インフラ維持管理費、2045年度に15.2兆円の試算 財務省が道路統廃合など見直し提案

2026年11月06日 12:36

財務省正面

財務省の庁舎。財務省は2026年11月5日の資料で、社会資本ストック全体の年間維持管理コストが2045年度に15.2兆円へ増えるとの試算を示し、道路・橋梁の統廃合などによる長期的な負担抑制を提案した。(資料写真)

今回のニュースのポイント

財務省が2026年11月5日に示した社会資本整備資料で、現在の整備ペースが続けば社会資本ストック全体の年間維持管理コストが2025年度の9.3兆円から2045年度には15.2兆円(約1.6倍)へ拡大するとの試算が示されました。生産年齢人口1人当たりでは約2.1倍に膨らむ見通しです。財務省は道路の簡易舗装化や低利用道路・橋梁の統廃合、上下水道の分散化などを提案し、長期的に年間約2,000億円の削減余地を提示しました。

本文
 財務省が2026年11月5日に示した社会資本整備に関する資料で、現在の整備ペースを続けた場合、道路や橋梁、上下水道など社会資本ストック全体の年間維持管理コストが、2025年度の9.3兆円から2045年度には15.2兆円に増えるとの試算が示されました。増加幅は約5.9兆円、規模では約1.6倍に拡大します。人口減少が進むなか、高度経済成長期以降に整備された膨大な施設が一斉に老朽化を迎えるため、既存施設の維持更新と新規整備を従来の延長線上で続けることの難しさを指摘しています。財務省は、施設の予防保全を進めるだけでなく、地域の実情に応じた規格の見直し、統廃合、分散化などにより、社会資本ストックを合理化する必要があるとの考えを示しました。

 同資料では、維持管理コストを生産年齢人口1人当たりでみた場合、2025年度の年間12.7万円から2045年度には26.1万円へ増えると試算しています。約2.1倍への急増であり、総額の増加率を上回ります。これはインフラの維持管理費が増加する一方、負担を支える生産年齢人口が減少するという構造を反映したものです。ただし、この数字は国民一人一人に課される税金や利用料金を表したものではありません。維持管理費を生産年齢人口で割った政策分析上のマクロ指標です。また、試算は2026年度以降の物価変動がないことなどを前提としています。「一人当たり26.1万円の負担増が決定した」という意味ではない点に留意が必要です。

 維持管理費を抑制する具体策として、財務省は道路舗装の規格見直しと、利用の少ない道路・橋梁の統廃合を挙げました。道路舗装では、市町村道の簡易舗装区間などに「オッターシール舗装」を活用することにより、年間約800億円の公費削減余地があると試算しています。また道路・橋梁では、秋田県の検討事例を参考に全国の対象区間を想定し、そのすべてを仮に供用廃止した場合、年間約630億円の削減が可能と試算しています。両者の合計は年間約1,430億円となり、資料に示された削減可能額の大きな割合を占めます。ただし、道路の供用廃止が全国一律に決定したわけではありません。代替経路や防災上の機能、住民の移動手段などを考慮する必要があります。

 上下水道などの生活インフラについても、人口密度や利用状況に応じた分散化や長寿命化が提案されました。水道では、小口径水道管の一部に分散型システムを導入する場合、年間約0.75億~3.75億円の削減余地があると試算しています。下水道では、集合処理管路の更新時に浄化槽への転換を進めることで、年間約40億~420億円の削減余地を見込んでいます。さらに、鉄道のトンネルや橋梁への長寿命化工法適用で約30億円、港湾の低利用岸壁などの統廃合で約55億円の削減が可能としました。これらは必要な生活機能を維持しつつ、施設の規模や方式を見直す考え方に基づくものであり、分散化が直ちにサービス低下を意味するわけではありません。

 財務省は、道路の簡易舗装化、道路・橋梁や港湾の統廃合、上下水道の分散化、鉄道の長寿命化などを組み合わせることで、長期的には年間約2,000億円程度の維持管理コストを削減できる可能性があるとしました。これは対象施設や採用割合に一定の条件を置いた試算であり、実際の削減額を保証するものではありません。資料では、見直しに速やかに着手し、来年度(2027年度)から包括的な取り組みを実行に移すべきだとの考えも示されています。ただし、年間約2,000億円は長期的な削減可能額の試算であり、2027年度予算の削減決定額ではありません。実際の導入には、各施設の管理主体による検討や地域の実情に応じた判断が必要となります。

 インフラの規格見直しや統廃合には維持管理費を抑える効果が期待される一方、地域によっては移動時間の増加や災害時の代替経路確保、上下水道サービスの継続性などが課題となります。とりわけ過疎化が進む地域では、利用者が少ない施設であっても、住民生活や地域産業、非常時の避難などに不可欠な機能を担っている場合が少なくありません。財政負担の抑制だけを基準に判断するのではなく、施設の利用実態、安全性、代替手段、将来の人口動向などを踏まえた検討が求められます。財務省の資料は、インフラを一律に維持し続けるのではなく、地域に必要な機能をどのような施設や仕組みで確保するかという根本的な政策課題を提起したといえます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)