EU、産業熱の脱炭素化に10億ユーロ CO2削減量に応じ最長5年支援、SMRも対象

2026年09月28日 09:08

ユーロ・産業熱オークションイメージ

EUは産業熱の脱炭素化を対象に、10億ユーロ規模の競争入札を実施する。採択プロジェクトには、直接CO2排出の削減量に連動・比例する固定プレミアムを最長5年間支給。ヒートポンプなどの電化、再生可能熱、SMRを含む原子力技術などが対象となる。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

欧州委員会は9月24日、イノベーション基金(Innovation Fund)を通じて実施する産業熱の脱炭素化に向けた新たな競争入札「IF26 Industrial Heat Auction」の最終条件を公表しました。予算規模は10億ユーロで、EU排出量取引制度(EU ETS)の収入を財源として欧州経済領域(EEA)内の製造プロセスで使用される熱源の脱炭素化を後押しします。入札開始は2026年12月上旬を予定しています。採択プロジェクトに対しては、直接CO2排出の削減量に連動・比例する固定プレミアムを最長5年間支給する仕組みを採用しています。

本文
 欧州委員会は9月24日、域内産業の脱炭素化を推進する新たな枠組みとして、10億ユーロの予算を配分する競争入札「IF26 Industrial Heat Auction」の最終入札条件を公表しました。本オークションは、欧州経済領域(EEA)全域の製造業などで使用される「産業熱」の直接CO2排出削減を対象とするものです。欧州委員会によると、産業部門における直接排出の約4分の3が産業熱に起因しており、現在もその多くが化石燃料に依存しています。今回の制度は、工場やプラントの加熱処理や蒸気生成に使われる熱源について、化石燃料を使う熱源から、電化、再生可能熱、原子力などの低炭素な選択肢への転換を促すことを狙いとしています。なお、今回の発表は入札募集に向けた条件の確定であり、事業者の選定や10億ユーロの交付が決定したわけではありません。入札の正式な開始は2026年12月上旬を予定しています。

 本オークションの最大の特徴は、直接CO2排出の削減量に連動して資金を配分する支給構造にあります。採択されたプロジェクトに対しては、削減される直接CO2排出量1トンあたりに連動・比例する固定プレミアムが、最長5年間にわたり支給されます。企業側は必要な支援水準を入札価格として提示し、競争入札を通じて予算を配分する仕組みとなっています。

 対象となる支援技術の範囲は多岐にわたります。電化技術としては、産業用ヒートポンプ、電気ボイラー、プラズマトーチ、蓄熱設備などが含まれます。また、太陽熱や地熱といった再生可能熱に加え、今回のオークションでは原子力由来の熱源も支援対象に含まれることが明記されました。欧州委員会は例として、SMR(小型モジュール炉)を含む原子力技術を挙げています。ただし、10億ユーロはオークション全体の予算枠であり、原子力分野専用の枠組みではありません。

 さらに今回の最終条件決定にあたっては、より多くの産業プロセスを取り込むための見直しが行われました。第1回の「IF25」では100度超だった対象温度を、今回のIF26では80度超へ引き下げ、対象となる産業熱プロジェクトの範囲を拡大しました。また、電力系統への負荷を軽減するため、ピーク時間帯の電力消費を避ける柔軟性対策や、電力を必要としない技術にもインセンティブを設けています。

 今回のIF25およびIF26の両オークションは、EUが構想する「Industrial Decarbonisation Bank(産業脱炭素銀行)」のパイロットとして位置づけられています。欧州委員会は将来的に同銀行を通じて1000億ユーロ規模の資金を産業の脱炭素化へ提供することを目指しています。なお、イノベーション基金全体ではこれまでにEEA内の約200のプロジェクトに対し、累計で約120億ユーロが配分されてきました。

 今回のIF26 Industrial Heat Auctionは、産業熱の直接的なCO2排出削減量に支援額を連動させ、電化、再生可能熱、原子力を競争入札の対象とすることで、産業設備の脱炭素投資を促す仕組みとなります。12月上旬から始まる本オークションは、幅広い技術選択肢を示しながら、直接CO2排出の削減量に連動して公的資金を支給する仕組みを採用しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)