれています。
生命科学基金は「Health Emergency Readiness Canada」を通じて実施されています。また、今回のプロジェクトには「Canada’s Defence Industrial Strategy」を通じた資金も含まれています。カナダ政府は生命科学分野の科学・技術・産業能力を強化することが、国民の健康維持だけでなく、国家安全保障や経済的繁栄に直結するとの認識を示しており、国内製造能力の獲得や供給網の強化、緊急時対応、そして国防・安全保障に至るまで、一体的な支援を進める構えです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













