AIデータセンター、水は足りるのか 米地下水団体が取水量開示や事前評価を提言

2026年09月26日 10:44

冷却イメージ

データセンターと地下水利用の関係を示したイメージ。全米地下水協会(NGWA)は、冷却に地下水を利用するデータセンターについて、水源や取水・排水量を明らかにし、計画段階から地域の水資源への影響を評価するよう提言している。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

全米地下水協会(NGWA)は9月24日、データセンター建設と地下水資源に関する地域社会向けの解説資料(FAQ)について発表しました。NGWAは、AIやクラウドコンピューティングの拡大に伴いデータセンターの電力・冷却需要が高まるなか、冷却に水を利用する施設において地下水を含む水資源への影響を科学的に評価する必要性を訴えています。事業者に「水源」「取水・排水量」「消費的利用の区別」「冷却方式と水・電力の関係」の4項目の情報開示を求めるとともに、計画段階での水文地質評価(hydrogeologic assessment)の導入や、水使用を減らす地熱技術の活用を提言しています。

■AIデータセンター、冷却用水も重要な検討項目に

 人工知能(AI)やクラウドコンピューティングの拡大に伴い、世界各地で大型データセンターの建設が進んでいます。こうした施設は膨大な電力を消費するだけでなく、多くの施設が発生した熱を処理するために冷却用水に依存しており、立地によっては地下水を大量に利用するケースが存在します。

 地下水関連の専門家や事業者らで構成される「全米地下水協会(NGWA)」は、電力と地下水はいずれも有限な資源であると指摘しています。その上で、データセンター開発にあたってはインフラ需要の充足だけでなく、地下水の消費的利用を抑制し環境への影響を最小限に抑える技術と科学的アプローチが必要であるとのポジションペーパーを示しています。

 ただし、NGWAはすべてのデータセンターが一概に「大量の地下水を消費する」と一括りにしているわけではありません。水使用の影響は、施設が採用する冷却方式、給水元の種類(地下水、表流水、再生水)、地域の水文地質条件によって大きく異なります。そのため、個別の立地ごとに利用可能な資源量と環境の受容能力を精査する「サイトごとの評価(site-specific evaluation)」が不可欠であると強調しています。

■まず確認すべきは「どこから、どれだけ水を使うのか」

 NGWAは、データセンター開発に対する地域社会の信頼確保と持続可能な運用の前提として、事業者に透明性(transparency)を求めています。具体的には、計画・許認可の段階から運用開始後(ongoing operation)にかけて、最低限以下の4項目を明確に公開・開示することを提言しています。

1. 使用する水源の種類(地下水、河川などの表流水、再生水)

2. 年間および需要ピーク時における取水量と排水量

3. 消費的利用(蒸発などで失われる水)と非消費的利用(循環・返還される水)の区別

4. 採用する冷却システム、電力需要、および水使用量の相互関係

 従来、データセンターの規模は「何メガワット(MW)の電力容量を持つか」という指標で語られることが主流でした。しかし、冷却に水を使用する施設の場合、取水した水がどの程度実質的に消費され、どのタイミングでピークを迎えるのかを把握しなければ、地域インフラや環境への影響を正確に推計することはできません。

■「年間使用量」だけでは判断できない

 水資源への影響を正しく評価するには、年間総取水量という単一の数字を見るだけでは不十分です。NGWAは、地下水を利用するデータセンターの計画に際し、単に取水量の多低を議論するのではなく、事前に専門的な「水文地質評価(hydrogeologic assessment)」を組み込むことを推奨しています。

 具体的には以下の要素を統合的に調査・評価することが求められます。

・予定される水利用の具体的な目的と形態

・提案されている水源の持続可能性と回復力

・排水先となる水域または帯水層(地下水層)の水質、ならびに排水の量と速度

・近隣の既存水利用者や地域資源への潜在的影響と、それらを監視する手順

「年間○トンだから多い・少ない」という一律の判断ではなく、その地域において、その水源から、その量の水を持続的に利用できるのかを科学的に検証することが主眼となります。

■データセンターが集中すれば「累積影響」も

 さらにNGWAが注意を促しているのが、特定地域に複数のデータセンターが集積することによる影響です。

 NGWAは、データセンターの数と規模が拡大し、特定地域への集積が進むにつれて、地下水への累積的な影響(cumulative effects)が大きくなる可能性を指摘しています。さらに、干ばつの発生や気候変動に伴う降水パターンの変化が、環境側の受容能力自体を低下させる可能性も考慮に入れる必要があります。個別施設の審査にとどまらず、地域全体での地下水利用の重なり合いを考慮した長期的なリスク管理が求められます。

■地方政府の許認可上の課題

 制度面における課題として、NGWAは限られた水資源に対する新たなデータセンターの影響を管理する規則が十分に整備されていない(few regulations exist)と指摘しています。

 データセンターの開発計画は一般に、市や郡など地方政府の土地利用計画当局の管轄となります。しかし、こうした地域の行政機関は、大規模なデータセンターがもたらす専門的な水資源需要や環境負荷を管理する準備が必ずしも整っていない可能性があります。そのため、単なる一般的な都市計画の手続で終わらせず、科学的な水文地質調査を許認可プロセスに明確に位置付けるよう提言しています。

■水使用を減らす技術の評価・活用

 水需要の抑制に向け、NGWAは利用可能な最良技術(best available technologies)を導入し、地下水の消費的利用を最小限に抑える、あるいは排除するアプローチを支持しています。

 その技術的な選択肢の一つとして挙げられているのが、地熱を利用した熱交換システム(geothermal heat exchange systems)です。従来の密閉型地熱システム、揚水・注入方式、水没型密閉熱交換器などの技術は、適切な現地調査と設計を行えば、空調や冷却の需要に対応できる拡張可能なソリューションになると分析しています。既存の商業用地熱税額控除などを活用することで、水使用量と電力消費量の双方を削減する選択肢になり得ると説明しています。

■データセンターを見る「MW以外の物差し」に

 世界各地で巨大なAIデータセンターの建設計画が発表されるなか、これまでは「投資額」「IT容量(MW)」「GPUの設置台数」「電力確保の目処」といった側面が主たる関心事となってきました。しかし、冷却に水を利用する施設においては、水資源という物理的制約への対応も立地や運用を左右する要素となります。

 NGWAの提言は、データセンター開発の停止を求めるものではなく、科学的知見に基づいた計画と透明性の確保を促すものです。今後、各地のデータセンター計画を評価する際には、「何メガワットの電力を得たか」という視点に加え、「どこから、いつ、どれだけの水を使い、地域にどのような影響を与えるのか」という水インフラの観点も、事業の持続可能性を推し量る重要な物差しとなります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)