英国、特殊鋼メーカーSSUKを公的取得へ 電炉能力年120万トン、1300人超の雇用支える

2026年09月28日 09:46

英国・特殊鉄鋼メーカーイメージ

英国政府は、特殊鋼メーカーSpeciality Steel UK(SSUK)の公的取得に向けた提案を策定する。SSUKは4拠点で1300人超の雇用を支え、ロザラムには年間120万トンの電炉粗鋼生産能力を持つ。航空宇宙や防衛などに使われる特殊鋼の生産能力をどう維持・活用するかが焦点となる。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

英国政府は9月14日、経営破綻した特殊鋼大手Speciality Steel UK(SSUK)について、公的取得に向けた具体的な提案の策定作業を進めると発表しました。SSUKはロザラム、ストックスブリッジ、ブリンズワース、ウェンズベリーの4拠点で1300人超の雇用を支えており、ロザラム工場には年間120万トンの電炉による粗鋼生産能力があります。政府は当初、民間による解決を優先し2026年に有力な買い手候補を選定したものの、詳細なデューデリジェンスを経て長期的な安定性や納税者にとっての価値を確保できないと判断し、政府主導の公的取得へ方針を転換しました。

本文
 英国政府は、財務問題から経営破綻した国内特殊鋼メーカーのSpeciality Steel UK(SSUK)について、事業の安定と基幹能力の維持を目的として、政府主導による公的取得に向けた提案の策定作業を進めると発表しました。SSUKは英国内の4拠点(ロザラム、ストックスブリッジ、ブリンズワース、ウェンズベリー)で1300人を超える雇用を支えています。同社の主要拠点であるロザラム工場には2基の電気炉(EAF)が設置されており、年間120万トンの粗鋼生産能力を有しています。ただし、政府委託の需要評価資料によると、ロザラム工場での電炉による粗鋼生産は2024年7月から停止状態にあります。今回の発表は年産120万トンの稼働実績を示すものではなく、同工場が持つ潜在的な生産能力と設備基盤を対象とした取り組みとなります。

 SSUKは航空宇宙、防衛、エネルギーなどの分野で使用される高付加価値な特殊鋼を手掛ける能力を有しています。主要拠点の一つであるストックスブリッジ工場には加工・精錬設備が整っており、政府発表によると、同社はこれまで航空機の着陸装置、ヘリコプターのローター、ミサイル、弾薬、砲弾ケースなどに使われる高品質な特殊鋼製品を生産してきた実績を持ちます。政府は、SSUKが自動車、航空宇宙、防衛など産業戦略上の分野で使われる特殊鋼を製造する能力を持ち、英国の鉄鋼産業で独自の位置を占めると説明しています。

 今回の公的取得への切り替えは、民間売却プロセスの見直しによって導かれました。SSUKは長年の財務悪化を経て2025年8月に清算手続きへ移行し、政府は公的清算人(Official Receiver)を通じて事業の引き継ぎ先となる民間買い手の募集を進め、2026年に有力な買い手候補を選定していました。しかし、詳細なデューデリジェンス(精査)および協議を重ねた結果、提示された案では長期的な安定性や事業の確実性、そして公的資金を投じる納税者に対する価値(Value for Money)を十分に確保できないと判断されました。

 英国の鉄鋼政策を巡っては、政府は2026年7月16日に大手鉄鋼メーカーのBritish Steelについて法律に基づく正式な公有化手続きを完了させています。SSUKに関する今回の発表は、すでに公有化が完了したBritish Steelとは異なり、これから公的取得に向けた具体的な提案を整理していく段階となります。また英国政府は2026年7月1日以降、国内生産が可能な主要鉄鋼製品に対する無関税輸入枠の総量を51%削減し、枠外輸入に50%の関税を適用する新たな鉄鋼貿易措置を導入するなど、公有化や公的取得、貿易措置といった複数の政策手段を組み合わせながら国内生産能力の維持を図っています。

 英国政府は今後数カ月間、公的清算人や地方自治体、地域社会などの関係者と協働しながら公的取得に向けた作業を進め、会社の将来に関するすべての選択肢を評価する方針です。なお、今回の公的取得案は政府による永久保有を決定したものではなく、政府は特殊鋼生産、先進製造業、地域再開発、将来の民間投資などを含め、各拠点の将来について幅広い選択肢を検討するとしています。買収価格や追加投資額は公表されておらず、今後の決定や支出はデューデリジェンスを条件に既存の政府予算枠から賄うとしています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)