介護事業者、約4割が赤字 27年度報酬改定で物価・賃金上昇を反映へ

2026年09月30日 14:32

画・2020年「介護事業者」の倒産、過去最多。地域介護サービス守るための開業が急増。支援が急務。

介護サービスのイメージ。厚生労働省は2027年度介護報酬改定に向け、物価・賃金上昇への対応や介護人材の確保、地域のサービス提供体制の維持などを基本的な視点として示した(画像は資料写真)

今回のニュースのポイント

厚生労働省は30日の社会保障審議会介護給付費分科会に、2027年度介護報酬改定に向けた「基本的な視点(案)」を示しました。2025年度介護事業経営概況調査で全サービスの赤字事業者の割合が約4割に上るなど厳しい経営環境が続く中、物価や賃金の上昇を介護報酬へ適切に反映し、事業者の経営安定と介護職員の処遇改善を進める方針を盛り込みました。一方で現役世代の保険料負担増への懸念を踏まえ、評価の適正化・重点化や体系の簡素化も同時に進める考えです。

本文
 厚生労働省は30日、2027年度の介護報酬改定に向けた「基本的な視点(案)」を社会保障審議会介護給付費分科会に提示しました。物価や賃金の上昇を介護報酬へ適切に反映させることで介護サービス事業者の経営の安定を図り、介護職員について他職種と遜色のない処遇改善と人材確保を進める方向性が検討案として示されました。

 背景にあるのは、介護現場が直面する深刻な経営環境です。厚労省が示す2025年度介護事業経営概況調査によると、全サービスにおける赤字事業者の割合は約4割に達しています。介護サービスは公定価格であるため、物価や賃金の上昇によるコスト増を事業者が自らの判断でサービス価格に転嫁することが難しい構造的課題を抱えています。他産業で賃上げが進む中、人材確保と離職防止に向けた更なる対応が不可欠として、物価・賃金上昇への対応が改定に向けた第1の視点に据えられました。

 今回の改定が対象とする2027年度からの第10期介護保険事業計画期間は、65歳以上人口がピークを迎える一方、医療と介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口が増加する2040年を見据えた取り組みを本格化する重要な時期にあたります。ただし、今後の介護需要は全国一様ではなく、需要が増加する地域がある一方で人口減少により減少局面に入る地域が生じるなど、地域差が一段と拡大する見通しです。

 こうした人口構造の変化に対応するため、2026年6月に成立した改正法で創設された「特定地域サービス」などの仕組みを活用します。2027年度改定では、中山間・人口減少地域で同制度が確実に機能するよう、サービス提供のあり方や人員配置基準、報酬の検討を進めるとともに、中山間地域の加算のあり方を見直して地域に必要な介護基盤の維持を目指します。

 また、生産年齢人口が減少する中でサービス供給体制を維持するため、テクノロジー活用による生産性向上も重点項目に掲げられました。従来から推進されてきた施設系サービスにとどまらず、居宅系サービスを含めたAI等の介護テクノロジーの活用や、介護助手等へのタスクシフト/シェアを進めます。業務の効率化によって生み出された時間を直接的な介護ケアに充てることで、職員の負担軽減とサービスの質向上を両立させる狙いです。

 一方で、今回の検討案は単なる増額施策にとどまりません。介護保険制度は保険料、公費、利用者負担によって支えられており、資料では特に現役世代を中心に保険料負担増加に対する懸念が示されていることにも言及しています。制度の持続可能性を確保するため、物価や賃金への対応を進める一方で、サービス提供の実態等をきめ細かく把握し、介護報酬の評価の適正化・重点化や体系の整理・簡素化を推進する方針です。

 今回示された基本的な視点(案)は、①物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善、②人口減少・サービス需要に応じたサービス提供体制の構築、③地域包括ケアシステムの深化、④職場環境の改善と生産性の向上、⑤制度の安定性・持続可能性の確保――の5点で構成されています。物価・賃金上昇や人手不足への対応を進めながら、限られた財源を重点的に配分し、介護保険制度の安定性・持続可能性をどう確保するかが、2027年度改定に向けた今後の議論の焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)