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欧州委員会は「Science, research and innovation performance of the EU 2026(SRIP 2026)」報告書を公表しました。報告書はEUの科学・研究力について、「Strength(強み)」「Structure(構造)」「Scale(規模)」の3つの視点から分析しています。2024年のEUのR&D投資はGDP比2.24%にとどまり、目標とする3%の達成には2030年までに累計で約5650億ユーロの追加投資が必要と試算されています。公的研究資金では世界有数の規模にあり、科学的成果や論文などでは高い水準を維持する一方、AIなどの先端技術投資や民間R&D、研究成果の産業展開(スケールアップ)や生産性向上において構造的な課題を抱えている実態が整理されました。
本文
欧州委員会は、EUの研究開発・イノベーション性能を取りまとめたフラッグシップ報告書「Science, research and innovation performance of the EU 2026」を公表しました。報告書は、EUの課題が単なる科学力そのものの低下にあるのではなく、優れた研究成果を市場や工場、生産性向上へとつなげる「規模化(Scale)」にあるという問題を提示しています。
2024年におけるEUのR&D投資額(対GDP比)は2.24%にとどまり、EUが長期目標として掲げる3%を下回っています。報告書第1章の試算によると、2030年までにR&D投資の対GDP比3%という目標を達成するためには、累計で約5650億ユーロの追加R&D投資が必要とされています。
EUは投資の絶対額において世界有数の公的R&D資金供給主体であり、報告書は公的投資が科学的基盤を形成する役割を担うとしています。しかし、2023年の民間R&D投資額はEUが2210億ユーロにとどまり、中国の3450億ユーロや米国の6150億ユーロを下回っています。報告書は、公的R&Dと民間R&Dは互いに代替するものではなく補完関係にあり、公的投資が築いた科学的基盤を民間R&Dが市場性のある製品・サービスへ転換する役割を担っていると分析しています。そのうえで、民間R&Dの産業構成や成長段階での資金調達、規制環境、市場の分断などの複数の構造的要因が、民間による展開を抑制していると指摘します。
研究力を成果やインフラへつなげる課題は、人工知能(AI)の分野で鮮明に現れています。欧州の主要都市はAI関連の科学的成果において米国やアジアの主要都市と比較可能な水準を維持する一方、EUが保有するAI計算能力は世界の約5%にとどまり、世界のデータセンターの90%がEU域外に位置しています。さらに、2025年の世界AI投資に占めるEUの割合は約5%と推計されており、AIインフラや投資規模では世界に占める割合が低い状況となっています。
国際的な特許出願においても環境変化が見られ、PCT国際特許出願に占めるEUのシェアは2000年の約30%から2022年には約16%へ低下した一方、同期間に中国は約3%から約33%へと拡大しました。また、成長段階にあるディープテック企業に対する資金供給でも約50%を域外資本に依存するなど、成長資金の域外依存も課題となっています。過去25年間のEUの労働生産性の伸び率が米国のおおむね半分にとどまる中、研究開発の成果を産業規模へ拡大させ、全般的な生産性向上につなげることが重要視されています。
欧州委員会の報告書は、EUの課題を科学力の「強み(Strength)」、国や制度の「分断構造(Structure)」、そして市場投入や生産性向上へ拡大する「規模(Scale)」の3段階で整理しています。科学力を失ったのではなく、その成果を産業展開と生産性向上へとスケールさせる段階の構造的課題を解き明かす内容となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













