米メリーランド州は、25MW以上の大型データセンター案件を対象とする統一審査制度を導入。電力網や地域社会、環境、経済効果など5項目で評価するほか、予測される電力需要や水使用量などをダッシュボードで公開する。(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
米メリーランド州のウェス・ムーア知事は9月23日、25メガワット(MW)以上の大型データセンター開発に対し、州政府が統一した基準で合致度を評価する行政命令に署名しました。許認可や公的支援など州政府の関与を求める案件を対象に、知事室直属のタスクフォースが電力網の保護や経済効果など5軸で審査・公表するほか、予測電力・水需要などを毎月開示するダッシュボードを設けます。さらにムーア知事は、2020年に導入された売上・使用税の免除制度を廃止するため次期州議会と協力する方針を示しました。9月21日にデータセンターの許可停止と優遇見直しを指示したテキサス州に続き、大型インフラの受容条件やインセンティブの妥当性を再検証する動きが表面化しています。
本文
米メリーランド州のウェス・ムーア知事は9月23日、大規模なデータセンターの建設・運用に対し、州政府としての評価基準を定めて統一審査を導入する行政命令に署名しました。対象となるのは、25メガワット(MW)以上のデータセンター案件です。事業者が州政府に対し各種許可や財政的インセンティブ、支持書簡などの措置を求めた場合、知事室に設けるタスクフォース(Maryland Data Center Task Force)が一つの基準、一つの審査プロセスで評価を行い、案件ごとに「整合(Aligned)」「条件付き整合(Conditionally Aligned)」「非整合(Not Aligned)」の3段階で判定して書面公表します。
評価項目は「電気料金負担者と電力網の保護」「州民への経済的利益」「地域社会の意向」「環境保護」「透明性と説明責任」の5軸です。さらに州政府は、毎月更新する「データセンター・ダッシュボード」を新設し、事業者の所在地や親会社、主要テナントの名称に加え、予測される電力需要や水使用量、州への申請内容と進捗、知事室タスクフォースによる判定根拠、事業者が約束したコミットメントなどを全面的に可視化します。
政策のもう一つの大きな焦点が、データセンター向け税制優遇の見直しです。同州は2020年、一定の投資・雇用条件を満たす適格事業者に対し、サーバー等の設備購入にかかる売上・使用税を免除する制度(2020年州法第640章)を導入していました。しかしムーア知事は今回、この税免除制度(Data Center Sales and Use Tax Exemption)を廃止するため次期州議会と協力する方針を打ち出しました。本制度の廃止には州議会での法改正が必要となります。同州では今年2月の州議会でも税優遇廃止法案(HB560)が審議された際、州商務省が既存・将来のデータセンター投資への不利益を考慮して懸念表明(Letter of Concern)を提出するなど、税優遇の廃止と既存・将来のデータセンター投資への影響を巡る議論が行われてきました。
データセンター開発に伴うインフラ負担を巡っては、テキサス州でも対応が進んでいます。テキサス州のグレッグ・アボット知事は9月21日、環境品質委員会(TCEQ)に対し、データセンターに関するERCOT(テキサス電力信頼度評議会)の監査が完了するまで許可発行を一時停止するよう指示しました。同州は水使用量の報告や地域社会が必要とする水資源の保護も事業者に求めており、次期州議会での財政的インセンティブ廃止を目指しています。
テキサス州が監査完了までの許可手続きモラトリアムを実施するのに対し、メリーランド州は25MW以上の大型案件を統一審査し情報を可視化するなど、制度上のアプローチは異なります。しかし両州に共通しているのは、大型データセンターについて電力網や水資源への影響、地域社会への負担、経済効果を改めて検証対象とし、両知事が既存の財政・税制インセンティブ廃止に取り組む姿勢を示した点です。2州の事例のみから全米的な政策転換と断定することはできないものの、大規模インフラの受け入れにあたり、州政府が地域側の負担と経済効果を精査・可視化する取り組みが相次いで表面化しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













