中国Envision、AIデータセンターで800V直流給電を商用運用 半導体変圧器と蓄電池を一体制御

2026年11月03日 11:51

近未来データセンターのイメージ

中国Envisionは11月2日、AIデータセンターで800V直流給電システムを商用運用していると発表した。半導体変圧器と蓄電池を組み合わせ、電力供給を一体制御する(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

中国のEnvisionは11月2日、内モンゴル自治区ウランチャブのGalaxy AIデータセンターで、800V直流給電システムを商用運用していると発表しました。10kVの中電圧交流を800V直流に変換する半導体変圧器と蓄電池を組み合わせ、AI制御によってGPUの負荷変動に対応します。蓄電池は秒単位の電力支援と分単位のバックアップを担います。キャンパスの最終計画容量は3GWですが、今回稼働した給電設備の容量は公表されていません。

本文
 中国のエネルギーテック大手である遠景科技集団(Envision)は2026年11月2日(米東部時間)、中国・内モンゴル自治区ウランチャブに位置する「Galaxy AIデータセンター」において、800V直流(DC)給電システムを商用運用していると発表しました。同社の発表によると、本設備は大規模AIデータセンター向けとして世界初となる統合型800V直流給電システムであり、現在は実際のAI計算処理向けに電力を供給しています。増大するAI計算需要を背景に、データセンターの電力インフラを刷新する動きが具体化しています。

 今回稼働が発表されたシステムは、半導体変圧器(SST:Solid-State Transformer)、蓄電池システム(BESS:Battery Energy Storage System)、コンピューティング機器向けの直流電圧調整設備、そしてAIを活用した統合制御技術を組み合わせた構成です。電力網から末端のサーバーラックに至るまでの電力供給経路を一体的に設計・運用することにより、高密度な計算設備に対して安定した電力を効率的に供給する仕組みを導入したと同社は説明しています。

 電力供給の仕組みとしては、10キロボルト(kV)の中電圧交流電力を受電し、これを直接、電力を分配する共通経路である800Vの直流母線へと変換する構成が採用されています。従来の交流を中心とした多段変換方式と比較して、変換経路を大幅に簡素化できる点が特徴です。交流と直流の相互変換に伴う損失を抑えつつ、大電力化が進む最新のサーバー群に対し、直流母線を通じて効率的な給電経路を整えています。

 AI計算処理特有の急激な電力負荷変動への対応では、蓄電池システムが重要な役割を担います。GPUなどの計算実行時に生じる激しい負荷変動に対し、蓄電池が秒単位の電力支援と分単位のバックアップを受け持ちます。さらに半導体変圧器と蓄電池はミリ秒単位で協調制御されており、電力網側の安定性を維持しながら、計算負荷の急激な変化に対応する設計となっています。

 この高速な制御を担っているのが、Envisionが自社開発した「Dubhe Controller」と「Dubhe Energy Foundation Model」です。Envisionによると、これらの制御技術は半導体変圧器と蓄電池をリアルタイムに協調させ、計算需要の変化に合わせて電力供給を調整します。電力インフラと計算負荷をソフトウェア連携によってリアルタイムに協調させる体制が構築されています。

 Envisionは、800V直流方式の導入により、電力変換効率の向上や設備の高密度化、機器設置面積の縮小、ケーブル量や銅使用量の削減、インフラコストの低減といった利点が期待できると説明しています。ただし今回の発表では、従来の交流方式と比較した具体的な電力損失の削減率や、銅使用量・コストの削減比率などの実測比較数値は示されておらず、技術的な期待効果の説明にとどまっています。

 本システムが導入されたGalaxyキャンパスは、2026年8月に初期稼働を開始した拠点です。同キャンパスは最終計画として全体で3GWの容量を備え、最大100万基のAIアクセラレーターに対応する構想を掲げています。また電力の80%超を再生可能エネルギーから直接供給する計画です。ただしこれらは将来に向けた計画数値であり、今回商用運用に入った800V給電設備の容量は公表されていません。

 さらに同社は、2030年までに世界各地の砂漠地域において合計5GWのグリーンAIデータセンターを展開する「Mission Gobi」構想を進めています。この5GWは同社の長期目標であり、Galaxyキャンパスの最終計画容量3GWと単純に合算できるものではありません。将来構想が示される一方、足元では800V直流給電という先進的な電力インフラが実際のAI計算現場で商用稼働を始めたという事実が、データセンターの電力供給における新たな展開を示しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)