【1】小売業大手各社の今期の見通し、戦略とは

2013年04月22日 01:44

 
 スーパー/利益が出ない体質をどう変えるか

 イオン<8267>の総合スーパー(GMS)事業の「イオンリテール」の営業収益は1.3%増の2兆1536億円、営業利益は24.6%減の345億円、最終利益は63.8%減の104億円だった。既存店売上高は1.4%減で、価格競争の激化により衣料を中心に採算が悪化し営業利益が減少したのが大きく響いた。今期の見通しはグループ全体で営業収益は5.5%増の6兆円、営業利益は4.7~9.9%増の2000億円~2100億円、最終利益は0.4%増の750億円。年間配当は2円増配して26円。新規出店は、総合スーパー(GMS)は前期より1店舗多い16店舗、スーパー(SM)は前期より59店舗少ない45店舗を予定し、全体的に守りの戦略。PB「トップバリュ」の拡大、専門店化による競争力強化、在庫コントロール、効率化の推進などで落ちた収益力を改善し、消費税増税前の駆け込み需要の取り込みに全力をあげたいとしている。

 セブン&アイHD<3382>の「イトーヨーカ堂」の売上高は2.4%減の1兆3029億円、営業利益は14.6%減の90億円、最終利益は16億円(前期は5億円の最終赤字)だった。店舗は3増2減で、既存店売上高が4.3%減で前期の2.6%減よりさらに悪化した。今期の見通しは、売上高は0.6%減の1兆2950億円、営業利益は86.5%増の168億円。店舗は6増3減で総店舗数を3増やし、既存店売上高の減少幅を2.8%まで縮めるのが目標になっている。

 ユニーGHD<8270>の営業収益は4.5%減の1兆302億円、営業利益は20.4%減の350億円、最終利益は266.1%増の304億円で、営業の不振が目立った。低価格競争の激化に震災特需の反動も加わり「アピタ」「ピアゴ」などスーパーの既存店売上高は2.8%減少した。最終増益はサークルKサンクスの完全子会社化で「負ののれん代」180億円を特別利益に計上したため。今期の見通しは、営業収益は0.03%減の1兆298億円、営業利益は4.0%増の364億円、最終利益は45.0%減の167億円(決算期変更で日数が前期より8日多くなる予定)。年間配当は24円で据え置く。PB商品の拡大を急ぐが、円安で商品や原材料の輸入価格や光熱費など店舗運営コストが上がった分を販売価格に転嫁すると消費が冷え込むと懸念している。

 イオンの子会社になるダイエー<8263>の営業収益は4.4%減の8312億円、営業損益は26億円の赤字(前期は37億円の黒字)、最終損益の赤字は36億円で前期の113億円から改善した。商品をいくら値下げしても収益が改善しない泥沼。今期の見通しは、営業収益は1.6%減の8180億円、営業利益は不振店舗の閉鎖で採算が改善して10億円の黒字転換、最終利益は公表していないが赤字は必至とみられ当然無配継続。戦後の流通革命の旗手だったのも今は昔。イオングループに入って3年間で全店を改装し2015年2月期の最終利益黒字化を目指すが、再起なるか。

 スーパーは各社の営業利益を見ればわかるように、とにかく利益が出ない。利益が出ないから出店等への新規投資もためらいがちになり、さらに利益が出なくなる悪循環に陥っている。百貨店のような利幅の取れる高額商品はほとんどなく、コンビニのように年間1000店出店できるわけではなく、食品や日用品は消費税引き上げ前の駆け込み需要が期待できず、アベノミクスの恩恵を受けるのも一番最後になりそうだ。スーパーが利益の出る企業体質に変わるには、利益が出る業態をM&Aで傘下に取り込むしかないのか。(編集担当:寺尾淳)