【今週の展望】7月相場の焦点はやはり「内需と政策」か

2013年06月30日 20:11

 6月末の株主総会ウィークも終わり、6月19日の「バーナンキ・ショック」後の混乱もどうにか落ち着いてきた。中国の金融不安も中国人民銀行が明確な政策を打ち出して区切りをつけた。しかし闇の中から「シャドー・バンキング」なるものが急に浮上するようでは、中国経済はやっぱり「伏魔殿」。その中心地の魔都・上海の総合指数に今週前半、さんざん引きずり回された東京市場は来週、魔界の呪縛から解き放たれて完全に正常化できるだろうか。それには、外需よりも内需の力強い回復と政策の後押しが必要になる。焦点は「内需と政策」で、言い換えれば個人需要の回復と、アベノミクスの政策効果である。

 5月23日の「暗黒の木曜日」のインパクトがあまりにも強烈で、その後も株価が乱高下を繰り返したため、メディアの過剰反応ともあいまって、投資家ではない一般の人には「アベノミクスは破たんし日本経済は大不況突入」と頭に刷り込まれた人が少なくない。回答者の「気分次第」で数値が左右されるきらいがある景気ウォッチャー調査が現状判断も先行判断もマイナスになったり、これまた「気分指標」的な要素がある家計調査がマイナスになったのはその影響と思われる。5月23日以降、スポンサーが突然、手を引いて企画やプロジェクトが中断したという話も聞こえてくるのだが、日本経済全体では景況は着実に前に進んでおり、経済指標もいいシグナルを示している。
 
 たとえば28日発表の5月の全国消費者物価指数は0.0%でマイナスを脱し、デフレ脱却の第一歩の「実質金利の下げ止まり効果」が出たと評価されている。5月の失業率は横ばいでも有効求人倍率は0.90でリーマンショック前の水準に戻り、5月の鉱工業生産指数速報値は市場予測を上回る+2.0%で4ヵ月連続で上昇。5月の小売業販売額も+0.8%で、百貨店以外の既存店ベースはまだマイナスとはいえ5ヵ月ぶりに増加に転じた。
 
 その小売業で、すでに日本人の生活に欠かせない存在のコンビニは来週、大手5社の3~5月期(第1四半期)の業績が出揃う。2日にユニーGHD<8270>(サークルKサンクス)、3日にミニストップ<9942>、4日にセブン&アイHD<3382>(セブンイレブン・ジャパン)、ファミリーマート<8028>、5日にローソン<2651>が発表を控えている。セブンイレブンとファミリーマートが今期の新規出店数を1500店舗にピタリと合わせて張りあうなど、各社、程度の差はあれ個人消費の回復を当て込んで積極策に出ており、小売業で最もホットな業態だ。その今期第1ラウンドの春商戦の結果を見れば、高額商品の売れ行きに偏った百貨店とは異なり、一般レベルでの個人消費の動向が把握できるだろう。おそらく業績数字から個人消費の上向きを確認できると思われる。
  
 その内需とともに重要な「政策」は、参議院選挙が4日に公示され選挙戦に突入すると与党の自民党がより明確に打ち出してくる。さらに「誰々が街頭演説でこう言った」など、成長戦略にも政権公約に入っていない話がフライング気味に出てくれば、そのたびに市場が反応していい刺激になる。たとえ選挙用のリップサービスでも、不明確なノイズでも、株価は動く。すでに今週も保育、バイオ、住宅などの関連銘柄が、新聞に出た新しい政策を材料に買われていた。都議選と違って全国規模の国政選挙なので、政策で買われる可能性が高いのはやはり整備新幹線など交通インフラや防災、老朽化対策といった公共投資関連の銘柄になるだろう。
 
 来週は1日発表の日銀短観で企業経営者の足元の景況感が確認できる。「気分」で経営はできないから景気ウォッチャー調査よりは信頼できるはず。NYダウは5日の雇用統計発表を前に様子見ムードで停滞し、要人の発言やADP雇用統計、新規失業保険申請件数の発表などで一喜一憂する状況が続くと思われるが、長期金利など金融情勢が落ち着いてきたのでドルが強含みで、NY外為市場でドル円が100円にタッチする時間帯もあるだろう。その間に国内企業決算で小売業の業績回復、個人消費の底堅さが確認できれば、日を追うごとに日経平均は13500円オーバーの水準に定着できると思われる。
 
 さらに、4日の参議院選挙公示で自民党の政治家の口が選挙モードに突入して街頭演説などで「政策サプライズ」が飛び出して、後で石破幹事長あたりが「承知していない」と火消しに追われたり、5日の景気動向指数が大幅な改善をみせたり、トルコの騒乱に心証を害したIOC委員が多く出て、3~4日の計画説明会での反応の悪さに観念したイスタンブールが五輪開催都市候補から降りるような事態が起きると、週後半に14000円タッチもありうる。ということで来週の日経平均の変動レンジは13200~14000円とみる。
 
 それでも世界のどこかで危機が発生し、リスク回避の円買いで突発的な円高・株安になる恐れはつきまとう。また、為替と並んで気になるのが金価格で、生産コスト割れの「本来ならありえない価格水準」まで下落したため、4月の急落時もそうだったように、突然、中国やインドあたりから爆発的な金買いの波が巻き起こり、金を買うために株が売られて世界的な株安に陥るというシナリオも一応、心に留めておくべきだろう。(編集担当:寺尾淳)