今回のニュースのポイント
経済産業省は2026年11月6日、中部電力に対し電気事業法に基づく業務改善命令を正式に発出しました。浜岡原発3・4号機の基準地震動策定を巡る虚偽説明や内部通報の機能不全に加え、電気料金の2年以上にわたる過大請求や廃炉費用17件の不適切請求にも共通する管理上の問題を一部認定。法令等遵守体制や経営監督の抜本的見直しを求め、11月30日までの改善計画提出と2027年3月末までの実行状況報告を命じました。
本文
経済産業省は2026年11月6日、中部電力に対し、電気事業法に基づく業務改善命令を発出しました。10月30日に弁明の機会を付与した段階を経て、11月6日付で赤澤亮正経済産業大臣が中部電力の安井稔社長宛てに正式な命令を発出しました。命令は、浜岡原子力発電所3・4号機の基準地震動策定を巡る不適切行為を発端としつつ、内部通報制度の機能不全や経営監督の不備に加え、電気料金の誤算定に伴う過大請求や、浜岡1・2号機の廃炉費用に関する不適切請求についても、法令等遵守意識や業務管理体制などに共通する問題が一部認められたものです。経産省は中部電力に対し、2026年11月30日までに業務改善計画の提出を求め、2027年3月31日までに取り組み状況の報告を義務付けました。
命令書において主たる処分理由とされたのが、浜岡原発3・4号機の新規制基準適合性審査における基準地震動策定を巡る不適切行為です。基準地震動は原発の耐震設計の根幹をなす地震動の評価ですが、定量的な基準によらない人為的な手法等で代表波を選定し、原子力規制委員会の審査会合で虚偽の説明を行っていた事実が認定されました。さらに原子力規制庁からの照会に対しても、従前の説明と齟齬が生じないよう、事後的に地震動計算結果の組み合わせを改めて作成する行為が行われていました。経産省は、特別調査委員会が指摘した「独自の正当化理論」に象徴される法令等遵守意識の欠如や組織風土の不健全性に加え、高度な専門業務の属人化や組織の閉鎖性を厳しく認定しています。
事態の背景として、組織内の牽制機能の脆弱性と内部通報制度の機能不全も明確に認定されました。原子力部門では、審査対応に疑義を示した「ライン外専門家」が担当者と同じ上司の下に置かれるなど制度的独立性を欠き、牽制が機能しませんでした。また、内部通報で問題が指摘されていたにもかかわらず、調査の客観性や実効性が不十分で、自浄作用による早期是正の機会を逸しました。さらに経営層の一部が業務実態を十分に理解しないまま指示を出し、それが不適切行為の動機となったほか、経営層と現場の対話不足がリスクの早期報告や是正を遅らせたと判断されました。経産省は、現場の不適切行為だけでなく、経営層による監督や意思疎通にも問題があったと認定しています。
今回の命令で重大視されたのは、原子力部門にとどまらず電力小売分野でも共通する統治不全が露呈した点です。命令書によりますと、小売事業を担う中部電力ミライズが2024年2月6日付で変更届出を行った特定小売供給約款において、料金単価の基礎となる原価を中部電力が誤算定していました。その結果、本来より過大な料金単価が設定され、需要家への誤請求が発生しました。中部電力は約款変更届出前に誤りを把握していたにもかかわらず、月額料金への影響が小さいとの認識から修正を見送り、誤請求が2年以上にわたり継続したと認定されています。経産省は、原価算定手順や審査体制の不備に加え、修正を見送った意思決定の客観的記録が十分に存在しない管理体制を問題視しました。
さらに、浜岡1・2号機の廃止措置(廃炉)事業における費用請求でも、不適切な処理が正式に認定されました。中部電力が2024年度に使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO)に対して行った費用請求案件36件のうち、17件で実態と異なる費用を請求していた事実が判明しました。NuROへの計画通りに完了していない工事を完了したように見せるため、請負会社に請求額の書き換えを指示したり、未完工の工事を完工として処理したりしていました。経産省は、工事進捗の確認や費用算定根拠の妥当性検証が不十分で、不適切行為を発見・是正するための確認・審査体制が整っておらず、牽制機能が脆弱だったと指摘しました。法令等遵守を最優先とする意識の不足と組織風土の不健全性が根底にあると認定しました。
経済産業省が中部電力に命じた改善策は、役職員の責任所在の明確化、外部人材の活用を含む法令等遵守体制の強化、専門部署の閉鎖性排除、内部通報制度の運用見直し、業務プロセスの定期検証、取締役会や社外取締役による経営監督機能の重点化など多岐にわたります。さらに、策定した再発防止策の実効性を外部人材を活用して客観的に検証する体制の構築を求め、実効性が不十分な場合や今後の規制委員会からの指導等を踏まえた追加改善策の実行も義務付けました。中部電力は11月30日までに具体的な実施方法と時期を定めた業務改善計画を提出し、必要な取り組みを実行した上で2027年3月31日までに状況を報告しなければならず、組織統治の抜本的な再構築が求められます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













