日本の所得格差「拡大より全体停滞」 キャピタルゲイン含めると上位集中

2026年09月29日 16:22

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横断歩道を行き交う人々。財務総合政策研究所の研究会は、日本の所得格差が近年大きく拡大していない一方、所得水準は全体として停滞し、キャピタルゲインを含む所得や資産保有では異なる分布がみられると分析した(画像は資料写真)

今回のニュースのポイント

財務省の財務総合政策研究所(財務総研)は、広報誌「ファイナンス」2026年9月号で「日本の所得分配・再分配に関する研究会」の報告書内容を公表した。税務データや統計データ、家計調査などを活用した分析によると、勤労世帯の所得格差を示すジニ係数は2000年代以降おおむね横ばいで、急激な格差拡大は確認されていない。一方で平均給与や実質賃金は長期的に伸び悩んでおり、研究会は「格差が大きく拡大しなかったものの、全体として停滞していた」と整理した。ただし、株式や不動産の売却益(キャピタルゲイン)や保有資産まで含めると、上位層への所得集中や資産保有の偏りがみられる。

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 財務省の財務総合政策研究所(財務総研)がまとめた「日本の所得分配・再分配に関する研究会」の報告書によると、日本の所得格差は米国などで見られるような急激な拡大傾向を示していない一方、所得水準全体が長期にわたって伸び悩んでいる実態が浮き彫りになりました。また、株式や不動産などの売却益(キャピタルゲイン)まで含めると上位層への所得集中が一定程度進んでおり、資産面でも保有状況に偏りがみられることが示されています。なお、本報告書は有識者による研究会の検討結果であり、財務省の公式な政策方針を示すものではありません。

■ 所得格差は2000年代以降横ばい、米国の集中とは対照的

 家計調査などに基づく勤労世帯の等価世帯所得のジニ係数を見ると、長期的には上昇傾向にあったものの、2000年代以降はおおむね横ばいで推移しており、近年における大幅な所得格差の拡大は確認されていません。可処分所得を5分位に分けた分析でも、特定階層のみの所得や消費が突出して伸びる傾向は観察されませんでした。

 また、利用可能なデータが2014年と2019年に限られるとの制約を示した上で推計した所得上位1%および0.1%の所得シェアは、他の主要先進国と比較して相対的に低い水準にあり、韓国や中国などのアジア諸国を下回っています。日本では米国で見られるような急激な格差拡大や極端な富裕層への所得集中は、確認可能なデータからは観察されていないと整理されました。

■ 格差拡大より「所得全体の停滞」

 研究会では、所得格差が急速に広がっていない一方で、給与所得の平均値や中央値、さらには実質平均賃金が十分な伸びを示していない点を重視しています。民間給与実態統計調査に基づく分析では、2024年の実質平均賃金は2010年比で約1.3%増にとどまっています。

 この分析を踏まえ、研究会は日本の所得分配の状況について「格差が拡大したというよりも、格差は大きく拡大しなかったものの、全体として停滞していた」と結論付けています。

■ キャピタルゲイン含めると上位層の所得シェア拡大

 一方、通常の給与や事業所得に含まれない株式・土地などの実現キャピタルゲインを加えた分析を行うと、状況は異なります。キャピタルゲインを含めた上位1%および0.1%の所得シェアを見ると、近年は上位層のシェアが拡大傾向にあります。株式や不動産の譲渡益が一部の高所得者層に偏って発生しているためです。

 さらに資産面においても、純金融資産1億円以上の富裕層や5000万円以上の準富裕層に該当する世帯数が増加する一方で、金融資産を保有しない(金融資産残高ゼロ)世帯も増加傾向にあります。通常所得の集計だけでは捉えきれない資産保有の偏りがみられます。

■ 法人企業の付加価値分配に変化、配当比率は上昇

 企業利益の還元構造においても変化が示されています。金融・保険業を除く法人企業統計の分析によると、企業の付加価値に対する分配割合は、1980年から2024年にかけて人件費が68.8%から64.2%へ低下した一方、経常利益は14.8%から32.1%へ、配当は1.8%から11.2%へ上昇しました。国内上場企業における個人株式保有割合が低下していることから、企業利益が拡大しても、その成果が家計全体や個人所得へ一様に還元されるとは限らないと指摘しています。

 制度面では、2024年までの所得分布を用いた分析において、有配偶女性の給与収入が「130万円の壁」よりも「103万円の壁」付近で強い就業調整を行っている実態が示され、制度の複雑さや理解不足の可能性が言及されました。

 日本の分配構造は、単一の格差指標だけでは全体像を把握できません。通常の所得では急速な格差拡大が見られないものの所得水準全体が停滞し、譲渡益を含めると上位層への所得集中が進み、資産保有でも偏りが確認されるという多角的な実態を踏まえたデータ把握が求められています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)