英Drax、AIデータセンター開発で提携 潜在投資額200億ポンド超、発電所の電力基盤を活用

2026年11月04日 07:36

データセンターイメージ4

大規模データセンターと周辺の電力設備(画像はイメージ)。英Draxは既存発電所の電力インフラを活用したAIデータセンター開発構想を発表した。

今回のニュースのポイント

英電力大手Draxは11月3日、BrookfieldおよびAIインフラ企業Radiantと提携し、Drax発電所敷地内で長期的に1GW超のAIデータセンターを共同開発する構想を発表しました。既存の送電網接続や発電能力を活用し、潜在的な総投資額は半導体を含め200億ポンド超と試算されています。第1期は最大100MWで2028年初めの稼働を目指しますが、投資実行や開発は許認可や主要顧客の確保などを前提とする条件付きの計画です。

本文
 英国の電力大手ドラックス・グループ(Drax Group)は現地時間2026年11月3日、カナダの資産運用大手ブルックフィールド(Brookfield)および同社が支援する英国のAIインフラ企業ラディアント(Radiant)との間で、大規模なAI向けデータセンターの共同開発に向けた戦略的提携契約を締結したと発表しました。開発場所はイングランド北部に位置するドラックス発電所の敷地内です。ブルックフィールドの試算によると、半導体チップ代を含めた潜在的な総投資規模は200億ポンド(長期開発の場合)を超える可能性があります。長期的には、合計1ギガワット(GW、1GW=1,000メガワット)を超えるデータセンター容量の開発を目指す構想です。ただし、本件は確定した投資決定ではなく、段階的な許認可や顧客契約の成立を前提とした条件付きの長期構想として位置付けられています。

 開発の第1期(フェーズ1)では、2026年から2028年にかけて最大100メガワット(MW)規模のデータセンター建設計画が進められます。初期段階の投資規模としては約25億ポンドが見込まれていますが、これも着工前の最終投資決定が前提となります。第1期では、既存の全国送電網から電力を引き込む計画です。役割分担として、ドラックス側が事業用地の提供や既存電力インフラとの統合、都市計画上の許認可手続きを担当し、ラディアント側が施設設計や主要な入居顧客の開拓、商業化を主導します。2026年11月中に地域住民との協議を開始し、行政への計画申請の準備を進める方針です。着工前に主要顧客との利用契約を締結することを条件とし、2028年第1四半期の商業運転開始を目標に掲げています。

 続く第2期以降は、段階的な拡張が構想されています。2028年から2031年にかけて計画される第2期では、追加で500MW規模の開発可能性を検討する予定です。第1期が一般送電網からの受電であるのに対し、第2期では発電所の既存発電設備から直接、長期電力購入契約(PPA)を通じてデータセンターへ電力を供給する構想が描かれています。さらに2031年以降の第3期においても、同様の手法によるさらなる容量拡張が視野に入れられています。ただし、第2期の500MW開発や2031年以降の追加拡張は確定した計画ではなく、英国政府や関係規制機関からの追加許認可、ならびに電力市場での整合性の確保が不可欠な前提条件となっています。

 今回の提携構想において最大の強みとされているのが、既存のドラックス発電所が備える広大なインフラ基盤の再活用です。同発電所の敷地面積は約1,000エーカーを超え、国内最大級となる約4GWの送電網接続能力と、約2.6GWの稼働可能な発電能力を有しています。さらに、膨大な熱を処理する冷却設備や主要な光ファイバー網への近接性も備えています。急速に進展する生成AIの普及に伴い、データセンターの建設では先端半導体チップの確保だけでなく、莫大な電力をいかに安定調達し、送電網へ接続できるかが世界的な課題となっています。既存の送電網接続能力や発電設備を活用する構想は、新たな電力インフラの整備負担を抑え、開発を進めるうえでの利点となる可能性があります。

 一方で、電力政策や地域経済との調和には慎重な手続きが求められます。ドラックスは2025年11月、英国政府との間で2027年4月から2031年3月までのバイオマス発電に関する差額決済契約(CfD)を締結しており、年間約6テラワット時(TWh)の発電が対象となっています。この契約には、期間中に最大500MWを発電所からデータセンター向けへ直接供給する用途へ申請できる仕組みが含まれています。しかし、実際の転用には英国政府および低炭素契約会社(LCCC)の個別同意が必須であり、国民負担の抑制や国のエネルギー安全保障への影響が厳格に審査されます。現時点で政府の承認が下りているわけではなく、地域の雇用維持や経済効果への期待とともに、政策基準への適合性が今後の大きな焦点となります。

 今回のドラックスによる発表は、AIインフラの競争力を左右する要素として、半導体などの計算能力に加え、安定した電力供給と送電網へのアクセスが重要になっていることを示す事例です。既存の発電所敷地を次世代のデジタル基盤として活用する構想は、電力産業とAIインフラ産業の接点が広がっていることを示しています。もっとも、200億ポンド超という投資規模や1GW超の容量目標は、あくまで長期的な潜在的推計にすぎません。都市計画の認可、政府の規制承認、送電網関連の合意、確実なアンカーテナントの確保、そして参画各社による最終投資決定という多段階のハードルをクリアできるかが、構想実現の鍵を握っています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)