技能人材8万~10万人の採用・訓練へ80億カナダドル 有給実習から資格取得まで支援

2026年09月20日 15:13

建築現場イメージ

カナダ政府は、2030~31年までに「Red Seal」対象の技能職で8万~10万人を新たに採用・訓練・雇用することを目指す。有給職業体験や見習い採用、技術訓練、資格取得まで複数の段階で支援策を設けている。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

カナダ政府は9月18日、建設などの技能職で人材を確保する政策「Team Canada Strong」の実施状況を公表しました。2030〜31年までに「Red Seal」対象の技能職で8万〜10万人の新たな採用・訓練・雇用を目指し、関連施策全体に計80億カナダドル規模の連邦資金を投入します。最大の特徴は、単に訓練施設へ資金を出すだけではなく、若者による有給での職場体験、中小企業による見習い採用、技術訓練中の所得補償、資格取得時の手当という人材育成の各段階へ政策資金を配分する点にあります。

本文
 インフラ整備や住宅建設を支える現場の人手確保が主要国で大きな課題となる中、カナダ政府が技能人材の獲得と育成に向けた包括的な支援スキームを推進しています。パティ・ハイドゥ雇用・家族大臣は9月18日、技能職人材の確保を目指す「Team Canada Strong」の進捗状況を公表しました。カナダ政府は関連施策全体に計80億カナダドル規模を投入し、2030〜31年までに「Red Seal」対象の技能職において8万〜10万人の新たな採用・訓練・雇用を達成する目標を掲げています。今回の取り組みで注目されるのは、単に学校の定員を増やすような従来の職業訓練にとどまらず、職業体験から見習い採用、技術訓練、資格取得まで、技能人材育成の複数の段階に具体的な財政支援を設けている点です。

 まず、職業の入り口となる「仕事を体験する」段階から有給の仕組みが導入されます。政府は15歳から30歳までを対象に、建設・技能職関連の分野で12〜16週間(最低420時間)の有給職業体験(プレイスメント)枠を創設します。支給される賃金は原則として時給20カナダドル、または各州・準州の適用最低賃金のいずれか高い方以上に設定され、2027年初めの開始を予定しています。政府はこの若者向け有給職業体験プログラムに対して、5年間で8億8000万カナダドルを投じる計画です。実際の職場で賃金を受け取りながら経験を積める環境を整えることで、若い世代が技能職へ参入するハードルを下げています。

 政策の支援対象は、働く側だけではありません。見習いを雇い入れる企業側に対してもインセンティブが用意されています。「Build Canada Apprenticeship Service」を通じて、中小企業が対象となるRed Seal技能職の1年目の見習いを雇用する場合、事業者に対して1人あたり最大1万カナダドルを支給します。働く側に有給の実習機会を設ける一方、雇う側にも見習いの採用・訓練を支援する仕組みです。

 さらに、見習いが資格取得に必要な技術訓練を受ける期間にも所得面の支援を行います。2027年春から開始予定の「Apprenticeship Training Grant」では、対象となる見習いが規定の必須技術訓練を受ける際、通常の雇用保険(EI)給付に加えて週400カナダドルの給付金を上乗せ支給します。2027年1月3日以降に始まる対象の技術訓練が適用範囲となり、スキルアップの課程で生じる生活面や所得面の不安を軽減する仕組みを整えています。

 人材育成プロセスのゴールとなる「資格取得」の段階にもインセンティブが設定されました。対象となるRed Seal技能職の見習い課程を修了し、正式に資格を取得した人に対しては、5000カナダドルの修了ボーナス(completion bonus)が支給されます。この給付は過去に遡って適用され、2025年4月1日以降に資格を取得した人も対象とされています。このように、有給職業体験から企業の採用支援、訓練中の所得支援、資格取得時のボーナスまで、複数の段階に支援策が設けられています。

 カナダ政府がこうした多段階の支援策へ巨額の資金を投じる背景には、中長期的な技能人材の需要拡大があります。政府の試算によると、2024年から2033年までの10年間で、技能職における求人件数はカナダ全土で140万件を超えると見込まれています。住宅供給の拡大や交通網、エネルギーインフラの維持・新設を進めるうえで、現場を担う技能人材の確保が課題となっています。また政府は、各州・準州と連携した事前訓練や技術訓練の拡充に対し、別途20億カナダドルの連邦資金を充てる方針も示しています。

 デジタル技術やAIへの投資が世界的な注目を集める一方で、住宅やインフラの建設・維持を直接担う現場の技能人材の価値も再認識されています。カナダが打ち出した施策は、呼びかけや広報だけに頼るのではなく、キャリアの各段階において具体的な金銭的支援を組み込んだ制度設計となっています。2030〜31年までに8万〜10万人という目標に対し、この段階的な支援モデルがどこまで実効性を持つかが注視されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)