レアアース酸化物の粉末と分離・精製設備を表現したイメージ。米Phoenix Tailingsはニューヨーク州ロチェスターで分離施設の整備を進め、全面稼働時に年間4,400トン超の分離レアアース酸化物生産能力を確保する計画だ(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
米Phoenix Tailingsは2026年11月5日、米ニューヨーク州ロチェスターのレアアース分離施設「Freedom Project」に対し、州・地方などから推計約5,420万ドルの優遇措置を受ける見込みとなったと発表しました。既存の工業インフラを活用し、年間1万8,000トン超の原料処理と年4,400トン超の酸化物生産能力を整備。2027年の生産拡大、2028年の全面稼働を計画し、米国内の重要鉱物加工基盤の強化を目指します。
本文
米レアアース新興企業のフェニックス・テイリングス(Phoenix Tailings)は2026年11月5日、米ニューヨーク州ロチェスターで進めるレアアース分離施設「Freedom Project」について、州や地方自治体等から推計約5,420万ドルの優遇措置を受ける見込みとなったと発表しました。施設は市内の歴史的な工業拠点であるイーストマン・ビジネス・パーク(Eastman Business Park)内に設けます。米国内でレアアース原料を分離し、産業用素材として不可欠な高純度酸化物を製造する供給網の構築を目指します。同社は、既存の工業インフラを活用することで建物や基礎設備の新設に伴う初期投資を抑え、製造設備の導入や生産開始を早める方針を示しています。
今回見込まれる約5,420万ドルの支援策は、全額が現金補助金として交付されるものではなく、税額控除や負担軽減措置などで構成される推計額です。具体的には、ニューヨーク州のエクセルシオール・ジョブズ・プログラムに基づく最大300万ドルの成果連動型税額控除と、別枠の州投資税額控除約1,590万ドルが含まれます。残る約3,530万ドルは、対象となる設備や建設資材に関する税負担の軽減措置に加え、施設に必要な電力インフラの改善支援見込みなどで構成されます。これらの支援は、所定の雇用目標の達成や投資要件、承認手続きなどの条件を満たすことが前提であり、実際の支援規模は今後の事業進捗や適格性に応じて確定します。
拠点が整備されるイーストマン・ビジネス・パークは、写真フィルム大手イーストマン・コダック(Kodak)の製造拠点として発展してきた工業拠点です。フェニックス・テイリングスは、既存の建屋や化学処理インフラ、送配電設備、配管などを利用し、分離設備の導入に資金や人員を集中させます。施設をゼロから新設する場合に比べ、建屋や基礎インフラの整備負担を抑え、製造設備の導入を早められると同社は説明しています。また、同社に対しては米連邦政府の戦略資本局(Office of Strategic Capital)から5億ドルの条件付き融資枠が以前に発表されています。今回の州・地方の優遇措置は、既発表の連邦政府による条件付き融資とは別の支援として、事業の立ち上げを後押しするものです。
計画されている「Freedom Project」の分離施設は、全面稼働時に年間1万8,000トン超のレアアース原料を処理し、年間4,400トン超の分離レアアース酸化物を生産する設計です。ここで示された数値は、投入される原料の処理能力と製品となる精製酸化物の年間生産能力であり、金属製品の生産量を示すものではありません。分離工程では、原料に含まれる複数のレアアース成分を分け、用途に応じた酸化物として製品化します。同社は、この分離プロセスを「Freedom Separation」、後続の金属製造プロセスを「Freedom Metallization」と位置づけ、原料処理から分離・精製、さらに金属化までを一貫して国内で担う供給網の確立を視野に入れています。
生産スケジュールについて、フェニックス・テイリングスは2027年に生産を段階的に拡大させ、2028年に設備を全面稼働させる計画を掲げました。雇用面では、稼働初期に90人、2028年の全面稼働時にはニューヨーク州内で200人超の直接雇用を見込んでいます。州や地方の関係機関による支援には、税制優遇のほか、電力インフラの改善や設備購入、人材育成に関する措置などが見込まれています。かつて精密機械や化学産業が集積したロチェスター地域には高度な製造業の技能を持つ人材基盤が存在しており、既存の工業インフラと熟練労働力を組み合わせることで、地域経済の再活性化と先端素材産業の育成を両立させる狙いがあります。
今回の動きは、レアアースの採掘にとどまらず、素材として利用可能な形へと純度を高める「分離・精製」という中間工程を米国内に確立する試みとして重要な産業的意義を持ちます。鉱物資源を自国で確保しても、分離や金属化の工程を海外に依存している状況では、永久磁石や先端製品に用いる原材料の安定供給は達成できません。同社は、既存の産業インフラと公的支援を活用して国内加工能力の空白を埋めることを目指しています。もっとも、公表された生産能力や稼働日程を実現するためには、製造装置の据え付け、電力調達や許認可の取得、安定した原料調達網の構築などクリアすべき課題も少なくありません。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













